兵庫県神戸市の取り組み
マイナンバーカード関連業務の民間委託
業務の一体的な運営委託で達成した、高水準のマイナンバーカード普及率
神戸市 企画調整局デジタル戦略部 マイナンバー利活用担当係長 菊池 由美子
※下記は自治体通信 Vol.37(2022年4月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
自治体が取り組むマイナンバーカードの「交付円滑化計画」。令和4年度はその最終年度を迎えることで、各自治体は普及目標の達成に向けて、さまざまな施策を重ねている。そうしたなか、神戸市(兵庫県)では、民間事業者への業務委託を戦略的に活用した結果、政令指定都市のなかで随一の普及率を達成しているという。取り組みの詳細について、同市担当者に聞いた。
[神戸市] ■人口:151万3,611人(令和4年2月1日現在) ■世帯数:73万6,934世帯(令和4年2月1日現在) ■予算規模:1兆8,803億9,500万円(令和4年度当初案) ■面積:557.03km2 ■概要:海と山の迫る東西に細長い市街地をもち、古く日宋貿易の時代からアジアへの窓口の役割を果たしてきた。明治22年、神戸区と葺合村、荒田村が合併して誕生。第二次世界大戦終戦時の市域は六甲山地の南側に限られ、五大都市のなかでは最小だったが、その後の町村合併のほか、ポートアイランドや六甲アイランドといった大規模な海上都市の建設を経て、現在の面積まで拡大した。
「交付円滑化計画」の実現へ、市直営の体制には限界
―マイナンバーカードの普及に向けた取り組みを教えてください。
平成30年度から、商業施設など市民に身近な場所で申請を受けつける「出張申請」を行ってきました。しかし、出張申請回数の増加に伴い、受付後の事務や企画・広報にかかる調整が増大。2日で1,600人を受けつけた際は、カード発送まで2ヵ月を超えてしまうこともありました。そうしたなか、国から「交付円滑化計画」の策定依頼を受けたのですが、その実行には、新たな窓口の設置や、より積極的な出張申請が必要になります。市直営の体制では、職員の増員や柔軟な配置を行うのに限界があるため、市職員でなければできない業務以外は民間へ委託することを決定。そのうえで、区役所以外の新たな窓口としてサテライトオフィスを設けることとしました。
―民間事業者への業務委託に際し、なにか課題はありましたか。
受付から交付までの一連のフローにおいて、「対面での本人確認」など一部業務は自治体が行わなければならないと国が定めています。そのため事業者には、自治体が行う業務と委託する業務を明確に切り分けたうえで、それぞれが円滑に連携できる業務構築を求めました。また、業務量の増減に合わせた柔軟な体制や万全を期した情報セキュリティ対策等を評価項目として、事業者からの提案を審査。その結果、令和2年度のサテライトオフィス拡充に伴う公募で、キャリアリンク社を選定しました。サテライトオフィス4ヵ所と区役所等12ヵ所の申請窓口の運営から、交付通知書の作成・封かんや窓口間のカード移送といったバックヤード業務、コールセンターの運営を一体的に委託しています。
政令指定都市として初めて、普及率50%超えを達成
―委託の効果はいかがですか。
感染症対策として必要になった来庁予約制の運用や受取窓口変更への対応など新たな業務を行うために重要な、コールセンター開設やカード移送のためのシステム構築を円滑に実現できました。また、月最大4.5万件まで交付を想定できていたため、マイナポイント事業で申請が急増した時期も窓口を混乱なく運営できました。マニュアル化やFAQの整理も進み、サービスレベルの向上と統一化も図れています。これらの成果として、今年2月末には政令指定都市として初めて普及率50%超えを達成しました。
当市が進める行政手続きのスマート化には、オンラインでの本人認証を可能とするマイナンバーカードの普及が必須です。「交付円滑化計画」の最終年度である令和4年度も、安定的な窓口の運営と積極的な出張申請の展開により、普及を推進していきます。
支援企業の視点
実績ある事業者への業務委託こそ、「交付円滑化計画」を成功に導くカギ
キャリアリンク株式会社 取締役 常務執行役員 営業本部長 兼 営業企画部長 島 健人
―「交付円滑化計画」を受けた自治体の現状はいかがですか。
令和4年度は最終年度となるため、普及促進策を強化している自治体は多いです。コロナ禍での特別定額給付金の電子申請やマイナポイント事業をきっかけとして、マイナンバーカードの利活用策が住民にも認知され始めたことで、普及促進に勢いがついています。そのため、もう一段の広報施策や交付体制をいかに整えるかが、多くの自治体の共通課題になっています。その際、当社では、民間事業者への業務委託を提案しています。
―民間への委託に際し、事業者選定のポイントはどこですか。
自治体からの受託実績の多さは、見極めるポイントです。交付率が50%に迫る水準に達した現在、これまで申請してこなかった層への周知と訴求には、過去のデータに基づく実証的なマーケティングノウハウが必要になるからです。その点、当社は制度開始時からマイナンバーカード関連業務の豊富な支援実績があります。業務や体制の構築のみならず、設備やシステムのコーディネート、広報活動などを一気通貫で支援でき、過去のベストプラクティスをもとに各自治体に最適な業務フローを提案する力が当社にはあります。
―今後の自治体への支援方針を聞かせてください。
各自治体が交付体制を強化する今年度は、当社も営業所を拡充して委託ニーズに対応していく方針です。マイナンバーカードは行政のデジタル化を進めるための「最重要施策」との認識を持ち、各自治体の取り組みを支援していきます。
島 健人 (しま たけと) プロフィール
昭和54年、埼玉県生まれ。大学卒業後、平成15年にキャリアリンク株式会社に入社。平成27年より現職。マイナンバー関連業務や給付関連業務、窓口関連業務、総務事務業務など自治体業務受託における企画・立ち上げ実績多数。公的分野におけるアウトソーシング事業や産学連携プロジェクトを統括、推進。
キャリアリンク株式会社