※下記は自治体通信 Vol.59(2024年7月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
財政状況が厳しさを増す自治体では、事業予算を決める際、財源の効果的な配分がこれまで以上に求められている。それに対し、全国の自治体財政の課題解決を支援する「新しい自治体財政を考える研究会」代表理事の定野氏は、「根拠をもって各事業の優先順位を定め、そのうえで予算編成を行える仕組みが必要」と指摘する。どうすればそれは実現するのか。自治体向け予算編成システムの開発を手がけるWiseVine代表の吉本氏を交え、詳しく聞いた。
定野 司さだの つかさ
東京都生まれ。昭和54年に埼玉大学を卒業後、足立区役所に入職。財政課長、総務部長、教育長を歴任。令和3年に「新しい自治体財政を考える研究会」を設立し、翌年、一般社団法人化(会員数440自治体)。自治体運営に関する提言を行う。財政コンサルタント。
吉本 翔生よしもと かい
慶應義塾大学を卒業後、平成23年に株式会社野村総合研究所に入社。エネルギー・気候変動政策を専門とし、国内外の行政への政策立案に係るコンサルティングに従事する。同大で途上国の自治体職員向けに気候変動政策に係る講義も担当。平成30年3月に株式会社WiseVineを設立。
「見える化」「一元管理」で、予算査定の精度も高められる
―自治体が事業予算を決める際、どのような課題がありますか。
定野 財政が厳しい状況でも、各部局からあがってくる事業に満遍なく予算をつけてしまう傾向にあることです。今後、財政がさらに厳しくなることは明白です。事業を「仕分け」する意識で予算を効果的に配分しなければ、あらゆる事業が「中途半端な予算」で進めざるをえない状況になりかねません。いまこそ自治体は、優先順位に基づき事業予算を配分していく仕組みの構築に取り組むべきです。
―事業の優先順位を決めるにはどうしたらよいのでしょうか。
定野 根拠をもって事業の優先度合いを測れるようにすることです。そのために私は、すべての事業の進捗や目標達成の状況を「見える化」し、「本当に必要な事業か」「効果・成果は出ているか」「ほかに予算を回した方がいいのでは」といった判断を、個別最適ではなく大所高所から下せるようにすることが重要と考えています。
吉本 こうした「見える化」は、事業に関するさまざまな情報を「一元管理」しなければ実現しません。そこで当社では、情報の一元管理で事業を「見える化」し、予算編成業務に活かせるシステム『Build&Scrap』を開発しました。
―どのようなシステムですか。
吉本 予算額や決算額だけではなく、計画・執行・決算・評価までの事業に関するあらゆる情報を一元管理し、予算編成を効率化させるシステムです。すべての事業において、計画から行政評価までの各フェーズの状況を管理できるため、各事業の進捗状況を確認したり、目標達成状況を比較したり、まさに「見える化」が可能になります。たとえば予算要求額の過年度との差分を自動表示する機能や、予算額や決算額をあらゆる切り口で瞬時にグラフ化できる機能などが豊富に搭載され、予算査定の精度も高められます。また、財政部門だけでなく各原課も「見える化」された情報を把握できるため、『Build&Scrap』は、全庁的に事業の優先順位を検討する「基盤」になり得ると考えています。
定野 さらに、『Build&Scrap』には「見える化」「一元管理」をベースに「自治体経営」を戦略的に進められる機能も備えています。
事業の優先順位の判断を、説得力のある形で説明
―具体的に教えてください。
定野 政策・施策と事業予算を紐づけて視覚的に表現する「KGI・KPIツリー*」を活用できる機能です。これからの自治体は総合計画など上位目標と予算が紐づく同ツリーを使い、事業の優先順位の判断を説得力ある形で説明することが求められると思います。
吉本 『Build&Scrap』は、上位目標に照らして事業の優先順位を決められるようになるシステムです。ぜひお問い合わせください。
*KGI・KPIツリー: KGI(重要目標達成指標)とKPI(重要業績評価指標)との関係性を、ツリーの形状を使って可視化したもの