自治体では、職員数の減少や住民ニーズの多様化などの課題に直面しており、これらに対応すべく自治体DXの推進が進められています。その中で、生成AIを導入することで、庁内業務の効率化や住民接点の強化などが可能かどうかの検討が進められています。
「従来のAI」は、人間が与えた大量の学習データを基に結果を予測したり、あらかじめ決められた行為を自動的に行うことまでしかできませんでした。一方で「生成AI」は、ディープラーニング(深層学習)によってAIが自ら学習し、人間が与えていない情報やデータまでをインプットし、新たなオリジナルコンテンツを生み出すことが可能になりました。
自治体でのAIの導入事例としては、市民への情報提供や問い合わせ対応に活用されています。AIを介したチャットボットが住民との対話を円滑に進め、問い合わせへの即座な対応が可能になりました。これにより、住民とのコミュニケーションが強化され、行政の信頼性も向上していますが、「従来のAI」に留まっている状況です。一方でチャットGPTの出現により、各自治体でも生成AIの活用方法が検討され、文章の作成や要約、添削、アイデア出しなどの活用が検討されています。
自治体での生成AIの導入ステップは、まずニーズの明確化から始まります。具体的な業務やサービスにAIがどのように貢献できるかを検討し、導入の効果を見極めることが重要です。まずは、庁内業務に導入し、アイデア出しや翻訳・要約などの高度な事務作業に活用して、妥当性や効率化の評価を実施します。その後、住民接点の活用へ検討を進めることになります。
ただし、生成AIを導入する際には注意が必要です。生成AIが生み出す情報が正確であることを確認する必要があり、ハルシネーション(幻覚)のリスクを考慮することが不可欠です。特に公共サービスにおいては、誤った情報が混入することで深刻な問題が発生する可能性があるため、慎重な導入が必要です。
将来的には、生成AIの活用方法がさらに拡大すると考えられます。自治体は、生成AIが生成した情報や意思決定のプロセスを透明化し、住民との信頼関係を築くことが求められます。
自治体におけるAI導入は、効率化やサービス向上といったメリットが大きい一方で、リスクも潜んでいます。そのバランスを取りながら、生成AIを活用することで、より効果的な行政サービスが提供され、地域社会の発展に寄与することが期待されます。
小松 一浩(株式会社ベルシステム24 第4事業本部 営業企画部 営業企画グループ マネージャー)
営業とオペレーションのマネジメントを経験し、多数の民間クライアント企業を担当した後、現在は各省庁・地方自治体のDX案件を手掛ける。
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