人口減少および労働人口の減少が深刻な日本において、業務効率化は重要なテーマです。行政サービスも例外ではなく、近年は自治体BPR(業務改革)やデジタル移行の必要性が叫ばれるようになりました。一方で、場当たり的な施策を行ってしまうと、かえって業務が煩雑化する可能性があります。 そこで本記事では、自治体が抱えている課題や適切な業務改善の方法、取り組む際の注意点を解説します。各自治体の成功事例もご紹介するので、業務改善を検討している職員の方は、ぜひご確認ください。
お役立ち資料
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現場でよく起こる、紙書類が原因による業務の煩雑さや情報共有の遅れなどを解消するノウハウをお伝えします。京セラ独自のノウハウをご紹介した資料です。
自治体が抱えている課題 官民問わず業務改善が重要視される昨今ですが、自治体ならではの問題点もあります。まずは自治体が抱える代表的な課題を2つご紹介します。
アナログな業務が多い
多くの自治体では、紙ベースの業務やファクスを用いた業務フローなど、アナログな業務手法が根強く残っています。例えば、申請書や請求書などは紙の帳票で運用されており、職員はこれらの情報を複数人でチェックしながら1つずつExcelなどに手入力しています。さらに、紙文書には検索性の悪さや管理の煩雑さといったデメリットも存在し、ペーパーレス化の推進は重要な施策となるでしょう。
しかし、実際には予算の制約や既存プロセスへの依存などが進展の妨げとなり、多くの自治体ではデジタル化やDX化が進まないというのが現状です。
デジタル人材が不足している
自治体の問題点として、デジタル化やDX化に関する専門知識を持つ人材を十分に確保できないことが挙げられます。自治体でデジタル化を推進するためには、IT技術に精通し、かつ現場の実情を把握した人材が必要です。しかし、このような人材は民間企業に集中する傾向があり、自治体が採用することは容易ではありません。
また、自治体は民間企業とは異なり明確な競合が存在しないため、新しい技術が取り込まれにくい場合もあります。倒産のリスクがないため、業務改善に取り組まなかった場合でも、直ちに深刻な問題になる可能性は低いことも理由の1つであるといえます。
【事例あり】自治体のための業務改善の方法 自治体のデジタル人材不足、あるいは変化を嫌う組織文化などが改善活動の障害となっているのは事実ですが、成功事例も報告されています。ここでは、先述した課題を解決すべく全国の自治体が行った取り組みをご紹介します。
RPA(ロボットによる業務自動化)の導入
福島県郡山市では、Excelで行っていた現金等払込書作成業務をRPA(Robotic Process Automation)の導入により自動化しました。RPAとは、クラウド上のソフトウェア(ロボット)が人間の業務を代替し、パソコンで行っている事務作業を自動化する技術です。業務改善前の状況として、職員は窓口対応と財務会計システムへの手入力作業の両方に対応する必要がありました。また、これらの業務を同時に行うと入力ミスが発生しやすいため、手入力作業は業務時間外に行うなど、作業時間の長さが問題となっていました。そこで、RPAを導入し財務会計システムでの処理を自動化した結果、システムへの入力ミスが解消されるとともに、年間792時間の作業時間の短縮に成功しました。
作業マニュアルの作成
作業マニュアルとは、作業手順や判断基準をまとめた書類のことを指し、業務品質の向上や作業時間の短縮などを目的に作成されます。埼玉県さいたま市では、保健センターの業務をマニュアル化することで、職員が行う事務処理内容を明確にしました。保健センターでは支援員の手配を行っており、支援員の出勤状態などを別部署に報告する必要があるのですが、改善前は提出すべき書類の発送忘れなどが発生していました。この問題を解消するために作業マニュアルを作成し、職員の目に止まりやすい場所に設置した結果、書類の発送忘れが防止されるだけでなく、書類の発送準備にかかる時間を短縮することに成功しました。
紙媒体の電子化
電子化・ペーパーレス化とは、紙の資料や文書を電子的なデータに切り替えて活用・管理することです。この施策は民間企業でも推進されており、業務効率の向上や保管スペースの削減、セキュリティー強化などのメリットが期待されています。東京都中野区の事例として、福祉センターの母子カードの記録を「母子保健システム」に移行しました。従来の福祉センターでは区民からの問い合わせ対応に時間を要していましたが、電子データとして一元管理することで、迅速な対応が可能になりました。また、情報漏えいのリスクが軽減すると同時に、キャビネットスペースの削減も実現しています。
アナログ業務のデジタル化
アナログ業務をデジタル化することで、職員の時間と労力を効果的に削減できます。情報の共有と管理がスムーズに行え、不要な業務を排除することができるため、人件費の削減も実現します。実際に愛知県一宮市では、イベント受付業務のデジタル化によって業務効率化に成功しました。業務改善前は、イベントの受付時に来場者の名刺を回収し、その名刺のデータ化を外注していました。受付にかかる時間は一人あたり約3分、さらにデータ化のための外部委託にもコストがかかります。これらの課題を解決するため、来場者管理を行う受付プロセスを名刺回収というアナログ業務からQRコードの読み込みに切り替えた結果、受付応対にかかる時間は約15秒に短縮され、来場者のデータをそのままデータベースに送信してくれることから、名刺のデータ化にかかるコストも削減されました。
AIツールの導入や活用
AIツールを導入することで、さまざまな業務の効率化が期待されています。例えば、AI音声認識システムを導入すれば、話し言葉を自動的にテキストに変換することが可能となり、文字起こしの作業を高速化できます。三重県では、議事録作成にAIを活用することで、作成時間を約半分にすることができました。従来から議事録AIは活用されていましたが、認識率の低さが問題となっていたため、録音環境を改善するなどの対応を行うことで、生産性の向上を実現させています。
【出典】中野区公式ホームページ「全国自治体改善事例集」https://www.city.tokyo-nakano.lg.jp/kusei/kousou/seido/gyousei/jichitaikaizenjirei.files/zenkokukaizen.pdf
自治体が業務改善に取り組むときのポイント ほかの自治体の成功事例を参考にするのは重要ですが、表面的に模倣することは本質的ではありません。地域ごとに資源や風土は異なっており、何より自治体の事情を考慮する必要があるためです。ここでは、自治体が業務改善に取り組む際の普遍的な注意点を2つご紹介します。
業務を棚卸しして課題を洗い出す
まずは自治体の業務内容を棚卸しして、組織が抱える課題を洗い出しましょう。この棚卸し作業により、既存の業務プロセスや手続きに潜む無駄、効率な部分が明らかになり、改善の方向性を見つけることができます。不要な業務は削減し、自動化が可能な業務はRPAなどの活用を検討すると良いでしょう。
また、業務プロセスを見直す過程で、取り組むべき課題の優先順位も明確になります。自治体が解決すべき問題なのか、課題解決にどれだけの需要があるのかといった観点を持ちながら、費用対効果の高い課題に着手することが重要です。
組織が課題を理解して施策に取り組む
施策に取り組む際は、担当者だけでなく組織全体で課題を共有するようにしましょう。現場の協力を得るためには、職員に課題解決のメリットについて理解してもらうことが重要だからです。職員が新しい業務内容に対して納得し、意欲的に働けるよう、庁内で業務改善の目的を共有する場を設けたほうが良いでしょう。
また、組織全体の理解を促す方法として、職員自身にサービスを利用してもらう方法も効果的です。住民サービスの課題を直接体験することで、職員一人ひとりの気づきを引き出すことができます。このようなアプローチによって、業務改善に関する新たな提案が生まれ、それが次の改善活動につながる好循環が生まれます。
自治体組織の業務改善には電子化・デジタル化が有効です 今回は自治体組織が抱えている課題や、主な改善方法および成功事例についてご紹介しました。業務効率化を実現するには、業務プロセスの問題点を明確化したうえで、RPA導入、マニュアル作成、 デジタル化といった施策を実施することが重要です。京セラドキュメントソリューションズでは、自治体で働くみなさまへ向けて「紙書類管理の効率化」、「印刷環境の改善」に関するソリューションを提供しています。出力機の設置スペースや文書の取り違えなどにお困りの場合は、お気軽にお問い合わせください。
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