“コストの壁”を打破。災害対策や電力の地産地消に役立てる。
近年、自治体や企業の公用車や営業車等をEV化(電気自動車へ変更)する動きが加速しています。EVの普及が推進される背景として、脱炭素社会に向けた各種政策が挙げられます。
EV化は、環境負荷が軽減するだけでなく、地域や企業の問題解決においてメリットが期待できる一方、コスト面等が課題です。
本稿では、国内外における脱炭素化への取り組みからEVが必要とされる理由を解説し、EVの現状や特徴、普及のための課題解決に向けた新たなサービスについて説明します。
1. 自治体や企業が注目するEV化とカーシェア普及の動き
近年、公用車や営業車のEV化を行い、EVカーシェアリングを導入する自治体や企業が増加しています。
EVの普及は、CO2排出量の削減等環境負荷の軽減につながります。また、EVカーシェアリングは、環境への配慮のみならず、地域住民にとって自動車の保有コストを抑え、EVを試乗できるというメリットがあります。
2. なぜ今EV活用が着目されるのか
今なぜ、EVの活用が着目されているのでしょうか。ここでは脱炭素化に向けた国内外の取り組みや背景を解説します。
「地球レベル」で進む脱炭素
気候変動問題に関する国際的な枠組み「パリ協定」のもと、加盟国は温室効果ガスの排出削減目標を定めています。さらに、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、パリ協定における重要な科学的資料として「IPCC1.5℃特別報告書」を作成しました。
「IPCC1.5℃特別報告書」では、産業革命以降に見られた世界的な平均気温の上昇を1.5℃以内に抑えるには、2050年までにカーボンニュートラルを実現する必要があると示されています。
このような背景から、各国で脱炭素に向け目標を掲げ、取り組みが行われています。
グリーン成長戦略に盛り込まれた明確な目標
日本は2020年10月に「2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現をめざすこと」を宣言しました。これを踏まえて同年12月に、14の重要な産業分野における計画をまとめた「グリーン成長戦略」を発表しています※2。
そこでは「自動車・蓄電池産業」における取り組みとして、次のような目標が掲げられています。
・乗用車は、2035年までに新車販売で電動車100%を実現する
・小型商用車は、新車販売で2030年までに電動車20〜30%をめざす
・充電インフラ15万基を設置し、2030年までにガソリン車並みの利便性を実現する
・電動車を蓄電池として活用し、平時にはスマートシティを高度化し、災害時にはレジリエンスを向上する
※2 出典:経済産業省「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略を策定しました」
地域脱炭素ロードマップにおける重点対策
「地域脱炭素ロードマップ」とは、地域が主体となりながら脱炭素をめざす工程や具体策が示されたものです※3。地域脱炭素ロードマップには、太陽光発電の活用、再エネ電気の調達等、循環型社会へ移行するための重要項目が整理されています。
地域脱炭素ロードマップにおける重点対策の一つとして取り上げられたのが、「ゼロカーボン・ドライブ」です。省エネ電力やEV等を普及させ、車での移動を脱炭素化させる取り組みです。
具体的に、次のような取り組みが例示されています。
・EVカーシェアリングを実施する
・EVを再エネ電力で供給し、災害時の非常用電源として活用する
・EVタクシーやバスを導入する
※3 出典:内閣官房「国・地方脱炭素実現会議 地域脱炭素ロードマップ」
「脱炭素型カーシェア」の萌芽
以上のような流れを受け、2022年3月に「電動車×再エネの同時導入による脱炭素型カーシェア・防災拠点化促進事業」の補助金の申請受付が開始されました※4。
本事業の目的は、自治体等のEV公用車を再エネ設備と合わせて導入することで、地域におけるEVシェアリングの実現を促進するものです。さらに、EVを「動く蓄電池」として活用し、災害時に電源を確保する狙いがあります。
※4 出典:環境省「電動車×再エネの同時導入による脱炭素型カーシェア・防災拠点化促進事業」
3. EV化がもたらす効果
EV化がもたらす効果について3点解説します。
環境への貢献
先述したように、日本は2050年までにカーボンニュートラルを達成すると目標を掲げています。そこで重要となるのが、EV化によるCO2排出量の削減です。
日本では運輸部門におけるCO2排出量は1億8,500万トンで、全体の17.7%を占めています※5。EVは走行中にCO2を排出しないため、環境負荷が軽減されます。
乗用車によるCO2排出量は運輸部門の45.7%を占めており、自治体や企業によるEVシェアリングの普及等を通じて、EV化を推進することが重要です。
※5 出典:経済産業省エネルギー庁「自動車の"脱炭素化"のいま(前編)~日本の戦略は?電動車はどのくらい売れている?」
地域社会への貢献
自治体や企業がEVを公用車として導入し、使用していない時間に市民へ貸し出せば、地域社会への貢献にもつながります。さらに、エネルギーの地産地消である「地域マイクログリッド」の一環としてEVを蓄電池として活用すると、地域のレジリエンスの強化も期待できます
自治体や企業経営への貢献
EV化の推進は、自治体経営や企業経営、災害対策に貢献します。
エネルギーマネジメント
その一つがエネルギーマネジメントです。たとえば、「EV導入で電力料金が高くならないように、契約容量を超えないようにしたい」場合、電力を最適化することで電気代を抑えられるソリューションもあります。
具体的には、使用電力が少ない時間帯に充電をする「ピークシフト」や、使用電力が多くなる際に蓄電池等で電力を賄う「ピークカット」等です。
DX推進
EV化はDX推進にも役立ちます。EVシェアリングを実施する際、スマホアプリで予約や返却ができれば、貸出手続きをデジタル化できます。さらにバーチャルキーの活用や、走行距離をスマホアプリで管理することで、煩雑な車両管理が簡略化します。
災害対策・BCP
EVを「動く蓄電池」ととらえると、EV化は災害時におけるリスクマネジメント対策となります。平時にBCP(事業継続計画)の一環で車両をEV化しておけば、災害時の被害拡大を抑え復旧の迅速化も期待できます。
一般的な家庭用蓄電池の容量が5〜10kWhであるのに対し、EVは60kWhと6倍もの差があります。自然災害等で停電が発生しても、非常用電源としてEVを活用できれば避難時の安全性や快適性を確保しやすくなります。
4. EVの普及状況
自治体や企業のEV化が注目されていますが、日本のEV普及率は主要各国と比べてまだ低い傾向にあるのが現状です。
資源エネルギー庁が発表した2021年における「主要国・地域におけるEVの販売台数の推移」※6を見てみると、ヨーロッパは16.7%、次いで中国が15.9%、北米が5.0%という状況に比べ、日本は0.8%と低水準でした。
ヨーロッパ、中国、北米でEV普及が進む主な理由は、次のとおりです。
EV化はさまざまなメリットがあり、時流が後押ししているといえますが、グローバル視点では日本のEV普及はまだまだ遅れているのが現状です。
ここでは自治体や企業のEV化を阻む、それぞれの理由について考えていきます。
コスト
ガソリン車に比べ、EVは本体価格が高くなる傾向です。また、蓄電池として活用する場合、充放電設備や太陽光発電等の初期投資が別途必要になります。
さらに、利用状況や利用時間帯によっては電気代が高騰する等のリスクもあるのが、EVの普及が遅れる原因と考えらえます。
そのためEV導入時には、初期費用を抑えつつ、電気代を最適化できる機能を備えたシステムを選定することが重要です。
航続距離
1回の充電で走行できるEVの航続距離は、ガソリン車と比べて短い傾向にあります。
ガソリン車に乗り慣れている場合、航続距離の短さに不便さを感じてしまう点もEV普及が遅れる理由の一つです。航続距離1,000kmを超えるガソリン車と比較すると、EVは500km前後であるため、用途が限定される可能性があります。
しかし、地域内の買い物や移動、送り迎え等で使用する限りでは、十分な航続距離といえます。
充電施設
現状では充電施設も十分とはいえません。充電施設の課題として、都市部では有料駐車場や自動車会社を中心に設置されていますが、場所の確保が難しい点が挙げられます。地方では、充電施設の空白区間が多く残る点が課題です。
充電インフラは都市部を中心に整備されており、今後は全国で増加すると予測されます。
6. EV化の課題を解決! N.mobi(エヌモビ)
EV化における課題として、コスト、航続距離、充電施設数の3点を解説しました。このうち航続距離や充電施設数に関しては、技術の発展やインフラ整備で解決する日も遠くないと予測できます。
そこで課題として残るのがコスト面です。ここでは、初期費用や運用コストの問題を解決するN.mobi(エヌモビ)について紹介します。
N.mobiの特徴
N.mobiは自治体や企業のEV導入をトータルサポートする、NTTビジネスソリューションズが提供するサービスです。EV車両の手配、充放電設備、充電管理、EVシェアリングの導入だけでなく、電力の最適利用まで提案いたします。
N.mobiの特徴は、月額のサブスクリプション型で利用できるため、初期費用を抑えて導入できる点です。さらに、ピークシフトの活用で電気代が上昇するのを抑制できる点もメリットです。
環境にやさしいEVは蓄電池としても活用でき、地域の持続性向上やBCP対策にも効果的です。
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