TikTok Japanは2023年11月19日、「みんなで学ぶ気候変動フォーラム 〜地球環境のために今私たちができることを考える〜」を開催しました。近年、地球温暖化に伴う気候変動によって、世界各地で様々な問題が多発しています。その緩和と適応の取り組みは強化されていますが、気候変動についての認知と地球環境問題そのものに対する意識は、まだまだ高めていく必要があります。そこでTikTokは、若年層をはじめとする幅広い世代に対して、気候変動問題への興味・関心を高めるべく、「みんなで学ぶ気候変動」プロジェクトを今年初めて実施しました。
今回のフォーラムもその一環で、気候変動問題の現状、またその多くの取り組みを知ってもらうことを目的に、約100名をご招待して開催しました。
会場には気候変動の専門家とフォトグラファーのヨシダナギさん、そして3名のTikTokクリエイターが登場。また事前申し込みをしてくださった10-30代を中心とする参加者も集まり、気候変動が地球に与える影響を学ぶとともに、私たちが今できる具体的なことについて考えました。また本イベントの模様はTikTok LIVEでも配信され、累計約7万人の視聴者が気候変動について学びました。
また本フォーラムに先んじて、2023年10月18日にクリエイター向けのワークショップも開催。気候変動に関するリテラシーを高めてもらい、得た知識をいかして多くの方に興味を持ってもらうための啓発動画を制作、公開しました。
深刻な地球温暖化がもたらす地域間・世代間格差
フォーラム第1部では基調講演として、公益財団法人 地球環境戦略研究機関(IGES)上席研究員の藤野純一氏がオンラインで登壇。気候変動のメカニズムや社会に与える影響について解説しました。
「地球は1956年の産業革命以降、急激に温暖化が進んでおり、1.09℃も上昇しています」と藤野氏。特に深刻なのは海で、世界の温度上昇は0.56℃ですが、日本周囲の海は1.19℃も水温が上昇しているといいます。このためとれる魚種が変わるなど、漁業にも大きな影響を与えています。
地球温暖化は温室効果ガスにより地球が暑くなる現象ですが、単に気温の上昇にとどまらず、豪雨、洪水、農産物への影響、熱中症、山火事、日照りなどさまざまな気候変動が生じています。
地球温暖化の原因となるのが、CO2の排出です。しかし地球温暖化の影響は必ずしもCO2を多く排出している地域に生じるというわけではなく、CO2排出量が少ない地域に現れることもあります。これが地域間格差と呼ばれるもので、気候変動の大きな問題のひとつです。またCO2排出に関わっていない若い世代ほど地球温暖化の影響を受けるという世代間格差も大きな課題です。
現在、気候変動に取り組む国際的な枠組みであるUNFCCC COP(気候変動枠組条約 締約国会議)では、地球の温度上昇を1.5℃以内に収めるためにCO2排出量を削減する議論が進んでいます。具体的には2030年にはCO2排出量45%減(2005年比)、2050年には実質排出量ゼロを目指すことで合意しています。 さらに2050年以降は実質排出量をしばらくマイナスにしていかないと、温度上昇を1.5℃以内に保てないという事も分かっています。これは一般に考えられているより深刻な話で「特に若い世代、次の世代がより多くの影響を受ける」と藤野氏。だからこそ今回の取り組みのように、みんなで一緒に考えてくことが重要だと強調しました。
個人の努力では限界。気候変動は社会全体で取り組むべき課題
藤野氏の基調講演を受け、第2部ではフリーキャスターで気象予報士の根本美緒さんが司会を務め、一般財団法人 世界防災フォーラム代表理事で東北大学災害科学国際研究所 教授兼副研究所長の小野裕一氏と一般社団法人地球温暖化防止全国ネット(JNCCA)事務局長の平田裕之氏による「気候変動における社会的対策について、どのような打ち手があるのか?」をテーマとしたパネルディスカッションが行われました。
小野氏は、1000年、2000年の気候変動であれば適応することができても、100年単位の急激な気候変動に地球が適応することは難しい、といいます。「特に災害に関しては、これまでのやり方が通用しなくなる」と小野氏は警鐘を鳴らしました。
深刻化する気候変動に対して、どのような対策が必要なのか。「これまでは個人の我慢に頼ってきた部分が大きかったが、もはやそれでは解決できないレベル」だと平田氏はいいます。我慢によってCO2排出を削減するのではなく、環境省が提唱する脱炭素につながる新しい豊かな暮らしを創る国民運動「デコ活」のように、無理なく楽しみながら社会全体が脱炭素を実践する必要があります。積極的に気候変動対策に取り組む企業の商品を購入する、おしゃれと脱温暖化の取り組みをかけ合わせるなどの取り組みを通じ、個人ががんばるのではなく、みんなで取り組む土壌をつくることが大切だと平田氏は訴えました。
ESG投資など気候変動への取り組みがグローバルビジネスの常識となる中、ヨーロッパでは温室効果ガスを出さないためのさまざまな対策が進んでいます。一方で、自然災害の少ないヨーロッパとは違い、日本では気候変動の影響ともみられる激甚災害が増加しているので、防災対策を含めた気候変動適応への投資や施策は待ったなしだと、小野氏は指摘します。
平田氏は、国によって気候変動、SDGsなどへの取り組みはばらつきがあるのが現状で、中には将来国土を失うリスクを抱えている国もあるといいます。だからこそ短期的な対策だけでなく、長期的な視点でさまざまな取り組みをすることが重要だと指摘しました。
ヨシダナギさんがアフリカで感じた気候変動の影響
第3部では小野氏、平田氏に加えて、フォトグラファーのヨシダナギさん、TikTokクリエイターの神堂きょうかさん、MOSCO|モスコさん、みいるかさんによるパネルディスカッションが行われました。
はじめにアフリカなどで少数民族の撮影を行うヨシダナギさんの作品を見ながら、現地の人々の様子や気候変動の影響について話し合いました。ヨシダナギさんは5歳のときにテレビで見たマサイ族に魅了され、アフリカに撮影に通うようになったといいます。以前はそれほど気候変動を意識していなかったが、2022年にサハラ砂漠で植林と気候変動についての映画を撮影している人と出会い意識が変わったというヨシダナギさん。西アフリカで撮影したときには、干ばつで家畜が全滅したという話も聞き、事態の深刻さを感じているといいます。
TikTokクリエイターの神堂きょうかさん、MOSCO|モスコさん、みいるかさんの3人は、フォーラムに先立ち気候変動についてのワークショップに参加。そこでの学びをもとに、それぞれが気候変動について啓発するショートムービーを制作、公開しました。
神堂さんは、気候変動対策の植物由来の素材でできたストローやマイバック、マイボトルなどのグッズを楽しく紹介する動画を制作しました。「私はもともと気候変動にあまり興味がなく分からないことだらけでした。勉強会をきっかけに、もっと気候変動について知りたいという気持ちになりました。初めて知ったこともたくさんあったので、そういう自分にできる基本的なことを動画に取り入れてみました」(神堂さん)。
一人二役の動画を制作したのはMOSCO|モスコさんです。「海外で若手の環境活動家が政府に訴訟を起こすドキュメンタリーを観たのをきっかけに、自分にも気候変動に対してできるアクションがないか考えるようになりました。今回は、一人二役で身近なことからできるアクションについて、食品ロスをテーマにわかりやすく伝える動画をつくってみました。大切なのは、“買いすぎない、つくりすぎない、注文しすぎない”です」(MOSCO|モスコさん)。
かわいいイルカなどの海の生き物のイラストが人気のみいるかさんは、おなじみのイルカたちのぬいぐるみが気候変動について会話する動画をつくりました。若年層のファンも多いみいるかさんだけに、子どもたちにも分かりやすい内容となっています。「私は水族館で働いていたことがあるほど海の生き物が大好きなので、海の生き物が抱える環境問題には以前から強い関心を持っていました。ビーチクリーン活動などにも参加しています」(みいるかさん)。
子どもたちや世界の国々へ伝えていく大切さ
パネルディスカッションでは、プラスチック問題についても話が及びました。
「アフリカでもプラスチックごみが大きな問題になっています。現地の人たちは、昔からゴミを土に埋めてきたので、ゴミはすべて土に返るものだと思っています。だからプラスチックゴミがなぜ分解されずに残ってしまうのか、理解できないという感覚を持っているようです」とヨシダナギさんは話します。
平田氏は「日本では誰もが知っていることも、世界では知られていなかったりすることが多い」と説明し、解決のためには基本的な教育が必要だと語りました。みいるかさんは「キャラクターやマンガ、イラストなどで伝えれば、子どもたちにも理解してもらいやすいと思います」と、子どもたちへの環境教育のアイデアを出しました。
最近、離島に移住したというヨシダナギさん。離島は都会と違ってゴミ収集の頻度が少ないので、ゴミに対する意識が高いといいます。ヨシダナギさん自身も、ペットボトルを島に持ち込まないようマイボトルを使うようになったり、コンポストで生ゴミを処理したりと行動が変化してきたそうです。「そういう風に、自分でできることをひとつずつ増やしていきたいですね」と前向きに語りました。
イベントの最後には会場の参加者からたくさんの質問が寄せられ、登壇者のみなさんがていねいに回答。気候変動について活発な意見が交わされ、学びや気づきの多い気候変動フォーラムとなりました。
【TikTokについて】
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