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コロナ禍のなかでも市を発展させる、新市長2年目の船出

向こう10年のロードマップを掲げ、「世界が憧れるまち“小田原”」を目指す

向こう10年のロードマップを掲げ、「世界が憧れるまち“小田原”」を目指す

コロナ禍のなかでも市を発展させる、新市長2年目の船出

向こう10年のロードマップを掲げ、「世界が憧れるまち“小田原”」を目指す

小田原市長 守屋 輝彦

※下記は自治体通信 Vol.31(2021年7月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。


新型コロナウイルスの影響で、住民の暮らしも大きく変化した。テレワークやワーケーションといった働き方も、徐々に浸透しつつあり、郊外への移住に注目が集まっている。小田原市(神奈川県)では、都心部から近い立地条件により、転入超過が続いている。さらに、その勢いを加速させるため、人や団体を積極的に誘致する施策や市がもつ豊かな資源を活用したPR戦略などに取り組んでいるという。取り組みの詳細を、昨年5月、新市長に就任した守屋氏に聞いた。

取り壊し予定だった、公共施設を再利用

―小田原市では転入者が増えているそうですね。

 はい。例年と同じように、進学や就職により3月は転出超過になりましたが、その月以外は令和2年の6月から一貫して転入超過が続いています。これはやはり、コロナ禍により働き方が変わったことが大きな要因だと思います。都心の会社に通わなくても、パソコンと通信環境さえ整っていれば、どこでも仕事ができる時代になりましたからね。そして、小田原市の場合、東京に行く必要が生じても、新幹線なら26分で品川駅に着くわけですから。そういった点が、評価されているのだと思います。

 当市としては、その流れをさらに加速させるための取り組みを進めているところです。

―具体的な取り組みを教えてください。

 たとえば、公共施設を利活用する取り組みです。旧片浦支所は平成31年3月に空き家となり、取り壊して駐車場にする予定でした。しかし、地域住民が非常に慣れ親しんだ施設で、私も実際に訪問すると、建物の魅力とロケーションのすばらしさに気づきました。そこで取り壊しを止め、コワーキングスペースやシェアオフィスとして活用してくれる事業者の公募を開始。事前に行った調査では、「使ってみたい」という事業者の手が実際にあがっています。現在のところ、旧片浦支所を含め、4施設で公募を行っています。

 さらに、指定管理者に運営をゆだねているキャンプ場で、EVによるカーシェアリングを使ったワーケーションの提案を行っています。こうした施設に、市の中心部から車で5~10分ほどで行けるのは小田原市の大きな特徴だと思います。

人が交流を図れる場を、駅前に開設した

―そのほかに、人を小田原市に呼び込むために取り組んでいることはありますか。

 産官学連携の取り組みを、促進させています。昨年12月、JR小田原駅前に再開発された商業施設「ミナカ小田原」の一角に、「おだわらイノベーションラボ」を7月に開設します。ここでは、多種多様な企業や大学、あるいは金融機関の人材が意見交換をしたり、若手人材がプレゼンしたりするなど、人が交流することで、新しいビジネスマッチングやイノベーションが生まれる場所として発展させたいと考えています。そして、大手企業や大学、研究機関との協定を積極的に進めています。それが結果的に、さらなる人や企業の誘致につながればいいと考えています。

 また、別のアプローチとしての取り組みもあります。

―それはなんでしょう。

 「美食のまち小田原」の推進です。長い歴史をもつ小田原市には、多様な食文化があります。相模湾西部の漁業の中心地として栄え、肥沃な足柄平野では、米や野菜、柑橘類が生産されています。代表的なもので言えば、かまぼこや梅干し、干物ですが、飲食店の数も含め、市内は食文化であふれています。たとえば、小田原市のアジフライは非常に有名で、そういった何気ない日常のなかに豊かな「食」がある。そうした観点から、小田原市をPRしようとしているのです。

 幸いにも、さまざまな媒体で小田原市の食を取り上げていただく機会も多く、東京から近いことから旅番組のロケもひんぱんに行われています。当市としても、これまで企画部にあった広報広聴課を市長直結の広報広聴室に変更しました。リアルタイムに新鮮な情報を届けるため、広報体制の充実を図っていきたいと考えています。

4つの柱を中心に、新型コロナ対策を実行

―守屋さんが市長に就任して1年が経ちました。振り返ってみての感想はいかがですか。

 私が市長に就任したのが、昨年5月。まさに最初の緊急事態宣言が出されている時期でした。そのため、「生活を守る」「事業者を守る」「教育を守る」「地域医療を守る」という4本柱で、新型コロナウイルス対策を全庁あげて行ってきました。これからも引き続き、4本柱を中心に対策を行いつつ、さらには、小田原市発展のため、新たな施策を行っていく予定です。その基本方針や取り組みをまとめた、「2030ロードマップ」を令和3年3月に作成。今年度から、新たに着手しています。

―詳細を教えてください。

 「世界が憧れるまち“小田原”」を将来像として掲げ、それを実現するための、今後10年間のロードマップです。「医療・福祉」「教育」「企業誘致」「環境・エネルギー」という4つの先進的な領域と、それらを推進していくためのエンジンとして「デジタルまちづくり」と「公民連携」を位置づけ、プロジェクトを進めていきます。冒頭に話した、さまざまな取り組みもその一貫です。

 そして、このロードマップを実行していくためには支える組織が必要だろうということで、「デジタルイノベーション課」と「未来創造・若者課」を新設しました。

一つひとつの施策に、ていねいに取り組む

―2つの課はどのような役割を担うのでしょう。

 デジタルイノベーション課には、おもに大きく3つの要素があります。まず行政内部のデジタル化。そして、市民が使いやすいサービスを提供するためのデジタル化。最後に、まちづくり全体のデジタル化です。

 そして、未来創造・若者課では、公民連携を進めつつ、若者のチカラを政策に活かすため、たとえば政策コンペティションのようなカタチで若者からどんどん提案してもらい、いいものは積極的に採用していく、といった取り組みを考えています。これも言わば、公民連携です。また、女性が本当の意味で活躍できるための取り組みも行っていく予定です。

―今後における行政ビジョンを教えてください。

 一つひとつの施策にていねいに取り組むことで、小田原市における住民生活の質向上に努めていきます。やはり医療や教育などの質が低い場所に人は住みませんから。そして、地域経済をうまく回していくこと、自然や文化など豊かな環境を継承していくこと。それが、持続可能な地域社会につながっていくはずです。

 また、当市はSDGs未来都市・自治体SDGsモデル事業に選出されています。今後は、環境・エネルギー施策に、一層取り組んでいきます。「2030ロードマップ」に沿って、これらを実現するための施策を実行し、「世界が憧れるまち“小田原”」を目指します。

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守屋 輝彦 (もりや てるひこ) プロフィール
昭和41年、神奈川県生まれ。東京大学大学院都市工学専攻修了。平成4年、神奈川県庁に入庁。平成23年、神奈川県議会議員に就任する。その後、神奈川県議会建設常任委員長や党政務調査会副会長を務める。令和2年、小田原市長に就任。現在は1期目。
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