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生産性向上を目指した「オフィス改革」のその後

市民と一緒に地域課題を解決できる「市役所の基盤」が強化できた

市民と一緒に地域課題を解決できる「市役所の基盤」が強化できた

生産性向上を目指した「オフィス改革」のその後

市民と一緒に地域課題を解決できる「市役所の基盤」が強化できた

西予市長 管家 一夫

※下記は自治体通信 Vol.41(2022年8月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。


人口減少が進み、財政状況が厳しくなるなか、地域課題の解決力を高めることを目的に、西予市(愛媛県)は平成26年度から「オフィス改革プロジェクト」という独自の取り組みを進めてきた。柔軟な働き方の実現をベースに、職員の生産性向上を図るこの取り組みの成果について、市長の管家氏は、「今後のまちづくりを支える基盤を強化できた」と評価する。同プロジェクトによって強化できた基盤とはどのようなものか。また、今後のまちづくりにどう活かされるのか。同氏に詳しく聞いた。

生産性向上を図る取り組みは、「待ったなし」の状態だった

―西予市では、平成26年度から始めた「オフィス改革プロジェクト」が注目を集めてきましたね。

 ええ。このプロジェクトでは、「職員の柔軟な働き方」の実現に向けて、固定席や袖机の廃止、ICT機器の導入、庁内ネットワークの無線LAN化などを行い、職員が庁舎内のどこでも業務ができる環境を整備しました。また、一部業務にはクラウドサービスを導入し、外出先や自宅からでも情報を確認できるようにして、情報共有のスピード化を図りました。今後も継続させるこのプロジェクトの目的は、「生産性の向上」です。それを掛け声だけで終わらせることなく、「職員の生産性を上げるにはどのような職場環境が必要か」を考えて進めたものです。

―どのような経緯から、そのプロジェクトに着手したのでしょう。

 当市が平成16年の合併で誕生した当時、人口は約4万7,000人でした。その状況がいまでは約3万5,000人に減少し、約20年後には人口がさらに1万人ほど減る予測が出ています。厳しくなる財政状況において、現在の職員数を維持することが困難となる一方で、医療・福祉、子育てなどの行政サービスは充実させなければいけません。また、当市は「平成30年7月豪雨」で大きな被害を受け、激甚化する災害への対策も喫緊の課題です。数々の課題に限られた職員の数で対応しなければならず、生産性向上の取り組みは当市にとって「待ったなし」だったのです。このプロジェクトは前市長がスタートさせ、それを私がしっかり引き継いで推進しています。

チャレンジを奨励する、「雰囲気」の醸成

―このプロジェクトを通じ、どのような成果を実感していますか。

 先ほど申し上げた数々の課題に対応していけるだけの「市役所の基盤」が強化できたのは、プロジェクトの成果だったと考えています。当市は、令和2年3月に改訂した「第2次西予市総合計画」のなかで、「常に危機感」「常にチャレンジ」「常に一歩先行く」「常に市民と共に手をとりあって」という基本理念を掲げています。仮に、課題を抱えながら「現状維持」のままだと次々に課題は積み重なり、それは「後退」を意味していくと考えるからです。ですから、現状に対してつねに危機感を持ち、いろいろなことに向けて積極的にチャレンジして状況を打開していく意識がなければ、先に進めません。

 そのためにも、職場自体がチャレンジを奨励する「雰囲気」を持っていなければなりません。そうした庁内の雰囲気が、一連の「オフィス改革プロジェクト」を通じて醸成されてきたと感じています。

―どういった部分で、その成果を感じますか。

 明らかに、職員同士のコミュニケーションが活発化した部分ですね。固定席がないことで、さまざまな立場の職員が机をともにし、ときには業務以外のことで話が盛り上がる場面も見受けられます。そういったコミュニケーションのなかから、新たな発想やアイデアは生まれるものです。本庁と支所のあいだでも、打ち合わせたいことがあればすぐにWeb会議を開いています。そこでは、「このようにしたらいい」「新たなことをすべきだ」といった前向きな意見が飛び交っています。いまや当市の職員は、チャレンジすることを恐れていないと思いますよ。

地域の課題解決に向けた、新たな拠点をオープンへ

―個々の職員の意識変革が庁内の雰囲気を変えたと。

 そう思います。私は約15年間、旧宇和町で職員として働いた経験がありますが、当時と比べ、いまは行政が解決すべき課題はさらに多様化・複雑化しています。それらを解決するには、職員同士の連携強化は欠かせません。そのためのコミュニケーション活性化であり、「オフィス改革プロジェクト」でした。そして、その連携強化は、職員同士の話だけでなく、いまでは市民も一緒にまちづくりに取り組んでもらえるような連携にまで、発展させていくことを目指しています。行政のリソースだけでは解決できない課題にも着手しなければならないからです。総合計画に「常に市民と共に手をとりあって」という基本理念を盛り込んでいるのは、そのためです。

―どのようにして、市民との連携に取り組んでいきますか。

 大きな取り組みとして、令和5年4月から市内27ヵ所に「地域づくり活動センター(以下、センター)」をオープンします。これまでの地区公民館が持つ機能を維持しつつ、各地域の自治活動をより一層支援できる拠点を目指すものです。各センターの運営には、市の職員以外に地域が雇用する「地域任用職員」の方々にも参画してもらいます。地域の福祉や子育て、防災のあり方から日常的な困りごとまでさまざまな議論が重ねられる場になるでしょう。その内容を本庁や支所の職員がつねに共有できる体制を整え、各センターで積極的な活動ができるようサポートします。地域を熟知した市民と、チャレンジを恐れない職員が連携することで、地域の未来を想像しながら理想とする地域が各地で生まれると期待しています。

「楽しむ」ことを忘れない、市政運営を心がける

―今後の市政ビジョンを聞かせてください。

 当市には、日本ジオパーク委員会から認定を受けた「四国西予ジオパーク」があります。そこでは、豊かな自然や多様な生態系をベースに、魚介類や米、果物、畜産品などの特産品が豊富に生み出され、まさに当市のさまざまな魅力が凝縮されています。こうした、まだまだ知られていない当市の魅力を積極的にアピールし、今後は移住政策にも注力する方針です。

 当市は当面、少子高齢化が進展していくため、描いたような理想的なまちづくりを進められないことがあるかもしれません。それでも私は、楽しみながらチャレンジし続けます。いまの西予市には、市民とともにまちづくりを進める基盤が整いつつあるという自信があるのです。一歩でも前に進めば、「住んでみたい」「生活したい」と思ってもらえる魅力ある西予市になっていくはずです。そのためにも、「楽しむ」ことを忘れない市政運営を心がけたいですね。

管家 一夫 (かんけ かずお) プロフィール
昭和29年、愛媛県東宇和郡宇和町(現:西予市)生まれ。昭和48年、愛媛県立宇和高等学校卒業後、宇和町役場に入庁。約15年間勤務した後、平成2年から社会福祉法人宇和町社会福祉施設協会(現:社会福祉法人西予総合福祉会)に勤務。平成22年から同法人理事長に就任する。平成28年5月、西予市長に就任。現在、2期目。
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