※下記は自治体通信 Vol.54(2023年12月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
近年、行政サービスの多様化に伴い、自治体から住民へ発送する郵便物が増加しており、その作成業務が職員には大きな負担となっている。そうしたなか、郵便物の印刷から封入封かん、宛名印刷までを一貫して自動で行える高速インクジェットプリンターの導入により、郵便物作成に関する業務負担を軽減したのが荒尾市(熊本県)だ。同市市長の浅田氏に、取り組みの詳細と具体的な効果を聞いた。
[荒尾市] ■人口:4万9,708人(令和5年10月末現在) ■世帯数:2万3,996世帯(令和5年10月末現在) ■予算規模:592億4,450万4,000円(令和5年度当初)
■面積:57.37km² ■概要:熊本県の西北端に位置。福岡・熊本両都市圏の中間にあり、鉄道や道路ネットワークが整っていることから都市部への通勤・通学がしやすい立地となっている。また、西日本最大級の遊園地「グリーンランド」のほか、世界文化遺産の「万田坑」やラムサール条約に登録された「荒尾干潟」など観光資源も豊富で、毎年約200万人の観光客が訪れる。
業務時間の削減効果は、年間1,000時間超の試算
―新たなプリンターを導入した経緯を教えてください。
当市では先端技術を活用した業務改善に力を入れており、平成30年には印刷データ作成とプリンターへの指示入力にRPAを用いて、ふるさと納税に関連する郵便物に封入する書類の印刷を自動化しました。しかし、封入封かんや宛名ラベル貼りは手作業のままで、職員の大きな負担になっていました。当時ふるさと納税は年間1万件を超え、繁忙期には何人もの職員が集まって1日何時間もかかっていたのです。そこで、印刷と封入封かんを一貫して自動化する方法を模索するなか、理想科学工業から受けた提案ならば、それが可能と考えました。
―どのような提案ですか。
高速インクジェットプリンター『オルフィス』とオプションの『メーリングフィニッシャー』で、封筒・封入物の印刷から、封入物の三つ折り、封入封かんまでを一貫して自動化するという内容です。印刷から封入封かんまでが1通ずつノンストップで自動的に行われるため、誤封入を防止できる点も魅力的でした。従来は、プリンターで封入物と宛名ラベルをまとめて印刷した後に手作業で封入封かんしており、誤封入防止のための確認作業に多くの時間を費やしていたのです。実証実験を経て、令和元年に2つの機器を導入しました。
―導入によって、どのような成果を得られましたか。
深夜に自動稼働させると翌朝、職員が登庁する頃には郵便物が完成しています。そのため、ふるさと納税が6万2,884件まで増えた令和3年度でも、職員1人で十分に対応することができました。さらに、『オルフィス』は特別な専門知識がなくても扱えるため、給付金や助成金、ワクチン接種など、多種多様な郵便物の作成業務に活用しています。令和4年度には、ふるさと納税約2万件を含む計6万6,300件の郵便物を『オルフィス』で作成しました。手作業でかかる時間を1件1分として試算すると、この年だけで1,000時間以上の業務時間を削減できたことになります。業務時間の削減効果を人件費に換算すれば、導入費用は3年もかからずに回収できた計算になります。
誤封入に対する不安から、職員が解放された
―現場の反応はいかがでしたか。
業務時間の削減に加えて、誤封入の不安から解放されたことを喜ぶ職員の声が特に多く寄せられています。今回の取り組みを通じて、職員が住民サービスの向上や政策提言など本来の業務に集中できる環境の整備は大きく進みました。加えて、「先端技術を積極的に活用する」というマインドが一層培われたことは、当市が現在力を入れているスマートシティの実現にも寄与すると期待しています。
増加する郵便物作成業務の効率化は、「一気通貫での自動化」が最適解
理想科学工業株式会社
営業本部 営業統括部 特販課長
和田 隆宏わだ たかひろ
昭和59年、東京都生まれ。平成18年、理想科学工業株式会社に入社。浅草支店、金沢支店、本社営業統括部(販売促進部門)、北海道営業部勤務を経て令和5年から現職。自治体・医療・物流業を担当。
―自治体における郵便物作成業務の課題はなんでしょう。
多くの自治体が、封入封かんや宛名ラベル貼りを手作業で行っている点です。給付金案内や各種予防接種のお知らせなど、自治体が発送する郵便物は増加傾向にあり、その作成にかかる負担は年々大きくなっています。また、個人情報や機密情報の保護、納期などの観点から、アウトソーシングでは対応しきれないケースもあります。
―職員の業務負担を軽減するには、どうしたらよいのですか。
封筒への宛名印刷から封入物の印刷、封入封かんまでを一気通貫で自動化することが最適解だと、我々は考えています。当社の『オルフィス』と『メーリングフィニッシャー』であれば、パソコンから出力指示をかけるだけで、2,000通の印刷と封入封かんを約53分*で印刷物の載せ替えなしに自動で完了できます。加えて、作業指示にはWordやExcelの「差し込み印刷」機能を使えるため、特別な研修を行わなくても職員は簡単に扱うことができます。
―自治体に対する今後の支援方針を聞かせてください。
印刷から封入封かんまで対応できる『オルフィス』を活用した業務の簡素化や誤封入の防止など、庁内で効率的に手間なく処理する提案をはじめ、印刷にかかわる業務全般を支援していきます。『オルフィス』は、自治体から相談が増えてきている基幹システムからの出力にも対応できますし、生産・保守サービスの終了が懸念されるラインプリンターの代替機としても利用可能です。気軽にご相談ください。
*約53分 :『オルフィスGL9730』と『ORメーリングフィニッシャーⅡ』で封入物がA4片面プリント1枚封入時。2,000通は100通作成時の理想科学工業の検証実験より算出