※下記は自治体通信 Vol.56(2024年3月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
代表的な地域経済活性化策の一つとして、クーポンの発行事業に取り組む自治体は多い。そこでは、施策効果の拡大を目指し、電子クーポンの導入を図る動きも強まっている。そうした状況に対し、デジタルギフトの発行などを手がけるSBギフトの亀田氏は、「電子クーポンの導入で施策の効果をあげるには、電子化がもたらすメリットを十分に発揮させることが重要」だと指摘する。指摘の詳細について、同社の定松氏も交えて聞いた。
定松 礼倫さだまつ ひろのり
昭和51年、福岡県生まれ。平成13年に九州工業大学を卒業。ゲーム制作会社でオンラインゲームの制作や運営に従事した後、平成20年に福岡ソフトバンクホークス株式会社に入社し、SBギフト株式会社も兼務。平成30年より現職。おもに法人企業に対する販促活動やマーケティングを担う。
亀田 裕一かめだ ゆういち
昭和50年、石川県生まれ。鹿児島県育ち。平成16年にソフトバンク株式会社に入社し、IP電話のシステム構築に携わる。平成29年からSBギフト株式会社でサービス運営やセキュリティ管理のほか、ふるさと納税・子育て支援などの自治体事業における紙クーポンの電子化推進を担当。
電子化によって、利用者に手間が生じる場合も
―クーポンの発行事業をめぐる、自治体の課題はなんですか。
定松 期待したほどに住民の消費を喚起できず、「地域経済を活性化する」という事業の本来の目的を達成できないケースがあることです。課題の背景として多くの自治体があげるのは、事業に参画してくれる店舗側にかかる業務負担です。たとえば紙のクーポンの場合、回収したクーポンの管理や、事務局への報告といった業務負担が生じます。そうした負担を理由に店舗が事業への参画を敬遠すれば、クーポンを利用できる店舗自体が限定され、消費促進の効果が下がってしまうのです。
亀田 最近は、そうした店舗側の負担を解消すべくクーポンの電子化を検討する自治体が多いですが、電子クーポンの発行システムを導入しても、課題の解決につながらないケースは少なくありません。
―それはなぜでしょう。
亀田 たとえば、電子クーポンの認証に専用端末を必要とするシステムの場合、クーポンの読み取りやデータの管理などに伴う煩雑な作業が店舗側に生じる可能性が出てきます。また、システムによるデメリットは利用者が負うこともあります。クーポンの入手に専用アプリのダウンロードや会員登録が必要となれば、利用者がその操作に手間を感じ、クーポンを使うモチベーションを下げてしまいかねません。そこで当社では、これらのデメリットを解消できる「モバイルクーポンシステム」を開発。電子化がもたらす本来の業務効率化のメリットを最大限発揮させ、電子化そのものを成功に導くことで、期待通りの経済効果を生み出すクーポン発行事業を支援します。
クーポンの認証に、店舗側の負担がかからない
―そのシステムにはどういった特徴があるのですか。
定松 店舗側の業務負担を徹底的に抑えられることです。このシステムは、利用者のスマートフォンにクーポンを表示させる仕組みとなっており、利用者自身がコード番号を入力し、「確認」ボタンをタップすることでクーポンの認証が行われます。そのため、店舗側にはクーポンの認証に伴う業務負担がほとんどかかりません。専用端末が不要なため、自治体も事業にかかるコストを抑えられます。また、クーポンは二次元コードやURLを介して配布できるため、利用者は煩雑な操作を行うことなく手軽にクーポンを入手できます。
亀田 このシステムは、ソフトバンクグループの事業で1日150万のアクセスを受けながらも安定稼働した実績があり、導入自治体から「安心して利用できる」という評価を得ています。また、そうした大規模な事業で蓄積してきた知見や、専用端末が不要なサービス設計を活かし、スピーディな事業推進を実現できる点も強みです。
―自治体に対する今後の支援方針を聞かせてください。
定松 電子クーポンのほかにも、デジタルを活用した各種ギフト関連システムで自治体の施策を支援していきます。たとえば、セブン︲イレブンなどの提携店舗で商品と引き換えられる「デジタルギフト」は、住民が手軽に利用できる点が好評で、多くの自治体で健康増進活動などに採用されています。また、「配送型Webカタログギフト」は、取り扱い品目を柔軟にカスタマイズできる点が特徴で、出産子育て応援交付金事業などでの活用をおすすめできます。
亀田 当社には、これらシステムの提供だけでなく、施策の設計段階から伴走支援できる体制も整っています。関心のある自治体のみなさんは、ぜひご連絡ください。
クーポンで約12万人を銭湯に送客。大好評の地域活性化策を実現できた
[東京都] ■人口:1,410万5,098人(令和6年1月1日現在) ■世帯数:744万7,433世帯(令和6年1月1日現在)■予算規模:16兆5,583億7,200万円(令和6年度当初案) ■面積:2,199.93km²
東京都は、東京都公衆浴場業生活衛生同業組合と連携し、令和4年度に銭湯の割引入浴券「東京1010クーポン」を配布する事業を実施した。日本の伝統文化であり、地域住民の交流の場でもある銭湯の魅力を、より多くの人々に知ってもらうのが目的だ。事業では、デジタルネイティブの若者に訴求するため電子クーポンの活用を検討し、SBギフトの「モバイルクーポンシステム」を導入。銭湯側に負担をかけないかたちで、短期間で事業を始められる点が導入の決め手となった。
対象の銭湯の数は400軒以上にのぼるが、クーポンの利用をめぐるトラブルもなく、約12万人もの送客を実現できた。住民にも大好評だったため、事業は令和5年度にも実施。同年度も、多くの人がクーポンを利用し、早い段階で利用予定数に達するほど注目を集めたという。