※下記は自治体通信 Vol.29(2021年4月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
地方公務員法の改正により、令和2年度から従来の非常勤職員は、「会計年度任用職員」として新たに任用されることになった。これに伴い、当該職員の休暇、手当、福利厚生などが拡充される一方、その制度変更に伴う新たな対応が自治体に迫られている。そうしたなか、北区(東京都)ではシステム化によって、これらの管理業務の負担軽減に成功しているという。同区担当者に、システム化の効果などを聞いた。
北区データ
人口:35万2,541人(令和3年3月1日現在) / 世帯数:19万8,882世帯(令和3年3月1日現在) / 予算規模:2,297億923万5,000円(令和3年度当初案) / 面積:20.61km² / 概要:江戸時代から飛鳥山の桜、名主の滝公園の滝や紅葉といった四季の変化を楽しむことができる行楽地として知られる。現在も、これらの自然をはじめ、荒川や石神井川などの4つの河川に恵まれ、緑あふれる地域。令和6年から新1万円紙幣の肖像画に採用される渋沢栄一が本邸を構えたまちとしても知られる。
所管課の業務負担を想定し、早くからシステム導入を決断
―会計年度任用職員の制度発足に伴い、北区ではどのような対応を行ったのでしょう。
松田 当区の場合、新制度の対象となる職員が1,400人ほどおりますが、それぞれに業務内容や勤務形態が異なるため、それら職員の管理は各所管課が行っていました。しかし、新制度の発足に伴い、勤怠管理や給与計算といった業務が大きく変わるなか、実務を担う各所管課の負担がかなり重くなることが想定されました。
人事制度や給与計算に精通しているわけではない各所管課の職員が新制度の詳細を理解し、正確に運用すること自体、難しいことです。そのため、職員の負担軽減を考え、制度発足に合わせて、システム導入の方針を早くから決めていました。
―導入の経緯を教えてください。
勝山 職員課では、令和元年の春頃から各所管課や各区とともに議論を重ね、制度の基本的内容が固まったのが令和元年8月頃。短期間でのシステム移行が迫られるなか、検討の末、正規職員の申請管理を行っていた富士電機製『庶務事務システム』と連携可能な『会計年度任用職員管理システム』の導入を決めました。その後に急な制度変更もありましたが、富士電機の支援により、短期間での導入を実現できました。
業務削減効果が評価され、庁内の改革プランベスト1に
―導入したシステムは、どのようなものですか。
勝山 多様な職種や勤務形態にある会計年度任用職員の任用や勤怠、給与計算といった管理を、新制度に沿って一括して行えるシステムです。制度変更によって新たに求められる期末手当の算出、年度対応・管理などの業務も自動化できます。当区ではこのシステムの操作担当者として、各課に約2人ずつ、全庁で約150人を登録し、任用情報や勤務日、休暇申請などの勤怠情報を入力してもらっています。それらのデータは職員課に集約され、システム上で自動的に給与計算される仕組みです。
松田 従来、各課がバラバラに勤怠管理や給与支給を行っていましたが、システム化を機に、それらの業務を職員課へ一元化することに。同時に、従来活用していた『庶務事務システム』と連携させることで、正規職員と同じスケジュールで給与支給を行う体制ができました。
―導入効果はいかがですか。
松田 各課の業務負担は大幅に削減されました。任用時に外部機関に提出する書類作成なども、職員課が一括して処理できるようにもなった結果、職員の負担軽減と庁内全体の業務削減効果が評価され、庁内の「改革プランベスト1」に選ばれました。今後は、RPAとの連携によるさらなる業務効率化や、得られたデータの活用による働き方改革の推進など、システムの導入効果をさらに高める運用も考えています。