自治体専用ツールによる業務改革①
職員が使える「Web申請サービス」が、自治体DX推進の原動力に
名古屋市
総務局行政部情報化推進課 主査 綱島 謙
総務局行政部情報化推進課 情報化企画係 栗林 知広
総務局職員部人材育成・コンプライアンス推進室 主査 中村 公俊
今般のコロナ禍にあって、デジタル化が強く求められている自治体業務。いまだ多くの手続きが紙をベースとしており、いかにしてデジタル化を実現するか、多くの自治体にとって課題となっている。そうしたなか、名古屋市(愛知県)では自治体専用「Web申請サービス」の導入によってこの課題を解決し、業務の効率化を大きく進めようとしている。同市担当者に、取り組みの詳細を聞いた。
※下記は自治体通信 Vol.32(2021年8月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
[名古屋市] ■人口:232万9,081人(令和3年6月1日現在) ■世帯数:112万5,266世帯(令和3年6月1日現在) ■予算規模:2兆7,493億1,650万7,000円(令和3年度当初) ■面積:326.50km2 ■概要:慶長15年(1610年)に、関ヶ原の戦いで天下の実権を握った徳川家康が、海陸の連絡に便利な那古野台地に築城工事を始め、市街地が形成されはじめる。以来、徳川御三家筆頭の城下町として尾張藩の中心となり、江戸・大坂・京につぐ発展をみた。明治11年(1878年)、名古屋区として初めて独立行政区となり、明治22年(1889年)10月1日から市制施行。
従来の電子申請には、手間のかかる作業が伴った
―自治体専用Web申請サービスを導入した経緯を教えてください。
綱島 昨年夏に、トラストバンク社から無償トライアルの案内をもらったのがきっかけでした。それまで、当市では自治体専用のチャットツールの『LoGoチャット』を全庁的に活用しており、その利便性を感じていました。インターネットからもLGWANからも接続できるため、さまざまな場面で活用できるのです。案内された『LoGoフォーム』も同様に、インターネットとLGWAN双方で使えるとのことでしたので、申請やアンケートといった業務のデジタル化を図れるのではないかと興味をもちました。
栗林 じつはすでに当市でも、住民向けに電子申請の仕組みを導入していましたが、インターネットから入力されたデータをLGWANに移行する際、無害化処理をはじめ、かなり手間のかかる作業が必要でした。またセキュリティの関係上、庁内での各種申請・アンケートなどには使えませんでした。今回の案内を知った一部の部署から「ぜひ使ってみたい」との連絡を受け、検討。同じ『LoGo』ブランドへの信頼もあり、昨年8月から試験導入を決め、現在220ほどのアカウントで運用しています。
―具体的にどのような用途で活用していますか。
中村 最初に、我々人材育成・コンプライアンス推進室において、職員向けアンケートで活用しました。パワハラ対策が法制化されたことを受け、全庁規模で職員の意識調査を行ったものです。こうした調査では従来、紙の調査書を配布していましたが、制作や回収に多くの手間がかかるため、数千人規模で全庁調査を行う場合は外部業者に委託するケースもありました。ただし、多くの費用や時間を要するため、イントラネットを活用して簡易に実施できる仕組みを探していたところでした。
小さな変革を広げてこそ、DX推進の実効性は高まる
―導入後の効果はいかがですか。
中村 業務の効率化に大きな成果がありました。これまでは、企画から実施まで約1ヵ月を要していましたが、『LoGoフォーム』を使うことにより1週間ほどで実施することができました。専門知識がなくても簡単にフォームを作成でき、印刷や配布といった事務作業の負担も大きく軽減されました。そのため、担当者は調査内容の立案に専念でき、調査自体の質向上にもつながったと感じています。デジタル化への移行によって、アンケートの回収率が下がってしまうのではないかという心配もあったのですが、結果は紙で行っていたときよりもむしろ高かったのは、意外な発見でした。
栗林 庁内には、日常的にパソコンを使用していない職員も多くいますので、フォームのわかりやすさや、インターネットを通じてスマホからでも回答できる仕組みが、回収率の高さにつながったのだと受け止めています。
―今後、このツールをどのように運用していきますか。
綱島 今後も庁内への普及を後押ししながら、庁内外のDXを推進するための有効なツールとして活用していきます。『LoGoフォーム』のような現場の職員が使いこなせるシステムによる小さな変革を広げていってこそ、DX推進の実効性は高まるものと期待しています。
新潟県糸魚川市の取り組み
自治体専用ツールによる業務改革②
多機能なWeb申請サービスの導入で、市民の利便性向上へ
糸魚川市
総務部 総務課 広報情報係 主事 藤田 星哉
市民部 健康増進課 保健係 主任保健師 野本 彩希
紙をベースとした煩雑な業務をいかにデジタル化し、業務効率の向上や市民サービスの改善につなげるか。ここまで紹介した名古屋市が抱えていた課題は、規模の大小を問わず、多くの自治体が抱えている。ここでは、名古屋市と同様に自治体専用「Web申請サービス」を導入し、さまざまな効果を得た糸魚川市(新潟県)を取材。同市における活用事例や導入効果などを、担当者に聞いた。
[糸魚川市] ■人口:4万845人(令和3年7月1日現在) ■世帯数:1万7,271世帯(令和3年7月1日現在) ■予算規模:432億8,320万円(令和3年度当初) ■面積:746.24km2 ■概要:新潟県の最西端に位置し、南は長野県、西は富山県と接している。市域には、中部山岳国立公園と妙高戸隠連山国立公園、親不知・子不知県立自然公園、久比岐・白馬山麓県立自然公園を有し、海岸、山岳、渓谷、温泉など変化に富んだ個性豊かな自然に恵まれている。また、森林資源やヒスイ・石灰石などの鉱物資源や水資源など地域資源が豊富で、糸魚川市が西側の境界断層に位置しているフォッサマグナは、日本列島生誕の謎を秘めた世界的な学術資源となっている。
アンケートや申請手続きは、紙ベースが多かった
―糸魚川市が『LoGoフォーム』を導入した経緯を教えてください。
藤田 これまで当市では、市民による申請手続きをおもに紙ベースで受け付けてきました。それら申請情報は手作業で入力・管理していましたので、職員の業務負担が大きいのはもちろん、市民にとっても来庁の必要があったり、手続きが煩雑であったりと不満につながっていたと思います。
最近では、一部の用途でインターネット上の無料のWebフォームを活用したこともありましたが、多くの職員が使いこなせるほどには操作が簡単ではないうえ、インターネット環境での集計が不便で、広く普及することはありませんでした。そんななか、『LoGoフォーム』の存在を知り、無料トライアル期間を利用して、まずは試験的に導入を決めました。
―導入を決めた理由はなんだったのですか。
藤田 まず、LGWAN環境とインターネット環境、両方で使える点に魅力を感じました。庁内向けのアンケートや調査のほか、市民向けの申請手続きにも活用できるため、市民の利便性向上にも寄与するのではないかと。また、直感的に誰でも操作できそうなインターフェースであるため、多くの現場で職員の負担を軽減するだけではなく、デジタル化への意識改革にもつながるものと期待しました。
業務の見直しや標準化、職員の意識改革にもつなげる
―実際に、どういった用途で活用しているのでしょう。
野本 健康増進課では、市民からの健康診断の予約を『LoGoフォーム』で受け付けています。従来はコールセンターでの対応が主流で、書き留めた手書きメモをExcelに入力してリスト化していました。『LoGoフォーム』で受け付けた場合は、それらの作業がすべてなくなるので、とても便利ですね。また、『LoGoフォーム』には「予約枠数管理機能」があり、予約枠の上限に達すると自動的に受け付けをストップしてくれるので、日程調整がラクになりました。
藤田 ほかにも多くの用途で活用しており、たとえば企画定住課ではコロナ禍で帰省を自粛した当市出身大学生に、地元の特産品を送るという事業を行いました。その申し込みは『LoGoフォーム』のみで受け付け、500人以上の学生から応募を集めることができました。スマホ世代の若者にも馴染んだ申請手段を用意できたことが、この実績につながったのだと思っています。
このように当市では、現在までに15課で130フォームを『LoGoフォーム』で作成し、市民の利便性向上を追求した行政運営に活かしています。
―今後、『LoGoフォーム』をどのように運用していきますか。
藤田 市民のニーズに応えるスピード感をもった申請手続きの手法として定着させていきます。
また『LoGoフォーム』には、テンプレートをほかの自治体と共有する機能もあります。それらを参考にしながら、現在の業務の見直しや標準化、さらには職員の業務改善意識の向上にもつなげていけるのではないかと期待しています。
野本 専門的な知識がなくても使いこなせる『LoGoフォーム』は、市民のデジタル化を促すきっかけにもなるツールだと感じています。私が担当する健康診断の申し込みでは、電子申請を使いこなせない高齢者も多くいます。そこで当市では、市内の携帯電話販売店の協力を得て、高齢者の「スマホ講座」を昨年度から開催しています。そこでは、『LoGoフォーム』を使ったデジタル申請を講習メニューにくわえることを検討しています。
神奈川県川崎市の取り組み
自治体専用ツールによる業務改革③
現場へのWeb申請サービスの浸透は、BPRにつながる好循環を生み出す
川崎市 総務企画局デジタル化推進室 担当係長 小西 洋平
名古屋市や糸魚川市にみる自治体専用「Web申請サービス」の導入事例では、業務負担の軽減や住民サービスの向上にとどまらず、庁内の業務改革や職員の意識改革にまでつながる効果を生んでいる。そうした効果にいち早く注目し、各部署における『LoGoフォーム』の活用を通じてBPRを促しているのが、川崎市(神奈川県)だ。取り組みの詳細について、同市デジタル化推進室の小西氏に話を聞いた。
[川崎市] ■人口:154万2,323人(令和3年6月1日現在) ■世帯数:75万5,135世帯(令和3年6月1日現在) ■予算規模:1兆5,042億1,677万円(令和3年度当初) ■面積:143.01km2 ■概要:神奈川県の北東部に位置し、多摩川を挟んで東京都と隣接。横浜市と東京都に挟まれた細長い地形を有し、川崎区、幸区、中原区、高津区、宮前区、多摩区、麻生区の7区で構成される。北西部の一部丘陵地を除いて起伏が少なく、比較的平坦な地域となっている。平成29年4月に人口150万人を突破。令和6年には市政100周年を迎える。
「使いやすかった」住民・職員双方から高評価
―川崎市が『LoGoフォーム』を導入した経緯を教えてください。
当市では、新型コロナウイルス感染症の影響から、非接触型のサービス提供が求められる世情を踏まえ、行政手続きの原則オンライン化の方針を市長が打ち出していました。そこで、さまざまなツールを探していたところ、『LoGoフォーム』を知りました。無料トライアルでは、「犬の死亡届」や「道路等の損傷に関する通報」など34課45手続きについて住民からの申請を受け付け、住民、職員双方からアンケートも取りました。
―結果はいかがでしたか。
住民アンケートでは、「簡単に入力できた」との回答が87.3%、「今後もオンライン手続きを利用したい」は85.5%にのぼりました。一方、職員へのアンケートでは、「使いやすかった・ある程度使いやすかった」という回答は100%で、申請フォームの作成についても「簡単・比較的簡単に作成できた」が94%でした。こうした高評価を受け、今年度から本格導入を決めました。
―本格導入後は、どのように運用しているのでしょう。
当市では、行政手続きの原則オンライン化を令和4年度末までに実行する方針を掲げており、達成に向けて『LoGoフォーム』を最大限活用してもらうため、すべての課にアカウントを付与しました。導入にあたっては、開発元のトラストバンクの協力を得て、活用研修をオンラインで開催。その模様を録画してYouTubeに限定公開し、『LoGoフォーム』上で閲覧できるようにするなど、活用してもらうための工夫も行っています。
DX推進に向けて、必要不可欠なツールと実感
―現場での活用によって、どういった効果を実感していますか。
行政手続きのオンライン化は大きく進んでいます。これまでも電子申請システムを導入していましたが、対応手続きを増やしていくには委託事業者に作業を依頼する必要がありました。1件につき百万円単位の費用が発生し、最短でも3ヵ月を要するため、コロナ禍で求められる迅速なオンライン化には対応できませんでした。
一方、SaaS型の『LoGoフォーム』は、職員が直感的に使えるため、申請フォームを自ら作成することができ、コストを抑えながら住民サービスの向上を実現できるのです。職員自らが申請フォームを設計できることは、結果としてさらに大きな効果も生まれると考えています。
―どのような効果ですか。
オンライン化に合わせて業務の流れも必然的に見直す必要が生じ、それが結果的にBPRにつながる好循環が生まれるという効果です。従来は、既存の業務に合わせてベンダーにシステムを設計してもらっていました。そのため、社会状況の変化に迅速に対応するため自ら業務を改革していこうとしても、システム改修にかかる時間やコストが障壁となっていたため、これに代わるツールの導入が課題となっていました。
しかし、『LoGoフォーム』の活用で、職員自ら必然性を感じてBPRが進んでいく。その流れが多くの現場で生まれているのです。現場が使いこなせるこうしたツールは、DX推進に向けて必要不可欠なツールであると感じています。
―今後の運用方針を聞かせてください。
『LoGoフォーム』の活用がBPRを促す効果も実感したことで、今年度からICT化の推進とBPRの推進を担ってきた部署が一緒になり「デジタル化推進室」を設置しています。今後は全庁的に『LoGoフォーム』の活用とBPRを合わせて推進していく考えです。『LoGoフォーム』の活用で、市としてオンライン化を一気に加速させ、新たな日常に合わせた行政サービスを提供できるよう取り組んでいきます。
岐阜県の取り組み
自治体専用ツールによる業務改革④
Web申請サービスの「共同調達」が、県全体のデジタル化を後押しする
岐阜県
総務部次長(情報化推進担当) 阿部 修二
総務部デジタル戦略推進課 主任 河合 輝
紙の文化を排し、行政のデジタル化を後押しする自治体専用「Web申請サービス」。いま多くの自治体で導入が進んでいる。こうしたなか、複数の自治体による「共同調達」というカタチで小規模自治体における導入ハードルを下げ、広域連携によって行政のデジタル化を進める動きもある。岐阜県がそうした事例のひとつである。同県担当者のふたりに、共同調達を行った経緯やその効果などについて話を聞いた。
[岐阜県] ■人口:196万6,878人(令和3年6月1日現在) ■世帯数:78万1,250世帯(令和3年6月1日現在) ■予算規模:1兆2,407億3,453万8,000円(令和3年度当初) ■面積:1万621.29km2 ■概要:日本のほぼ中央に位置。全国第7位の広さを誇り、7つの県に囲まれた数少ない内陸県の一つ。県北部の飛騨地域は、御嶽山、乗鞍岳、奥穂高岳など、標高3,000mを超える山々が連なっている。一方、南部の美濃地域は濃尾平野に木曽三川(木曽川、長良川、揖斐川)が流れ、「飛山濃水」と言われる豊かな自然とそれを活かした産業が発展している。
足並みを揃えたDX推進へ、実績ある協働スキームを活用
―『LoGoフォーム』を県内の市町村と共同調達したと聞きます。
阿部 本県は、平成14年度から「電子自治体推進市町村・県連絡協議会」を立ち上げ、県と市町村が一緒になって行政のデジタル化を推進し、自治体クラウド導入状況は全国7位の92.9%を達成してきました。人口規模や財政事情が異なる自治体が、足並みを揃えて電子化を進めていくには、システムの共同利用や業務の標準化を進める必要があるとの考えのもと、この協議会がデジタル化推進の基盤となってきたのです。今回、市町村行政のDX支援を推進するにあたり、この実績ある協働スキームを活用することがコスト削減とスタートアップに効果的だと考え、『LoGoフォーム』の共同調達にいたりました。
―ツール選定の決め手はなんだったのでしょう。
河合 現場の職員が使いこなせるよう、ローコード開発のプラットフォームであることを条件に検討しました。業務を誰よりも熟知しているのは現場の職員であり、運用に際してその知識やアイデアを活かして、自ら申請フォームを修正・改善していけるかどうかは、重要なポイントだと考えました。
検討の結果、わかりやすい画面表示や申請ステータスの管理機能のほか、自治体間でフォームを共有できる機能などを評価しました。県内の42市町村は、共通する業務が多いため、申請フォームの共有は業務負担の軽減に大きく寄与するものと期待したのです。
オンライン申請について、統一感のあるサービスを整備
―どのように運用していますか。
河合 今年4月から、まずは県と23市町村が導入を開始し、道路破損報告やイベント予約など、住民に身近な手続きをスマホから申請できるオンライン化を『LoGoフォーム』で行っています。県が作成したテンプレートを共有することで、行政手続きのオンライン申請について統一感のあるサービスを整備できるようになります。そのほか、各自治体ではそれぞれの内部事務にも活用していると聞きます。
阿部 県としても、「持ち運べる役所」をコンセプトに、スマホで行政手続きが完結する仕組みを整備しようとしており、マイナポータルの「ぴったりサービス」を運用しながら、『LoGoフォーム』も合わせて活用しています。マイナンバーカードと連携することで本人認証が行える「xID(クロスID)」という機能が活用できますので、本人証明が必要な行政手続きの多くを『LoGoフォーム』で対応できるようになると考えています。
―今後、県内で「行政のデジタル化」をどのように進めていきますか。
阿部 職員数の減少や行政サービスの複雑化を背景に、自治体の業務負担は増しています。そうしたなか、県内市町村が無理なくデジタル化を推進していくうえで、県の役割は大きいです。今回の共同調達だけではなく運用段階においても支援し、まだ参画していない市町村にも導入メリットを訴求していきたいと考えています。
たとえば将来的に、住民票の写しや戸籍証明書といった各種証明書の郵送サービスにWebフォームを活用することを計画しています。これらの証明書の申請ではすでにコンビニ交付が実現していますが、県内でコンビニが身近にない地域の対応やシステム維持の財政負担も重いです。こうした自治体に向けては、申請受付をWebフォーム上で行う県内共通フローを確立するなど、小さなことの積み重ねにより県の持続的成長と豊かで質の高い生活の実現につなげたいと考えています。
支援企業の視点
自治体専用ツールによる業務改革⑤
200自治体以上が活用する、Web申請サービスがDXを推進
株式会社トラストバンク 取締役兼パブリテック事業部長 木澤 真澄
これまでに見てきた4自治体の事例では、業務の効率化と住民サービスの向上などを実現した自治体専用Web申請サービス『LoGoフォーム』の導入効果を紹介してきたが、これを開発・提供しているのがトラストバンクである。同社において『LoGoフォーム』事業を統括する木澤氏によると、「発表からわずか1年ほどの段階で、約200自治体へ導入が進んでいる」という。全国の自治体で普及が進む同ツールは今後、職員の働き方をどう変えていくのか。同氏に聞いた。
デジタルへの移行が、一時的に現場の負担増加に
―『LoGoフォーム』の普及が進んでいる背景はなんですか。
これまでも「行政のデジタル化」は国の方針として謳われてきましたが、コロナ禍の影響により、自治体の現場でもより強い課題感をもたれるようになっていることが背景にあります。
ただし、デジタル化の機運は高まっているのですが、そのハードルは決して低くありません。
―どういうことでしょう。
いまだ自治体には紙ベースのまま残っている申請手続きが多く、細かいものも含めると大規模自治体では数千、中小規模の自治体でも数百にのぼると言われています。これらの業務をデジタル化するにあたり、従来のようにベンダーとともに専用システムを一つひとつ開発していくアプローチでは、膨大な費用と時間がかかってしまいます。細かな業務であれば費用対効果は低いため、そもそもシステム導入が検討の俎上にのりません。かりにシステム導入が決まったとしても、各担当課のみなさんにとっては、一時的には業務負担が増すことになるので、なかなかデジタル化が進んでこなかった事情があります。そうした課題を解決するのが『LoGoフォーム』なのです。
―製品の特徴を教えてください。
自治体には、大きく3つの特徴をお伝えしています。1つ目は、特別な専門知識がなくても簡単にフォームをつくれ、それらを自由に共有できる点です。それぞれの業務をもっとも深く理解している現場が使えなければ、業務のデジタル化は進みません。『LoGoフォーム』であれば、職員のみなさんが負担なく使いこなすことができます。2つ目は、LGWAN-ASPサービスとして提供しているため、LGWAN環境からもインターネット環境からもアクセスできる点です。住民が利用する各種申請手続きのほか、庁内のアンケートや照会など幅広い用途に活用できます。3つ目は、ほかの自治体が作成したフォームを共有できる点です。自治体間には共通業務も多く、ほかの自治体が作成したフォームをそのまま利用できるケースも少なくありません。これらを参考にすることで、業務の効率化や改善も進みます。
そのほかにも、現場での利便性を高める新たな機能強化にも力を入れています。
新たな機能強化にくわえ、無料トライアルも用意
―詳しく教えてください。
たとえば、マイナンバーカードによる公的個人認証を活用したデジタルIDアプリ「xID」と連携を実現し、「電子申請機能」を強化しています。これにより、本人確認が必要な行政手続きも『LoGoフォーム』上で完結でき、電子申請の適用シーンを大きく広げています。また、クレジットカードの利用による「オンライン決済機能」も新たに実装し、申請・申し込み時に手数料や利用料が発生する手続きにも利用できるようになっています。
そのほか、公共施設やイベント参加の予約などに活用できる「予約枠数管理機能」や、地図アプリと連携し、申請者の位置情報を紐づけできる「位置情報送信機能」など豊富な機能を実現しています。
―今後、自治体のデジタル化をどのように支援していきますか。
「大切なアナログを残すための適切なデジタル」を理念に、職員のみなさんがそれぞれの現場で業務負担の軽減やサービスの改善を図るための機能や導入後のサポートを充実させていきます。まずは実際に使っていただき、その効果を実感してもらいたいと考えており、6ヵ月間の無料トライアル特典を用意しています。ぜひお気軽にお問い合わせください。
木澤 真澄 (きざわ ますみ) プロフィール
昭和53年、大阪府生まれ。大阪大学を卒業後、平成15年、IBMビジネスコンサルティングサービス株式会社(現:日本アイ・ビー・エム株式会社)に入社。システム開発や業務改革プロジェクトに従事した後、株式会社チェンジに入社。海外事業、自治体向け事業開発担当を経て、株式会社トラストバンクに出向。平成30年12月より現職。
株式会社トラストバンク