UDの取り組みにより業務効率が改善
―堺市はUDに積極的に取り組んでいるそうですね。
梅木 はい、平成18年に「堺市ユニバーサルデザインガイドライン」を策定し、障がいの有無、年齢、性別、国籍などにかかわらず誰にとっても暮らしやすい街の実現をめざしています。
―具体的にはどういうことを実践しているのですか。
梅木 まず、UDについての研修を通じ、職員一人ひとりがUDへの理解を深め、「暮らしやすさの実現を自ら考えて動く」ことが基本原則です。たとえば、「明朝体の書体よりはゴシック体のほうが誰にでも読みやすい」とか、「色覚障がいの方が読みにくい色は避けた印刷物にする」などを共通認識としてもち、職員が業務に活かすようにしています。
―ほかにもUDの観点から、住民サービスの向上をめざした取り組みがあったら教えてください。
荻野 「市民税・府民税納税通知書」をリニューアルしました。
右川 なぜなら、住民から「納税通知書の文字が小さくて見にくい」「年間の支払いはいくらになるのかわからない」などの、お問い合わせが毎年のようにあり、しかも減ることがなかったからです。わざわざ窓口を訪れたり、電話で質問される住民の負担を少しでも減らしたいと思っていました。
荻野 税金のことなので関心が高いぶん、ひとつの問い合わせに対して長いときには1時間も職員が説明する場合もあり、業務改善の必要性を感じていました。そんなとき、ある自治体で納税通知書をUD化したところ、問い合わせが減ったという話を聞きました。ぜひ、堺市でも導入したいと思いその自治体の承諾を得て、UD化したその納税通知書をベースに堺市全区の担当職員とも検討を重ねました。そしてトッパンフォームズのアドバイスも受けて、堺市もUD化を実施することになったのです。
レイアウト変更で税額決定過程の説明が容易に
―納税通知書のリニューアルポイントを教えてください。
荻野 横長タイプで2色印刷の通知書は「枚数が多すぎて、どこに何が書いてあるのかわからない」といわれていたため、A4サイズ2枚に減らし、色覚障がいの方にも見分けられる配色を使ったフルカラーで印刷。また、「読みにくい」といわれていた文字サイズを大きくして、これまで使っていた明朝体から、読みやすいゴシック体(UDフォント)に変えました。
右川 「自分の税金は年間いくらくらいか」という問い合わせが多いので、上から下へ順番に税額決定過程を追えるようにレイアウトして、税額の計算をわかりやすくしました。個人で納める方法や年金から徴収するといった徴収方法ごとに色分けしたので、住民からの問い合わせにも「1枚目の○○色部分をご覧ください」と案内できるようになり、以前に比べると説明がスムーズになりました。
また、納税通知書に納税者ごとの条件に合った説明文を明記したことにより、これまで個別に封入していたチラシが不要となり、発送作業の軽減化が実現しました。
―住民の反応はいかがですか。
右川 通知から3週間の問い合わせ件数は、約4000件から約3200件になりました。昨年比で約2割削減されたことになります。
荻野 ほかの要因もあわせてですが、収納担当からは8月末時点での期限内納付率が、昨年比で1~2%上がったと聞いております。
今後はほかの帳票のUD化も視野に入れ、住民のご負担をより少なくしていきたいと考えています。