自治体と地域が協働し高齢者を見守る体制を構築
―龍ケ崎市における高齢者対応の取り組みを聞かせてください。
永井 事故や急病など、緊急時に簡便に消防署へ通報できる装置として、ひとり暮らし高齢者などを対象に「緊急通報システム」を貸与しています。なにかあったときに高齢者が非常ボタンを押せば、消防署に連絡がいきます。また、地域住民や市内事業者が相互連携して高齢者を見守る「龍ケ崎市見守りネットワーク」を平成25年に構築しました。そして平成28年9月、市と市医師会は「地域包括ケア構築のための連携協定」を締結。こうしたネットワークや協力体制が、高齢者が安心して生活できる地域づくりにつながると考えます。
山口 龍ケ崎市の人口約7万8300人のうち、約4分の1は65歳以上の高齢者。そのうち、ひとり暮らしは2082人(平成28年4月1日時点)。今後さらに、その割合は高まると思われます。
―そうした状況で、どのような課題があるでしょう。
永井 こうした取り組みに対し、自治体単独では予算や人員にも限りがあるため、将来的に限界は出てくると十分考えられます。そのため、繰り返しになりますが、今後は地域の方々に協力してもらうことが大切だと思います。地域のみなさんに高齢者のことを気にかけてもらい、緩やかに見守ってもらう。心配なことがあれば、私たちをはじめ民生委員さんや警察などに相談してもらう。そうしたことが日常当たり前に行われる地域づくりをめざしていきたいです。
日常生活”のメール受信で「異常」を早めにキャッチする
―高齢者対応で新たな対策を行っているそうですね。
永井 ええ。昨年7月に、携帯電話端末を取り扱う地元企業の株式会社アドバンス(佐藤孝代表取締役)から、ひとり暮らしの高齢者を見守る機能搭載のドコモケータイ電話(『P-01H』パナソニックモバイルコミュニケーションズ製)の寄贈を受けました。歩数計のデータやケータイ電話を開いた回数など、日常生活のデータがケータイから遠くに暮らす家族など事前の登録先に自動送信されます。送られてくるデータをもとに、いつもと違う状況ではないかを「見守る」ことができます。
今回市の取り組みとしては、昨年10月からこのみまもりメール機能搭載のケータイを、希望する市内のひとり暮らし高齢者に使ってもらい、高齢者のご家族のほか、龍ケ崎市役所にもそのメールが送られてくるようにしています(龍ケ崎市へのメールの送信は希望者のみ)。現在、30人強の高齢者がこの見守り機能を利用しています。
―利用者の反応はいかがですか。
山口 この見守り機能は、高齢者の日常データが家族に毎日メールで自動送信されるので、「とても便利で安心」と喜ばれています。高齢者本人にもその家族にも、安心を提供できる取り組みだと思います。実際、データが届かない状況が続いた高齢者宅を直接訪問したことがありました。いつもと違うデータの場合は「なにかあったのでは」とすばやい対応が可能です。
―改めて、高齢者対応の方針を聞かせてください。
永井 高齢者が住み慣れた地域で安心して生活し続けるには、地域全体で支えあう仕組みづくりが重要です。これからの高齢者対応では、自治体と地域のさまざまな社会資源が協力しあい、それぞれがもち得る機能、役割を最大限活用しながら協力・連携体制を構築していくことが不可欠です。今回の「みまもりメール機能搭載の携帯電話」の活用もそうですが、新たな施策、さまざまな手段を積極的に取り入れながらしっかり取り組んでいきたいと考えます。