―これまでどのような議会運営を行っていたのですか。
田端:御船町議会では、平成11年から議会中継をはじめていました。しかし、設備の老朽化が顕著となり、問題が発生していました。
―どのような問題でしょうか。
福本:設備の老朽化によって、「情報公開の質」が低下していたことです。
長年の使用によりマイクが音声をしっかりと拾えなくなり、傍聴席だけでなく庁舎にあるテレビを通して議会中継を観ている住民の方からも「議員や議長の発言が聴きづらい」という意見をいただくことが多くありました。
また映像も画質が悪く、カメラは細かいところまでフォーカスできなかった。そのため、議員が提示しているフリップがみづらい状況でした。さらに、そうした機材の不具合にくわえ、システムの調子が悪くなることは日常茶飯事。一度は議会中にシステムが止まったことがあり、議会事務局の担当職員がヒヤリとする場面もありました。そのため、新しいシステムを導入することになりました。
―新システムの導入にあたり、どういった点を重視しましたか。
福本:ふたつあります。ひとつは、情報公開の質向上のためにも、視聴者にとって観やすくて聴きとりやすい議会中継が実現できるシステムという点です。「映ればいい」というレベルでは、情報公開の意味がありませんから。
ふたつめは、操作がシンプルなこと。たとえば、職員は異動があるため、機材やシステムの扱い方を引き継がなければいけません。このとき操作方法が複雑すぎると、慣れるまでに非常に時間がかかる。すると、議会の運営に影響をおよぼしかねません。
―複数の民間企業の議会中継システムを検討したそうですね。
福本:ええ。そのなかで、ある民間企業のソリューションは、デモンストレーションで職員が使ってみたところ、いちばん好評でした。というのも、操作が非常に簡単。たとえば、マイクシステムと連動しているため、操作ひとつで音声と映像の双方の切り替えが簡単に行えます。また、すべての操作をタッチパネルで行えるうえに、ワンマンオペレーションが可能。これなら、職員が代わっても問題なく引き継ぎができます。
あとは、映像と音声の質が格段にあがること。まるでテレビの国会中継のようなクオリティで、職員一同驚きました。さらに、テロップが表示できるのもよかったです。
田端:映像と音声だけでは、現在誰と誰が議論しているのかまではわかりづらい。議員の名前や議題がテロップで表示されることは、観ている人にとってやさしい議会中継といえます。
「復興予算を中継しなければ」緊急時の情報公開の重み
―導入はスムーズでしたか。
田端:じつは、稼働にいたるまでが大変でした。というのも、導入を決めた矢先に平成28年熊本地震が発生。議場が被害を受け、システムや機材が完全に壊れてしまったんです。しかし、震災にかんする予算を決めなければいけないため、議会を中止するわけにはいきません。被害の少なかった大会議室を議場とし、議会を開きました。
福本:復興予算にかんする住民の興味は非常に高い。復興のためにも、議会中継システムの復旧が急務でした。
その点、議場の改修が終わるとすぐに、地元のSIerとこの民間企業の担当者が来庁。御船町議会にあわせたシステムの構築をしてもらえた点が非常にありがたかった。たとえば、当議会では採決方法は起立式。そこで、採決の操作をすれば、カメラが自動で議場全体を映しだすシステムに変えてもらいました。さらに、新しく導入した音響やカメラとの不具合があっても、システムをその場ですぐに構築。そのおかげもあり、平成29年2月末にはシステムを稼働させた議会が実現しました。
―今後の情報公開についての方針を教えてください。
田端:今回のシステム導入を機に、町政や議会に関心をもってくれる人を増やしたい。そのためには、議会だけでなくたとえば特別委員会などの活動も中継したいと考えています。また、より多くの方に町政への関心をもってもらうために、パソコンやタブレット端末を使ったインターネット配信を実現したいですね。