―複合機の使用に際して、どのような課題がありましたか。
大岩:「セキュリティ強化」です。ニュースで大きく取り上げられる漏えい事件の多くは電子媒体によるものですが、電子化が進む現在でも情報漏えいの原因の多くが紙媒体。紙を多く使用する複合機のセキュリティ対策は重要ですが、コストを無視した対策はできません。全体的な印刷環境の改善が、「セキュリティ強化」と「コスト削減」を実現できる機会と考えました。
―その内容を教えてください。
齋田:まずは、1年かけて庁内の全複合機の稼働状況を調査しました。複合機の保守事業者の協力をえて、1台ずつ印刷コストや印刷量のデータを収集。それをもとに、必要な性能や台数、配置などを検討しました。部署によっては1台でたりるのに2台保有。反対に、2台必要なのに1台しかなく、過剰稼働による故障で修理コストがかさむケースも。その検討結果を受け、業務を遂行するうえで十分な機種への変更を決めるとともに、各部署への「適材適所」の配置計画を立てました。
―どのような効果を期待したのですか。
大岩:機種変更や「適材適所」の配置により、用紙・インク費用を削減することが期待できます。さらに大きなコスト削減策は、「複合機の一括契約」。当市では各課独自で契約していた複合機があり、それを一括にすればコストが下がる。機種変更、適材適所、一括契約により、新たにセキュリティを強化しても、これまで複合機にかかっていたコストを下回る試算となりました。
印刷文書のログ化で、職員の危機意識が向上
―コスト面はクリアできた一方で、セキュリティはどう強化したのですか。
齋田:印刷物の内容をログ化できるシステムを導入しました。これまでも、ICカードの印刷認証は行っていました。これは、複合機まで行って、カードをかざして印刷するものです。自席のPCから自動的に印刷すれば、ミスプリントや印刷物の放置があることから、用紙のムダを少なくする目的もあります。
今回は印刷ログシステムの導入で、いつ、だれが、どのような文書を、どの複合機で印刷したかを把握できるようになりました。また、キーワード検索など、過去に印刷された文書を絞り込める機能も。情報漏えいがあったときの漏えい元を特定できるようになったことで、職員の危機意識を高められました。
―セキュリティレベルを上げると、使い勝手が悪くなりませんか。
齋田:庁内のどの複合機でも印刷できる「どこでも印刷機能」を追加し、使い勝手はむしろ向上しました。セキュリティを強化し、利便性を高め、コストを下げた。効果的に取り組めたと思います。