※下記は自治体通信 Vol.15(2018年10月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
地方公務員法の改正によって人事評価制度の導入が義務づけられ、業績・能力評価を給与や任用の基礎とする制度運用が本格化している。そうしたなか、評価作業の効率化のみならず、職員の能力開発も視野に入れ、人事評価システムを導入する自治体が増えている。そのひとつである善通寺市(香川県)の担当者に、システム導入のメリットなどを聞いた。
[善通寺市] ■人口:3万2,565人(平成30年8月1日現在) ■世帯数:1万3,124世帯(平成30年8月1日現在) ■予算規模:209億4,100万円(平成30年度当初)
■面積:39.93km² ■概要:香川県の西北部に位置し、南を琴平町、まんのう町、北を丸亀市、多度津町、西を三豊市に隣接する中讃地域の市。地形は平坦で、南に大麻山、西に五岳の山々を控え、東と北には讃岐平野が広がっている。明治時代に陸軍第11師団が設置され、現在の陸上自衛隊善通寺駐屯地となった。また、 市のほぼ中央部には、空海の誕生の地として知られる真言宗善通寺派総本山善通寺が位置する。
評価制度は公平なのか、職員の間に問題意識も
―善通寺市における人事評価の取り組みを教えてください。
瀧岡 当市では、平成7年から勤務評定を実施し、「勤勉手当」として賞与に反映していました。市長の方針もあり、能力評価や成果主義を導入したのは早かったと思います。ただし、当時は紙による管理であったため、評価者である部課長の負担は大きかったですね。部署によってはひとりの管理者が20人以上の職員を評価しなければならず、用紙を配布して回収するまで2週間、その後のチェック作業だけでも丸2日かかっていました。
尾﨑 さらに、評価の公平性や評価結果のフィードバックのあり方について、職員間で問題意識がありました。評価制度は職員の能力開発も目的のひとつでしたが、それが実現しているのかと。
―そうした課題をどのように解決したのですか。
尾﨑 地方公務員法の改正で人事評価が義務化されたことを機に、「人事評価システム」の導入を決めました。表計算ソフトによる管理も検討しましたが、評価を職員の能力開発に活かすには、それでは不十分。蓄積した評価データを分析できる仕組みが必要との判断から、専用ソフトの導入が必要との判断に至りました。
―システム選定はどのように進めたのでしょう。
瀧岡 当市が加盟する広域行政事務組合の2市2町で共同調達する方針であったため、システム要件などを共同で検討。操作性や人事給与システムとの連携、評価結果の分析機能などを比較検討し、『ざいなる』の導入を決めました。
尾﨑 共同調達ではありましたが、評価項目や評価のウエイトなどは各自治体独自の設定が必要でした。『ざいなる』はそうした個別設定にも柔軟に対応できることも、導入の決め手になりました。
「お役所仕事」では、自治体間競争を勝ち抜けない
―導入効果を聞かせてください。
尾﨑 管理職の手間が減り、評価結果の管理は圧倒的にラクになりましたね。また、評価者の評価傾向を分析することで評価の公平性を担保できるようになりました。管理者の評価と自己評価にギャップがあった際にも、客観性のある評価内容を示せるので、職員の納得感は高まっています。
瀧岡 システムの導入によって、職員が上司とともに目標を設定し、達成度を評価する「目標管理」が新たに実施できるようになった効果も大きいですね。目標が明確になったことで職員の達成意欲が刺激され、能力開発にも役立っていると実感しています。
―今後、どのようなまちづくりをめざしますか。
瀧岡 人口減少で地方消滅が指摘されている時代、旧態依然とした「お役所仕事」をするだけでは、自治体間競争を勝ち抜けません。このシステムを活用することで、ヤル気に満ち、豊かなアイデアをもった人材を育てていきたいです。
尾﨑 豊富な水資源に恵まれる当市は、住みよい土地柄を前面に、子育てと教育に力を入れています。そんな市の魅力を発信し、特色ある施策づくりを担ってくれる職員の育成に『ざいなる』が役立ってくれることを期待しています。
人事評価を真に機能させるには、システム化による目標管理が不可欠
ICTコンストラクション株式会社
内部情報ソリューション部 HRソリューション課 課長
熊川 哲也くまがわ てつや
昭和44年、福岡県生まれ。平成2年に行政システム九州株式会社に入社。その後、グループ会社であるICTコンストラクション株式会社へ転籍。平成11年より人事給与および人事評価システムの導入から保守までの業務全般に従事。
―人事評価の運用を始めた自治体における課題はなんですか。
制度は運用されているものの、まだ評価だけにとどまっており、その先に本来あるべき職員の能力開発につながっていないことです。人事評価がまだシステム化されておらず、表計算ソフトや紙によって管理している自治体がいまだ多いのも、そのためです。
―人事評価を機能させるうえで重要なポイントはなんでしょう。
いかに適切な「目標管理」ができるかが重要です。個人の適性や能力を分析・把握し、的確な目標設定を行うためには、システム管理が不可欠です。そこで当社では、多くの自治体に人材育成支援システム『ざいなる』を提案しているのです。『ざいなる』は、職員の「評価」よりも「人材育成」に重点を置いて開発したシステムです。面談の記録や指導育成記録を管理し、職員の評価や職務レベルを継続的に把握し、向上を図る仕組みを取り入れています。
―今後、自治体をどのように支援していきますか。
自治体の人事担当部門は、もとより少数精鋭で業務にあたっているので、この分野における職員の負荷を大幅に軽減するとともに、つねに最新の『ざいなる』でのさまざまな分析によって、人材活用での自治体組織の全体最適を支援していきたいと考えます。今後はよりセキュアな環境でご利用いただけるように行政専用ネットワークを活用した「LGWAN-ASP」サービスの展開を予定しています。人事評価システムの導入に関心のある自治体の方々は、ぜひお問い合わせください。