―職員の健康増進に向けて、滋賀県ではこれまでどのような施策を実施してきましたか。
河本 平成28年度から、「滋賀県職員版スマート ライフ プロジェクト」を推進しています。これは、「健康寿命の延伸」に向けて厚生労働省が推奨している食生活改善や運動・健診受診の促進という国民運動を県職員版にアレンジしたもの。実施から3年目を迎え、階段利用者の増加や喫煙率の減少といった成果を着実にあげています。
福山 同時に、県庁や共済組合では、「職員の健康管理」や「医療費の削減目標の設定」をするなかで、特に糖尿病予防対策には力を入れてきました。「へるすサポート教室」を立ち上げ、前年の健診から一定以上の血糖値上昇がみられた者を対象に実施していますが、参加率は十分に高かったとは言えず、課題を感じていました。そんなとき、県と包括連携協定を結ぶ日本生命から提案をいただきました。
―どのような提案でしょう。
福山 糖尿病を予防する「糖尿病予防プログラム」のトライアル事業への参加です。
河本 具体的には、最新のIoT機器や医療機器を使って、3カ月にわたってセルフモニタリングと生活習慣改善指導を行うという内容です。モニタリングでは、血糖をリアルタイムで測定できる機器を用い、モニタリング期間の最初と最後の各2週間を常時測定。そのうえで、体重や血圧、歩数による運動量も記録します。これと並行して、初回の面談は対面で行うほか、期間中は約2週間に一度、テレビ電話等を通じて保健師による遠隔保健指導を受けることで、生活習慣の改善につなげるプログラムです。検討した結果、平成30年11月から開始することを決めました。
プログラムの開発や運営には専門医や保健師が参加
―実施に踏み切った理由を教えてください。
福山 これまでの「へるすサポート教室」を補完する効果を期待したからです。ポイントはおもに4つ。ひとつは、2週間連続で血糖測定ができる医療機器の使用。リアルタイムの測定結果は、個人の行動変容につながる効果が見込まれ、保健指導にも活かせる点に魅力を感じました。次に、保健指導を遠隔で行える点。場所や時間の制約を小さくすることで、参加への心理的ハードルを下げることが期待できます。さらに、体重計、血圧計といった測定機器がスマホアプリと連動している点。これもセルフチェックに効果的です。最後に、この取り組み自体が職員の糖尿病予防に対する意識を高めてくれると期待しました。
―導入してみて、実際にどのような効果を実感していますか。
福山 具体的な測定データの集計はこれからですが、すでに参加者からは血糖のリアルタイム測定によって、「食事内容のみならず、食べ方やストレスなども血糖上昇に影響することがわかった」「ICT機器を使い、楽しみながらプログラムを続けられた」といった声が届いています。これまでの施策でも、「継続性」が課題のひとつとしてありましたので、こうした声はプログラムの大きな成果だと受け止めています。
河本 プログラムの開発や運営には、糖尿病治療で実績がある日本生命病院の医師、保健師が参加してくれています。医学的な裏づけがあることで得られる安心感も大きいですね。今回のプログラムでは、疾患予備群を対象にしたハイリスク・アプローチで一定の成果があがると期待しています。今後は、これを本来の目的である「職員全体を対象とした健康増進の底上げ」に繋げていきたいですね。