―これまでどのように防災対策を進めてきたのでしょう。
本市は重工業を中心に街が急速に発展していくなかで、山際に新興住宅地が開発されていきました。その結果、市内の土砂災害警戒区域は現在約1300ヵ所を数えます。さらに、国や県が管理する大きな河川が8つ、市が管理する河川が250ほどあるため、風水害対策には特に力を入れてきました。
しかし、昨年の平成30年7月豪雨で9年ぶりに犠牲者を2人出してしまいました。そこで現在、防災体制をさらに強化しています。
―どういった施策を進めているのか具体的に教えてください。
体制の強化に際し、警戒区域の市民約3000人に平成30年7月豪雨の実態調査を行いました。その結果、じつに約9割の市民が避難していないことが判明。「自分の家は大丈夫」「周りも避難していないから」といった理由からでした。この結果を受け、市では庁内の情報連携強化とともに、積極的に避難しない市民にも避難行動を促せる新たな仕組みの導入を決めました。
自助・共助を促す仕掛け
―どのような仕組みですか。
従来運用してきた災害情報自動配信システムを補強するカタチで、ふたつのツールを新たに導入しました。ひとつは、被災状況や避難所開設情報などを庁内で迅速かつ正確に共有する庁内SNS。もうひとつは、市民にプッシュ型で情報発信できる防災アプリです。このアプリは気象台が発表する防災気象情報のなかで、「土砂災害警戒判定メッシュ情報」と「洪水警報の危険度分布」に着目し、市が発令する避難情報より先に、危険度が高まった地域の市民に、この防災気象情報をプッシュ通知するものです。独居高齢者のようなアプリを使いこなせない市民も考慮し、アプリには「見守り機能」を搭載。遠方に住む人でも複数の登録地点の危険情報を入手でき、家族などにその危険を知らせることができます。
―市の避難情報より先に危険度情報を通知するのはなぜですか。
自治体がいくら迅速に行動したとしても、さまざまな判断を慎重に重ねる必要がある避難情報の発令には、初動の情報収集からのタイムラグは避けられません。そのため、防災気象情報を入手した段階ですぐに市民に通知し、自主的な避難行動につなげてもらうことが重要と判断したのです。
公助だけでは限界がある。ですから、自助・共助を促す仕掛けとしてこれらのツールを活用していきたいのです。
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