―「4000万人の訪日客」を実現するために、観光庁が掲げる方針を教えてください。
新たな訪日客の開拓とともに、再訪率を上げることは大きなポイントです。そのためには、訪日客がストレスなく、快適に旅行できる環境を整備し、「また来たい」と思ってもらうことが重要。そこで、訪日客へのアンケート調査をもとに、多言語表示の拡充などニーズの高い分野の改善に、各公共交通機関や自治体と連携して取り組んできました。今後はこれらの取り組みを、新たな国際観光旅客税による収入も活用して、特に観光地内で強化する事業を始めます。
―どのような内容でしょう。
令和元年度から始まった『観光地の「まちあるき」の満足度向上整備支援事業』です。具体的には、ICTを活用したデジタル案内板の設置、無料公衆無線LAN環境の整備、小売・飲食店のキャッシュレス決済対応、公衆トイレの洋式化などに、観光地全体で面的に取り組む自治体などを支援します。この事業でめざすことのひとつは、一人ひとりの訪日客がスマートフォンを片手に、観光地を自由にまちあるきできる環境の創出。その際にデジタル案内板は、特に重要な役割を果たすと期待しています。
スマホに取り込む観光情報を移動しながら活用できる
―どういう役割を期待しますか。
訪日客が快適に観光するための、「ハブ」としての役割です。訪日客は、多言語の切り替え表示ができるデジタル案内板から、さまざまな観光情報をえられます。そして、二次元バーコードを介してスマートフォンにデジタル案内板の情報を取り込み、移動しながらスマートフォンでさらに必要な情報を確認できる。その情報には、たとえば、目的地までの道案内の動画説明など、デジタル案内板では表示しきれない内容も含まれます。
スマートフォンを活用して不自由なく観光地を移動できるよう、対象エリアには無料Wi-Fiを整備。さらに、買い物はキャッシュレス対応。快適に観光できる環境が、デジタル案内板をきっかけに広がっていくのが理想です。
そしてもうひとつ、観光案内以外で期待する役割があります。
―それはなんでしょう。
災害時などにおける緊急情報の発信機能です。非常時の際は、日本語がわからない訪日客は日本人以上に不安になる可能性が高い。そんなときに、デジタル案内板ならすばやく画面を切り替えて、多言語で即座に避難情報などを提供できる。多くの訪日客を受け入れる観光地にとっての、安全・安心の確保に向けた対策の強化となります。
―今後の方針を教えてください。
快適に過ごせる観光地の創出につながる今回の支援事業は、訪日客の再訪率を向上させるもの。第一次募集は終了しましたが、第二次募集に向けた整備計画の受付を5月10日から始めました。多くの自治体からの応募を期待します。
人気スポットの道頓堀には、バスで訪れる団体訪日客が多く、降車場所は混雑し周囲の交通が乱れるほど。そこで、降車後のスムーズな観光移動を促すためにデジタル案内板を設置。多言語表示のため、目的地がひと目でわかり、訪日客は長時間立ち止まることなく、すぐに観光へ移れます。その結果、混雑状況は大きく改善しました。
デジタル案内板は高額なため、必要性を感じつつもなかなか導入に踏み切れませんでした。その点、今回は、デジタル案内板の広告収入の一部が市に還元されるため、前向きに検討でき、導入につながりました。今後も同様のデジタル案内板の導入を増やしていきたいと考えています。