雨量の観測体制だけでなく、気象全般の情報収集も強化
―上郡町が取り組む水害対策を教えてください。
当町では約10年前から、独自の雨量計測器を町内6ヵ所に設置しています。というのもその数年前、大型台風の影響で赤松地区をはじめ町内各地で想定を超える浸水被害が発生しました。当時、国と県が町内2ヵ所に設置していた気象観測器では、局地的豪雨を把握できなかったのです。その教訓を活かし、町独自の雨量計測器を設けました。
―効果はありましたか。
ええ。たとえば、導入直後の平成21年に発生した台風の際は、各ポイントの降雨状況をつぶさに監視して、状況に応じた防災活動がいつでもできる態勢を敷けました。そして、これまで以上に降雨状況を偏りなく把握できるようになった一方で、その後の運用でもっと改善できないかと考える部分が出てきました。
―どういう部分でしょう。
水害対策のために収集しているさまざまな気象データを、自動的に集約できないかということです。これまでは、町独自の雨量計測以外の気象データは、気象庁が発表する「高解像度降水ナウキャスト」や、兵庫県の「河川監視システム」などの各情報サイトを閲覧して集めていました。その場合、サイトによって表記方法やデータ形式が異なるため、集約に手間と時間がかかっていました。そんななか、当町に雨量計測器を提供してくれた民間企業から、雨量計測器の情報をベースに、各気象データを自動集約できるシステムの提案を受け、2018年11月から導入しています。
予測も可能な気象データを、ひとつの画面に集約する
―どのようなシステムですか。
町独自の雨量計測データと、これまで手動で集めていた気象データを同期させて、同じ地図上に自動集約させるのです。具体的には、国、県、町が設置している雨量計測器の場所を地図上にピン表示して、観測データを一斉表示します。そして、その地図上に、土砂災害警戒情報や、雨雲レーダーによる雨量分布観測データと予測データを重ね合わせます。
特に雨雲レーダーは刻々と変化する雨量分布の様子がひと目でわかり、たとえば、「1時間に50㎜の雨が降っているこの観測ポイント付近に、さらに50㎜の豪雨が続きそうだ」と予測できるのです。そのおかげで、避難情報の発令や庁内の警戒態勢について、迅速な判断が可能になりました。
―水害対策を含め、今後の防災対策に向けた方針を聞かせてください。
このシステムは集約できるデータの幅が広く、数年前に設けた河川の監視カメラ映像も集約しています。今後は国と県が管理している河川の水位データも集約し、防災対策をさらに強化していきます。