災害時には、管理主体を容易に変えられる
―多治見市では、市内の公立小中学校で無線LANの整備を進めていると聞きます。
はい。市内の全21校で無線LANを導入する計画です。国の指針もあり、教育ICTの環境整備は学校現場からも要望が多くありました。なかには、家庭用ルーターを先行的に導入して活用する学校も。しかし、学校の自主性にまかせる整備では普及に限界があり、情報機器の取り扱いに長けた教職員がいなければ、利用が減少してしまうケースがありました。しかも、パスワードが生徒や児童の目に触れる場所で管理されている学校もあり、情報セキュリティ上の問題もあったのです。
そこで、教員委員会が管理主体となり、統一仕様で無線LANを整備する方針を決めました。
―整備にあたって重視したことはなんですか。
校内全域を網羅することが重要と考え、2教室に1台程度のアクセスポイントを設置する方針をとっています。ただし、体育館や一部施設は災害時の避難所としても利用されることが想定されます。そこで、整備にあたっては、市の複数の部署が無線LAN設備の管理主体になることを想定したうえで、機器を選定しました。
―詳しく教えてください。
当市では、公共施設の種類によって管理主体が異なります。たとえば学校であれば教育委員会ですが、公民館であれば文化スポーツ課、本庁舎なら総務課というように。これに対し、災害時に被災地区の無線LANを開放し、防災用SSIDを発行することになった場合、迅速に対応するためには、施設の種類によらず、当該地区で市が所有する無線LANを一体的に操作できる必要があります。そこで多治見市では、今回の小中学校での整備にあたり、クラウド型Wi-Fi設備を導入しました。
クラウド対応が重要に
―評価のポイントはどこですか。
まずは、管理者の階層を自由に構築できるグルーピング機能です。日常の利用では各部署がそれぞれに管理し、非常時にはその管理階層のうえに、上位権限をもった統合的な管理者を容易に設定することができます。市では今後、学校施設以外にも無線LANを整備することが考えられ、その場合は管理主体も増えるでしょう。そこで、いち早く導入する教育委員会としては、必要時にいずれの部署でもWi-Fiがあつかえるように、管理機能の拡張性を重視したのです。さらに、こうした設定変更をクラウド上でできるのも重要なポイントです。
―どういうことでしょう。
クラウド対応であれば、場所や環境の制約が大きく減るので、かりに災害時にサーバ室に入れないような場合でも設定変更が可能になるからです。しかも、非常時にはわずか4ステップで開放できるほか、日本語GUI(※)を完備するなど操作性の高さも評価できます。
すでに導入した2校の学校現場からは、場所を選ばずにインターネット環境を利用でき、設備管理の負担もなくなったと、喜びの声が届いています。こうした日常での利用を促進する一方で、今後は非常時の運用方針を固め、平時・非常時を問わない効果的な運用体制を構築していきます。
※GUI:Graphical User Interfaceの略。マウスなどで操作できるインターフェースのこと