※下記は自治体通信 Vol.20(2019年10月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
昨今の教育政策をめぐっては、校舎の耐震化やICT環境の整備といった課題を前に、限られた予算をいかに有効に活用するか、に頭を悩ます自治体は多い。そうしたなか、霧島市(鹿児島県)では、教育用PCのOffice統合ソフトウェアを見直し、整備費用を大きく抑制することに成功したという。同市教育委員会の北原氏と時任氏に、取り組みの内容やその効果について聞いた。
霧島市データ
人口:12万5,478人(令和元年8月1日現在) 世帯数:6万1,089世帯(令和元年8月1日現在) 予算規模:979億8,461万円(令和元年度当初) 面積:603.68km² 概要:鹿児島県本土のほぼ中央部に位置し、北部は国立公園である風光明媚な霧島山を有する。南部は豊かで広大な平野部が波静かな錦江湾に接し、湾に浮かぶ雄大な桜島を望む。また、霧島山系から裾野、平野部を経て錦江湾まで流れる清く豊かな天降川、その流域に広がる豊かな田園、そして山麓から平野部まで温泉群等を有しており、海、山、川、田園、温泉など多彩で豊かな地域でもある。
マイクロソフトでの整備では、予算的にまかなえそうにない
―霧島市ではこれまで、どのような方針で教育ICTの整備を進めてきたのでしょう。
北原 霧島市は、平成17年の1市6町の合併により、市の規模としては学校数が比較的多く、市内には小学校35校、中学校13校が存在します。そのなかで、限られた教育予算を有効に活用するため、市内を6地区に分け、6年周期で各地区が順番に教育ICT投資を行い、整備率を高めてきました。
―学校数が多いと、教育投資は大きな負担ですね。
時任 はい。年によって違いはありますが、生徒数が多い地区の整備年度であれば、ICT端末への投資負担は重く、優先順位を決めて整備案件を絞り込まなければならないケースもありました。実際に、平成30年度の整備計画を検討した際には児童・生徒用PCを400台ほど整備しなければならず、PCに付随するOffice統合ソフトウェア『マイクロソフト オフィス』(以下、MS)の導入が予算的にまかなえそうにない局面がありました。
―どう対処したのですか。
北原 市の教育ICT整備を支援してくれていた民間企業がわれわれの悩みを聞いて、オフィス統合ソフトの導入を提案してくれました。そこで、さまざまに検討を重ねた結果、教育用PCにおけるMSからの切り替えを決めました。
豊富なフォント搭載は、児童・生徒の創造性を刺激
―導入を決断した理由を教えてください。
時任 もっとも大きな理由は、導入したツールに含まれる「文書作成」「スライド資料作成」「表計算」の各ソフトウェアがいずれもMSとの高い互換性を有していたことです。これまでのOffice統合ソフトウェアは、作成した成果物を自宅のMSで開くと正確に再現されないケースが多かったのですが、このツールにはそうした懸念がありませんでした。
北原 そのうえで、やはりコスト削減効果は重要で、このツールに切り替えることでPC1台あたりのソフトウェア投資額を3分の1程度に抑えられました。削減によって確保した予算で、不足していたプロジェクターやOHCといった周辺機器の整備に充てることができたのは大きな成果でした。
ほかにも、豊富なフォントを搭載していることも大きな魅力でしたね。
―それはなぜでしょう。
北原 学校現場では、児童・生徒が日々発表資料やポスターなど多くの成果物を作成します。その際、少しでも表現をアピールしたいと考える児童・生徒にとって、フォントは重要な表現方法のひとつになりえるんです。このツールではユニバーサルデザインフォントを含む35種類ものフォントから自由に選べるため、利用する児童・生徒には創造性を刺激する環境が用意できています。
―現場の反応はいかがでしたか。
時任 まったく違和感なく使っているようです。現場からの不満や問い合わせはいっさいありません。市としても、MSからソフトを切り替えることは未知のチャレンジでしたが、期待した効果を十分にえられたと実感しています。