※下記は自治体通信 Vol.21(2019年12月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
ときに自然災害などの緊急時の連絡手段として、また普段の業務効率化の一策として、昨今では職員間の情報・コミュニケーション連携に力を入れる自治体が増えている。美瑛町(北海道)もそのひとつだ。同町では、日常的に使うSNSと使用感が近いというビジネス版のグループウェアを導入している。ここでは、その導入効果などについて、担当者に聞いた。
美瑛町データ
人口:9,948人(令和元年9月30日現在) / 世帯数:4,789世帯(令和元年9月30日現在) / 予算規模:112億6,110万円(令和元年度当初) / 面積:676.78km² / 概要:北海道のほぼ中央に位置し、なだらかな波状丘陵と雄大で緑豊かな自然環境を有する。小麦、甜菜、豆類、馬鈴薯などの畑作農業を基幹産業としながらも、近年は「日本で最も美しい村」連合の取り組みをはじめとした、美しい景観を次の世代に伝える取り組みも行っている。雄大な十勝岳連峰の山麓に広がる波状丘陵地帯で営まれる農村景観や、「青い池」などの地域資源を活かし、国内外から年間170万人の観光客を集める。
将来的な運用を想定し、クラウド型システムを選定
―美瑛町がグループウェアを導入した背景を教えてください。
沼尻 もともと無料のグループウェアシステムを導入し、職員間の情報連携に活用していました。しかし、行政文書などもメールでのやり取りが増え、添付ファイルの容量が膨大になってきたことから、本格的なグループウェアの導入を検討。平成28年頃のことでした。
成澤 折しも、当時は情報セキュリティ強化の観点から、ネットワーク分離を翌年に控えていた時期。新たに移行する総合行政ネットワーク(LGWAN)内にグループウェアシステムを置く選択肢もありましたが、将来的な運用の広がりや災害時での利用を想定した場合、BYOD(※)に対応できることが重要と考え、インターネット環境で使える汎用性の高いクラウド型システムとする方針に。複数のシステムを比較検討し、日常的に使っているSNSと使用感が近いというビジネス版のグループウェアを導入している。
※BYOD:Bring your own deviceの略。個人所有端末を業務に利用すること
―導入の決め手はなんでしたか。
成澤 まずは、圧倒的な使いやすさです。ほとんどの職員が日常的にSNSを利用しているため、そのビジネス版ともいえるこのグループウェアなら、抵抗感なく利用できると期待しました。実際、導入にあたって特別な研修はいっさい行っていません。また、必要な機能は網羅され、定期的なアップデートもあるうえ、月額数百円という費用も決め手でしたね。
沼尻 さらに、国際的な認証を受けている強靭なセキュリティ面にくわえ、データセンターを国内に保有していることも評価しました。
周辺自治体との連携も視野に
―導入効果はいかがですか。
沼尻 「トーク」機能によって、職員間の情報共有が質・量ともに格段に進みました。当町では全職員にアカウントを付与していますが、各自が要件に応じてグループをつくり、文書や画像の迅速なやり取りが可能になりました。「既読確認」機能により個人単位で既読がわかるため、未読者へ再アプローチがしやすい。庁内連絡では現在、ほとんどメールを使用することはありません。
成澤 そのほか、当町は近隣に活火山の十勝岳を擁しているため、毎年、防災訓練を実施していますが、ここで火口映像を関係部署と共有するなどの際にも活用を考えています。災害時には周辺自治体との連携も重要となるので、その基盤にもこのグループウェアを活用していきたい。将来的にはSNSと接続し、町民からの問い合わせ対応も検討中です。SNSに慣れ親しんでいる町民は多く、利便性を実感してもらえるはずです。