※下記は自治体通信 Vol.21(2019年12月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
高齢者が、いつまでも地元でイキイキと暮らし続けるため、環境づくりの整備が各自治体では課題となっている。そんななか、羽曳野市(大阪府)ではそうした取り組みの一環として、公共施設の遊休エリアを活用した介護予防・健康づくりプログラム「LICウェルネスゾーン事業」を平成28年1月からある民間企業と共に実施している。市長の北川氏に、詳細を聞いた。
羽曳野市データ
人口:11万1,144人(令和元年9月30日現在) / 世帯数:5万214世帯(令和元年9月30日現在) / 予算規模:799億5,073万4,000円(令和元年度当初予算) / 面積:26.45km² / 概要:大阪府の南東部に位置し、生駒、信貴、金剛、葛城山系に囲まれた河内平野のなかにあり、東は二上山系を経て香芝市(奈良県)に接している。東部には二上山系の斜面を利用して広大な果樹園が形成され、南西部には、羽曳野丘陵地帯がある。なだらかな丘陵・山麓地の自然に培われた山紫水明の地で、昔から農産物の栽培に適しており、夏の味覚「ぶどう」や関西地区ではもっとも多い生産量を誇る「いちじく」は、特産品として有名。現在、高齢化率は29.7%。
遊休施設を活用した、人気の運動プログラム
―「LICウェルネスゾーン事業」の詳細を教えてください。
公共施設「LICはびきの」にあったカフェスペースの一部を、ウェルネスゾーンとしてリニューアル。そこで、ある民間企業が独自に開発したサーキットトレーニング(※)『ラララサーキット』を実施。具体的には、65歳以上の市民を対象にした介護予防プログラムと、40歳以上を対象とした健康づくりプログラムで行っているのです。
3ヵ月を1クールとしたプログラムで、利用は無料。利用者は年間1万6,000人以上で、おかげさまで定員はつねに満員に近い状態です。高齢者の方には「健康的になった」「生活に活気が出てきた」など好評。私もよく見学に行くのですが、非常に活気があって、みなさん笑顔で取り組んでいらっしゃるのが印象的です。
※サーキットトレーニング:いくつかの運動種目を組み合せ、これを各種目、繰り返し行うトレーニング
―好評な理由はなんでしょう。
適度に負荷をかけたプログラムなので、ムリせず運動でき、継続することが可能。さらに、参加すれば顔見知りもいるので会話もはずみ、「また行こう」となる。なにより、リズミカルな音楽に合わせてみなさん楽しそうに運動する。このにぎわいが、新たに人を呼び込んでいるのだと思います。また、参加費は無料なのもポイント。整備にあたっては、大阪府介護施設整備に関する事業補助金および地方創生交付金を活用しました。
―事業を始めたきっかけはなん だったのですか。
当市では、小学校の空き教室を利用したデイサービスや、高齢者の方が自主的に集まって行う「いきいき百歳体操」の推進などに取り組んできました。ただ、もっと多くの高齢者が気軽に健康づくりに取り組める施策の必要性を感じていました。「なにかないか」と探していたときに、百貨店のスポーツ用品売り場でサーキットトレーニングをやっていたのを見たのがきっかけです。「これは介護予防に使えるのでは」と考え、多くの人が集まる「LICはびきの」のカフェスペースの一部が遊休エリアとなっていたので、それを活かして実施しようと。最終的にプロポーザルを実施し、高齢者向けに独自の運動プログラムを提供している民間企業に委託することにしたのです。
教室が開催できるエリアを、さらに拡大していきたい
―羽曳野市の介護予防における今後のビジョンを教えてください。
介護予防・健康づくりプログラムが提供できるエリアを、拡大していきます。現在、「LICウェルネスゾーン」以外に2つの施設にて新たにプログラム提供を開始。そこでは、民間企業の協力を得て、研修を受けた市の職員が運動教室の運営を行っています。これを、市内全体に広げていければ、と。
健康づくりは、「自分の健康は自分でつくる」ことが基本となります。まずは定期的に自分の身体をチェックして、悪いところがあればすぐに治す。これが大前提。そのうえで、健康づくりを行うためのイベントに参加してほしいですし、市としても「参加したい」と思ってもらえるようなにぎわいを積極的につくっていきたいですね。
広報誌を読んで、こうした教室があることを知って参加しました。リズミカルに身体を動かすのはめちゃくちゃ楽しくて、若返った気持ちです(笑)。
心地よく汗をかいてムリなくできる運動なので、続けられています。簡単なスクワットやストレッチの方法を教えてもらったので、家でも運動を実践しています。