※下記は自治体通信 Vol.21(2019年12月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
少子高齢化などによる財政難や人手不足に悩む自治体にとって、行政サービスをどう維持・向上させるかは大きな課題だ。そんななか、行政サービスに直接関係しない内部事務部門のコストを削減する動きが、自治体の間で広がっている。新潟県もそのひとつで、総務事務のアウトソーシングでそれを実現している。担当者に、取り組みの背景と内容、アウトソーシングによって得られた効果などを聞いた。
新潟県データ
人口:222万3,256人(令和元年9月1日現在) / 世帯数:90万2,921世帯(令和元年9月1日現在) / 予算規模:1兆7,046億2,500万円(令和元年度当初) / 面積:1万2,584.23km² / 概要:「日本一の米どころ」として有名。米の産出額は全国1位で、米菓の出荷額も全国1位。そのほか、「成人ひとりあたりの清酒消費量」「清酒製造免許場数」が全国1位となっている。県の鳥である特別天然記念物「トキ」は、環境省から絶滅のおそれがある「野生絶滅」に指定されていたが、県が取り組む野生復帰事業が順調に進んでいることから、平成31年1月に1ランク低い「絶滅危惧種」に見直された。
財源と人手が減っても、行政サービスの維持は必須
―新潟県における総務部門のコスト削減に向けた取り組みを教えてください。
まずは平成19年度に、各課の総務担当職員を集約する「総務事務センター」を設けました。各課で行っていた、「給与・諸手当の支給手続き」「旅費の支給手続き」などを集中的に処理する体制にしたのです。さらにシステムを導入して処理工程を効率化したことで、業務にあたる担当職員を減らすことができました。
―コスト削減に取り組む背景はなんでしょう。
厳しい財政状況であっても、県民のみなさまには、多岐にわたる行政サービスをしっかりと提供しなければなりません。そのためには、内部事務部門である総務事務にかかる人的資源を可能な限り抑えて、そのぶんを行政サービスにシフトすることが必要だと考えたからです。そこで、総務事務の集中化にくわえて、平成26年度からは民間事業者の力を活用して業務をアウトソーシングすることによって、コスト削減の取り組みをさらに強化しています。
―具体的に教えてください。
これまでは、総務事務センターの職員が、臨時職員を含めて1万5,000人を超す県の職員からの各種手当に関する申請や旅費請求について、「記入もれはないか」「内容は正しいか」などを審査し、認定する業務を行ってきました。処理件数は、旅費の申請だけでも年間20万件以上にのぼります。
このうち、内容の整合性を確認する審査など、職員でなくてもできる業務はアウトソーシングすることにしたのです。平成29年度からのアウトソーシング先は、入札を行ったうえで、官民を問わず豊富な実績がある、ある民間企業に決めました。
対応する職員を減らせ、業務のスピードもアップ
―アウトソーシングによる効果を教えてください。
40人以上の職員で行っていた業務を、約20人で対応できるようになりました。アウトソーシング費用はかかりますが、それ以上の人件費などの削減効果があがっています。
そして、4月の異動時期や年末調整申請時期には、申請件数が通常の1.5倍ほどに膨れあがるので、アウトソーシング以前は臨時スタッフの確保や教育といった負担が職員にかかっていました。いまは、民間企業が繁忙期対応もしてくれるので、職員は審査を通過した申請の認定作業に集中できています。そのほか、業務処理がスピードアップしていることも感じています。
―どのようにスピードアップしているのでしょう。
たとえば、審査処理した件数をスタッフごとに毎日カウントしているなか、かりに進ちょくが遅れているスタッフがいた場合には、周りの仲間が改善方法を教え合い、効率的な業務の進め方を共有しています。そういった、民間企業による緻密な現場管理が、審査処理のスピードアップにつながり、毎月、目標値を上回る処理実績が出ています。
そのほか、これまでは県内を複数のエリアに分けて処理していた体制を、申請内容ごとに処理する体制に変更しました。これは、民間企業から、「申請内容別で処理する体制にしたほうが、業務効率はあがる」と提案を受けたものです。こういった、つねに「改善」を意識した取り組みが業務処理のスピードをあげ、ひいてはコスト削減効果をさらに高めていると思います。
―総務部門のさらなるコスト削減に向けた方針を教えてください。
アウトソーシングを継続し、業務工程の見直しを持続的に行うことで、さらなる効率化に向けた検討を重ねていきます。そのほか、職員が申請しやすい手続きへの改善などにも取り組んでいきます。