※下記は自治体通信 Vol.22(2020年2月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
自治体のさまざまな部署で行われている問い合わせ対応業務は、相談者と職員ともに、「電話のタイミングを合わせなければいけない」といった制約がある。こうしたなかで都城市(宮崎県)の総合政策課は、問い合わせ対応業務にLINEのチャット機能を導入し、業務の効率化を図っている。導入の経緯や得られたメリットについて、同課の2人に聞いた。
都城市データ
人口:16万999人(令和元年12月1日現在) / 世帯数:7万1,016世帯(令和元年12月1日現在) / 予算規模:1,378億8,703万5,000円(令和元年度当初) / 面積:653.36km² / 概要:宮崎県の西部、鹿児島県との県境に位置する。「日本一の肉と焼酎」に特化したPRが奏功し、平成27年度から2年連続でふるさと納税の寄附額・寄附件数で日本一を獲得したとともに、現在も上位自治体の常連。人財育成の基本方針である「都城フィロソフィ」を平成31年4月に策定し、「人×デジタル」による、市の発展および市民サービスの向上を目指している。
電話による問い合わせ対応は「タイミング」が課題
―総合政策課にはどのような問い合わせが寄せられますか。
石川 主に、移住に関する相談が寄せられてきます。当市は人口減少対策として移住促進に注力しており、相談を通じて市の施策を活用した移住者数は、平成25年度の1人から平成30年度に113人に増えました。今後も、ていねいな対応を通じて移住者を増やしていきたいと考えています。しかし、約6割を占める電話による問い合わせには、相談者と職員、双方にとっての課題を感じていました。
―どのような課題でしょう。
石川 相談者にとっては、仕事の合間を縫い、市役所の開庁時間内に電話をかけなくてはいけないこと。一方で職員は、問い合わせに電話で折り返す際、相手の都合を考慮する必要があります。相談の内容は多岐にわたるため、庁内の他部署や民間機関への確認も必要で、即時に返答できないことも多いのです。電話を折り返して相手が出ない場合は、またかけ直すという行き違いが生じていました。
―課題にはどう対処しましたか。
佐藤 LINEを活用し、課題の解決を図りました。当市では昨年10月、世代を問わず広く浸透しているSNSを通じた情報発信を目的に、LINEの公式アカウントを開設。そして、メッセージ配信ツール『KANAMETO』を導入し、移住相談で1対1のチャットを行えるようにしました。相談者は、市のアカウントを「友だち」に追加し、メニュー選択をするという簡単な操作を行うだけで、職員とLINE上で直接対話できるのです。
―導入にどのようなメリットを感じていますか。
石川 相談者は時間を気にせず問い合わせできるほか、「電話をかけるほどでもない」些細な疑問も気軽に聞けるようになったようです。職員は、電話口で相談者を待たせたり、折り返し電話する時間を気にしたりせず、対応できます。写真やURLを簡単に共有できるのもメリットです。回答を定型文として用意できる機能もあるので、負担を感じず運用できていますね。
佐藤 ほかにもLINE活用に必要な機能が充実し、移住相談に限らず当市のLINE活用全体をひとつのツールで管理できるため、導入や運用面で負担が軽減されています。具体的には、「ゴミ出し日の前日、地域ごとにリマインダを自動配信する」「各種証明書の取得方法をチャットボットで案内する」といった活用で、使い勝手の良いLINEを積極的に市政に活かしています。
相談者へのフォローアップを、いっそう充実させたい
―今後の移住相談における活用方針を聞かせてください。
石川「友だち」の追加を促して相談者の母数を増やすほか、相談者の状況に応じたきめ細かなフォローアップもいっそう充実させ、令和2年度は移住者数200人の達成を目標に掲げています。お祭りやイベントなど市の魅力も積極的に発信し、選ばれる自治体を目指したいですね。