※下記は自治体通信 Vol.22(2020年2月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
印刷コスト削減のために、「ムダな印刷物の出力抑制」を職員に呼びかける自治体は多い。しかし、なかなか当事者意識をもってもらえず、「期待ほどの成果が出ない」と悩む声も。そんななか、千曲市(長野県)では「認証印刷システム」を導入し、全庁をあげてムダな印刷物を減らす基盤を構築した。担当者3人に、認証印刷システム導入の背景や期待する効果を聞いた。
千曲市データ
人口:5万9,125人(令和元年12月1日現在)世帯数:2万2,138世帯(令和元年12月1日現在)予算規模:407億6,466万1,000円(令和元年度当初)面積:119.79kmkm²概要:長野県北信地域の南東部に位置し、平成15年に、更埴市、埴科郡戸倉町、更級郡上山田町の三市町の合併によって誕生した。西は冠着山、東は鏡台山をはじめとした山地に囲まれ、そのほぼ中央を、東南から北東に大きく曲がりながら千曲川が流れる。千曲川をはさんで両岸には平坦部が広がり、北は善光寺平に接し、古くから善光寺参りの精進落としの湯として栄えてきた戸倉上山田温泉は、開湯100年を経て信州屈指の温泉街を形成している。
かかったコストを明確にして、職員の当事者意識を高める
―千曲市では、ムダな印刷物の削減にどう取り組んできましたか。
臼井 以前から、各職員に対して、「ムダな印刷物の出力抑制」を呼びかけています。印刷物の出力抑制は、たとえ1枚のコスト削減効果は少額でも、職員の心がけ次第でその効果は高まります。しかし、単に「呼びかけ」だけではなかなか職員に当事者意識をもってもらえず、期待したほどの成果は得られないと感じてきました。そこで、新たな対策を検討したのです。
―どのような対策でしょう。
竹澤 職員ごとに、印刷枚数を集計できないかと考えました。そうすれば、前月よりも印刷枚数が大幅に増えた職員がいた場合、改善策を個別に話し合えますから。
臼井 当市は令和元年9月からの新庁舎移転に際し、職員専用区画への入退室や出退勤管理のために、各職員にICカードが配布されることになりました。そこで、印刷機に付属させたICカードリーダーに、本人のICカードを認証させることで印刷できる「認証印刷システム」を導入すれば、職員ごとに印刷機の使用状況を確認できるのでは、と。
さらに、このシステムにより、ムダな印刷物を削減する以外の導入効果を生み出せると考えました。
―具体的に教えてください。
竹澤 たとえば、認証印刷システムのオプション機能である、どの印刷機からでも出力できる機能を活用した業務の効率化です。じつは新庁舎は、3ヵ所の旧庁舎に対して、フロアごとの面積を広くして1ヵ所に集約したため、フロア移動がしやすくなりました。そこで、印刷機の台数を99台から64台に減らす計画を立てたのです。その際、万が一、印刷機が混んでも、どこからでも出力できる機能があれば職員の待ち時間は減らせ、業務効率を維持できます。しかし、この機能を活用するには、クリアすべき課題があったのです。
―どういった課題ですか。
栁原 印刷機メーカー純正のドライバを使い分ける、高度な技術を実装した認証印刷システムが必要だということです。「そうでなければ、印刷した場合に文字化けが起きてしまう可能性がゼロではない」と、ベンダーから言われていました。それだと、住民記録や税の手続きなど、誤植のある印刷物を渡すことが許されない基幹業務の印刷機への導入は難しい。そこで、LGWAN系だけでなく基幹系を含めた複数のネットワークから、安心してどの印刷機からでも印刷できるシステムを検討したところ、基準をクリアした日本テクノ・ラボの認証印刷システムを採用することに決まりました。
印刷機の稼働状況を分析し、さらなる台数削減の検討も
―導入効果はいかがでしょう。
竹澤 令和元年9月に導入したばかりなので、印刷物の削減効果の検証はまだ進められていませんが、全職員の印刷状況を確認できるようになったため、ムダな印刷物を抑制する意識が高まっていると感じます。「どこでも印刷機能」については、「空いている印刷機を利用できて、とても便利」と好評です。そのほか、印刷物を出力するには印刷機の前でICカードを認証させる必要があるため、印刷物の放置がなくなることから情報漏えいリスクを抑制できています。
―印刷コストの削減に向けた今後の方針を聞かせてください。
臼井 認証印刷システムから日々収集されるデータをもとに、印刷機の稼働状況を分析して、印刷機をさらに減らす検討もしていきたいです。将来的には市内すべての公共施設の印刷機にこのシステムを導入し、印刷コストの大幅な削減を目指したいですね。