※下記は自治体通信 Vol.23(2020年4月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
豪雪地帯において、毎年かならず訪れる積雪シーズンの除排雪業務は、地域の交通インフラを維持するために自治体に課せられた重要な住民サービスである。この業務をICTの導入で効率化しているのが、江別市(北海道)である。同市の除排雪業務を担当する江別環境整備事業協同組合の石井氏に、システム化の内容とその効果を聞いた。
可視化による実態把握に着手
―江別市ではこれまで、除排雪業務をめぐり、どのような課題を抱えていたのでしょう。
あらゆる業務の見直し、効率化が進むなかで、冬場の除排雪業務はさらなる効率化が特に必要との認識がありました。この業務は自然を相手にするものですから、不測の事態への対応が求められる場面も多いです。そのうえ、札幌市に隣接し、市域が広い当市には、住宅街もあれば農業地区もあるといった地域の多様性があり、地域のニーズによって除排雪の手法や頻度も異なります。そこにきめ細かく柔軟に対応していくために、まずは業務の可視化・定量化を通じた実態把握が急務と判断し、2年ほど前から着手しました。
―具体的にどのような対策を進めたのですか。
除排雪にまつわる各種業務を管理する専用システムを構築しました。具体的には、「除排雪業務の受発注履歴」や「除排雪路線データ」「工種工法データ」などを一元的に管理しようとしています。市から当組合に除排雪業務が委託されると、工法、業者、工区、距離を発注データに追加し、業務の進捗に合わせて工区をまたいだリソースの配分などに活かそうという狙いです。システム構築にあたっては、防災・危機管理システムの構築で実績のあるアルカディアに支援してもらいました。
このシステムには排雪場に出入りする車両情報を管理する機能があり、すでに実運用しています。
―詳しく教えてください。
当組合が認可した車両に、RFIDを内蔵した通行許可証を発行し、排雪場のゲートに設置されたリーダーで読み取る仕組みです。許可証には車両ナンバーや業者名、積載量といったデータが記録されており、どの車両がいつ、どれだけの量を運んだのか把握することが可能になりました。
収集データは今後、業務計画や予算の策定に活用
―運用後の効果はいかがですか。
現在、約1,500台の車両に許可証を発行していますが、排雪場の利用状況がリアルタイムで可視化されたことで、排雪量のキャパシティ管理が可能になりました。利用状況に応じて、市内に複数ある排雪場を適正に運用するための情報が得られます。また、排雪場の不正使用も防げるように。車両管理が厳格化されたことで、これまで毎年更新が必要だった車両登録は、5年更新に切り替えました。この結果、当組合の登録業務の効率化のみならず、登録業者の負担軽減にもつながっています。
今後はシステムで得られたデータを業務計画や予算の策定に活用することで、除排雪業務全体の効率化につなげていきたいですね。
厳しい環境下で使えるRFIDは、業務の省力化に大きく貢献できる
株式会社サトー
営業本部 札幌支店 営業グループ リーダー
伊賀 翼いが つばさ
昭和62年、北海道南富良野町生まれ。ソフトウェア会社勤務後、平成23年7月に現職である株式会社サトー札幌支店に営業職として入社・配属。
―RFIDを使った車両管理は一般的な技術なのですか。
いいえ。RFIDは電波を使って情報を読み取る仕組みですが、電波が金属によって反射したり、水分に吸収されたりなど、読み取り精度に悪影響をおよぼすケースがあります。また、電波が届く距離にも制限があります。そのため、雪の降る北海道の屋外という厳しい環境下で、しかも金属の塊である大型車両を管理するという難しい用途で実用化できたことは非常に画期的な成果といえます。
―そのような技術が今回、なぜ実用化できたのでしょう。
当社は、自動認識ソリューションの総合プロバイダとして、リーダーやライター、読み取りソフトウェアや制御システムをトータルでサポートし、RFIDも自社工場で内製化しています。そのため、読み取り精度を高いレベルで担保することができます。さらに、全国30拠点以上、世界90ヵ国以上で事業展開しており、多くの用途や利用環境での導入を支援しているノウハウも活かすことができました。
―今後、自治体におけるRFID技術の導入をどのように支援していきますか。
昨今、人手不足が深刻化するなか、RFIDを使った自動読み取り技術は業務の効率化、省力化に大きく貢献できるはずです。特に今回の江別市での成果によって、排雪場のみならず、駐車場や廃棄物処理場といった、幅広い屋外用途にRFIDが活用できるめどがたったと考えています。RFIDを活用した業務効率化に関心のある自治体のみなさまはぜひ、お問い合わせください。