※下記は自治体通信 Vol.25(2020年8月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
地方公務員法の改正以降、人事評価制度の導入が義務づけられた自治体では、業績・能力評価を給与や任用の基礎とする制度運用が行われている。しかし、膨大な機密情報を管理し、集中的な業務処理を迫られる人事担当者の負担は大きい。そうしたなか、システムの導入で業務の効率化を図る自治体が増えている。そのひとつである春日市(福岡県)の担当者に、システム導入のメリットなどを聞いた。
春日市データ
人口:11万3,379人(令和2年5月31日現在)世帯数:4万9,802世帯(令和2年5月31日現在)予算規模:574億8,781万1,000円(令和2年度当初)面積:14.15km²概要:福岡市の南側に隣接する。福岡県内で一番面積の小さな市。玄海灘に注ぐ、背振山系を源とする那珂川と宝満山を源とする御笠川に挟まれ、標高は、最高が上白水地区の174.5m、最低が須玖北地区の12.8mで、南から北に向けてなだらかな傾斜を持つ丘陵地となっている。
会計年度任用職員の登場で、人事情報の管理負担が増大
―春日市における人事評価制度の運用状況を教えてください。
渡邊 当市では、平成21年度と早くから人事管理に評価制度を導入してきました。正職員にくわえ、嘱託職員も評価対象にしていたため、対象者は約800人にのぼります。その膨大な評価結果は、表計算ソフト上で集計し、部署横断の調整会議に諮ったうえで最終確定されていきます。この一連の事務処理作業は、複数の人事担当者が1週間かかりきりになるほど負担の大きなものでした。
横山 これらの人事データは、おもに紙ベースで管理・運用してきたため、異動が起こるたびに情報管理が煩雑になる点も課題でした。また、評価結果は職員の育成にも活かされていますが、紙ベースであるため過去の情報を振り返るのもひと苦労で、評価や育成に長期間の継続性を担保するのも難しくなります。しかも、今年から会計年度任用職員制度の運用が開始されたことで、任用の根拠としてこれまで以上に継続性が重視されるようになり、情報管理の負担が一気に増すことに。従来の紙ベースの管理・運用に、いよいよ限界を感じるようになりました。
―どのように対応したのですか。
横山 作業負担の軽減と情報管理・運用の効率化を目的に、システム化を検討しました。システムの選定にあたっては、多くの管理職が使用するものだけに、まずは使いやすさを重視。そのうえで、自治体の業務特性にあわせ、計数的な評価だけではなく、定性的な評価を盛り込める仕組みも重視し、昨年10月に人材育成支援システム『ざいなる』を導入しました。
自治体での人事評価では、職員の「納得感」こそ重要
―導入の効果はいかがですか。
渡邊 評価者、被評価者いずれも情報入力や資料作成といった評価にまつわる業務負担が減ったと聞いています。特に、人事担当職員の負担軽減効果は大きく、システムの自動集計機能により、数日かけていた評価結果の集計作業がまったく不要に。特別な研修はいっさい行っていませんが、視覚的に見やすいため、どの職員も直感的に使いこなすことができています。
横山 評価者にとっては、過去のデータへのアクセスが容易になったことで、評価結果を効果的に育成につなげられる体制が整ったと感じます。『ざいなる』には、評価結果をデータ化し、評価者ごとの評価結果のバラツキや甘辛などを相対的に分析できる機能もあるので、一定の公正性を担保することもできます。さらに、評価結果にくわえて評価者がコメントを書き込むこともでき、これが被評価者の納得感を高める重要な役割を果たしています。業務が多岐にわたり、成果に対する画一的な評価が難しい自治体では、職員の「納得感」こそ重要。今後はこのシステムを活用し、納得感をベースにした評価を職員一人ひとりの能力開発、人材育成につなげ、住民サービスの向上を実現していきたいですね。