※下記は自治体通信 Vol.27(2020年12月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
「コロナ禍」を受け、特別定額給付金として対象者に一律10万円の給付が決定。各自治体は、速やかな申請の案内および住民への給付が求められた。そんななか、武蔵野市(東京都)は、AI-OCRとRPAを申請処理に活用し、都内トップレベルの迅速な給付を実現。AI-OCRとRPAの活用を推進する担当者2人に、その詳細を聞いた。
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武蔵野市データ
人口:14万7,677人(令和2年10月1日現在)世帯数:7万7,932世帯(令和2年10月1日現在)予算規模:964憶2,400万円(令和2年度当初)面積:10.98km²概要:東京都のほぼ中央に位置する。市内を東西に貫通するJR中央線に沿っておもに三駅圏に分かれている。市の玄関として、デパートや専門店などの商業集積をもつ吉祥寺圏。三鷹駅から北側に伸びる、文化・行政ゾーンの中央圏。武蔵境駅を中心に、亜細亜大学などの文教施設と中核病院である日赤病院をもつ武蔵境圏。三域の個性を活かしつつ、全体が調和したまちづくりを進めている。
わずか約2週間で運用開始。短期間の実装を実現した
―特別定額給付金の申請処理にAI-OCRとRPAを活用した背景を教えてください。
横山 もともと本市では、令和2年度から「第六次総合情報化基本計画」にもとづき、さまざまなICT施策を進めようと計画。そのなかに、AI-OCRとRPAがあらかじめ盛り込まれていました。そんなおり、4月21日に特別定額給付金実施の通知が。そこで、郵送申請の用紙をAI-OCRで電子化し、RPAで自動入力すれば業務効率化が図れるのでは、と考えたのです。
半田 今年度、RPAは、導入支援業務委託事業者として入札でNTT東日本への委託が事業者決定しており、課税業務や契約業務などに同社の『おまかせRPA』を活用していました。ただ、AI-OCRは検討段階だったので急きょ同社に相談。導入イメージが共有できたので同社の『AIよみと~る(※)』の活用を決定し、特別定額給付金事業への導入を一気に進めたのです。
―どのくらいの期間で実装したのでしょう。
半田 5月26日から実際に稼働を始めたので、相談してから約1ヵ月ですね。データ入力を行う給付金管理システムの完成が5月なかばなので、AI-OCRとRPA単体で見ると約2週間というスピード感で運用を開始。短期間で稼働できたのは、以前から本市のシステムに理解があるNTT東日本との協働だから実現したと言えます。
―成果を教えてください。
半田 1日で、最大約6,000件の入力処理を実現。これは人手と比較すると、約4倍のスピードです。申請開始から最初の1週間で全体の60%超の約4万6,000件の申請書が届いたのですが、その入力を11日間で完了できたことが大きいですね。おかげて、速やかに住民への給付を行うことが可能に。最終的には、約7万4,000件の入力業務を自動化できました。
横山 自動化で、約75%(約43.8日分)の稼働削減効果がありました。そのぶん、問い合わせ対応や書類審査など、人にしかできない業務に職員を回せたのも大きな成果です。この実績は全庁的に広まっており、今後は、ほかの給付業務や税務関係業務など徐々に活用の場を広げたいと思っています。
※『AIよみと~る(LGWAN接続タイプ)』のご利用には、スキャナーなどの帳票類を電子化する機器および総合行政ネットワーク(LGWAN)への接続環境が必要です
総務省の声
―自治体におけるICT化の進展をどう見ていますか。
現状は、自治体ごとで導入状況に差が見られます。RPAに関しては、平成30年度と令和元年度で比較した場合、都道府県では導入済みの割合が30%から85%、指定都市では40%から70%に急増。一方、その他の市区町村では、導入済みが18%、導入予定がない、または検討もしていない割合が38%です。そのため、中・小規模の都市を中心に導入の支援が必要であると考えています。一方、「コロナ禍」で、特別定額給付金の支給事務が発生したことで、AI-OCRやRPAのニーズが顕在化したとの声も聞いています。
―今後、自治体のICT化をどう支援していくのでしょう。
総務省では地域情報化アドバイザー派遣事業を行っており、要請があれば自治体にAI-OCRやRPAなどのアドバイザーを派遣することが可能です。また、今年度中に、導入時のノウハウや業務フローサンプルを記載した「RPA導入ガイドブック」を作成・配布予定です。より多くのみなさまに、導入ノウハウを展開することで、スマート自治体の実現を目指したいですね。