※下記は自治体通信 Vol.28(2021年2月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
住民が暮らしやすいまちをつくるうえで、自治体が解決すべき地域課題は、子育てや防災、地域振興など、多岐の分野にわたる。こうしたなか、コミュニティ活性化ソリューションを提供するComunionの中村氏は、「さまざまな地域課題は、地域におけるつながりの希薄化が根本原因になっていることが多い」と指摘する。その理由や、コミュニティを活性化する具体的な方法について、同氏に聞いた。
地域課題の多くは「コミュニティ希薄化」に帰着
―「コミュニティの希薄化が地域課題の根本原因」と指摘していますね。その理由はなんでしょう。
「子供の見守り」や「自助共助」「地場産業の振興」といった、安全安心で豊かなまちを支える要素に、コミュニティの役割が強くかかわっているからです。たとえば、普段から住民同士の会話が活発ならば、近所の家の異変に気づきやすく、災害時の助け合いも生まれやすい。逆に地域のつながりが弱まれば、こうした関係が築けません。さまざまな問題の解決策を探っていくと、「コミュニティをいかに活気づけるか」という課題に帰着することが多いのです。
―地域コミュニティを活性化させるためのポイントはなんですか。
住民同士が顔を合わせる機会を増やすことです。そのためには、「住民が集える施設を設ける」といった「ハード面」の整備だけでなく、住民の交流イベントを開くといった「ソフト面」の施策が必要になります。さらに言えば、こうしたイベントは住民が主体的に企画することが望ましい。住民たちの関心ごとを知っているのは、そこで暮らす住民自身ですから。
―率先してイベントを企画する住民の存在がカギになりますね。
そのとおりです。本来は、地域貢献意欲の強い住民が「コミュニティマネージャー」となり、イベントを企画するのが理想です。しかし、本人に意欲があっても、組織に属さないイチ住民では資金力が足らず、積極的にイベントの開催を増やしていくことは難しい。そのため、住民起点の活動を増やすには、「資金の調達」という障壁をクリアできる仕組みが必要になってきます。
クラウドファンディングで、住民のアイデアを具現化せよ
―どのような仕組みが考えられますか。
たとえば、当社が提供するコミュニティ活性化支援サービスでは、クラウドファンディングを活用して、コミュニティマネージャーの活動を支えます。イベントを開きたいコミュニティマネージャーは、専用アプリで活動内容を宣言。これに共感した企業や個人がスポンサーとなり、アプリを通じて寄附を行うのです。当社がアプリを提供する際には、寄附金控除のスキームを活用することで、寄附をより多く募る仕組みも構築します。
当社はさらに、コミュニティマネージャーが活動を継続できるような側面的な支援を提供します。
―どのような支援ですか。
ボランティアとなりがちな活動を可視化することで、地域活動への参加意欲を高める支援です。たとえば、「防災活動のリーダーを担った」といった、コミュニティマネージャーの地域貢献度を点数化し、それを仮想通貨に換えられれば、活動を行うモチベーションはさらに高まります。これにより、地域のコミュニティマネージャーを増やす効果も期待できます。また、コミュニティマネージャー以外の住民の地域活動に対する参加を促すことで、コミュニティマネージャーを行動面で支える仲間も増やせるでしょう。
―自治体に対する今後の支援方針を聞かせてください。
アプリの提供にとどまらず、コミュニティマネージャーの養成も含め、地域に寄り添うカタチでコミュニティに関する課題の解決を支援していきたいと考えています。関心のある自治体の方は、ぜひお気軽にお声がけください。
中村 昌史 (なかむら まさし) プロフィール
平成元年、福岡県宗像市生まれ。平成24年、関東の大学を卒業後、カナダのバンクーバーでコミュニティカフェの立ち上げを行い、平成25年に同窓会代行サービスの会社に入社。平成28年に退職後、親孝行をプロデュースする株式会社青い鳥を設立。令和2年、地元に貢献したいという想いから、株式会社Comunionを設立し、代表に就任。
宗像市データ
人口:9万7,154人(令和2年11月30日現在) / 世帯数:4万3,517世帯(令和2年11月30日現在) / 予算規模:601億4,000万円(令和2年度当初) / 面積:119.94km²
当市には、昭和40年代に九州最大規模として開発された「日の里」という住宅団地がありますが、人口減少や居住者の高齢化により、空き家や空き地が発生し、居住環境の悪化が懸念されていました。そこで近年は、民間企業による住宅団地の再生プロジェクトが進行しています。用途廃止となったURの集合住宅跡地では、新たな一戸建て住宅のほか、保育所や福祉施設といった生活利便施設の整備が進んでいます。生まれ変わる住宅団地は「コミュニティ創発型団地」を目指し、住民が集える共有スペースやブリュワリーなどの施設も建設されています。
こうしたハード面の整備のほか、ソフト面の取り組みとしては、Comunionもプロジェクトに参画し、コミュニティマネージャーを養成する実証実験が行われています。住民有志が企画・開催するイベントにより、住宅団地内のコミュニティが活性化することを期待しています。また、住民起点のイベントが活気づけば、プロジェクトに関心をもつ地域企業も増え、地域が一丸となった住宅団地の賑わいづくりにつながっていくでしょう。日の里地区をモデルに、今後は同時期に開発された大規模住宅団地である自由ヶ丘地区をはじめ、別の住宅団地でもコミュニティが活性化し、地域の価値が向上する取り組みを波及させていきたいです。
株式会社Comunion