※下記は自治体通信 Vol.28(2021年2月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
昨今の厳しい財政事情を背景に、予算内で無理なく施策を実行するうえで、リース方式を活用する自治体が増えている。そうした自治体のひとつが、愛川町(神奈川県)である。同町では、学校給食設備を更新するにあたり、リース方式を活用。短期間での整備を実現したという。その背景や効果について、この取り組みを推進した町長の小野澤氏に話を聞いた。
愛川町データ
人口:4万22人(令和2年12月1日現在) / 世帯数:1万8,515世帯(令和2年12月1日現在) / 予算規模:240億5,695万1,000円(令和2年度当初) / 面積:34.28km² / 概要:最高峰とする山並みが連なり、東南部は相模川と中津川にはさまれた標高100m前後の台地が広がる中央部のくびれた“ひょうたん形”の地形となっている。山あり、川あり、自然と調和した緑豊かな町が形成されている。
「温かい給食を」生徒や保護者から切実な声
―愛川町では、中学校給食をめぐる改革を行ったそうですね。
はい。当町では従来、中学校の給食は業者からの「デリバリー弁当箱方式」を導入していましたが、食中毒防止の観点から食材をいったん冷却してから運ぶため、生徒の評判は芳しくなく、喫食率は30%程度にとどまっていました。給食を利用しない生徒は、コンビニで食事を買うケースもあったようです。生徒や保護者からは、「温かい給食を」という切実な声が届くとともに、昨今の食育推進の動きも考慮し、平成29年度から新たな方式の検討を進めてきたのです。
―具体的に、どのような検討が行われたのでしょう。
コストや今後の生徒数の推移、地理的条件などさまざまな観点から検討した結果、「親」となる5つの小学校の給食室で、「子」である中学校3校分の給食もあわせて調理し配送する「親子方式」の導入を決めました。既存設備の改修で対応できる「親子方式」は、費用面においても効率的であり、最善だと判断したためです。ただし、この実現には、多くの課題がありました。
―どういった課題ですか。
まずは法的な課題です。この方式では、小学校の給食室の用途が「学校」から「工場」となるため、建築基準法と都市計画法にからむ規制をクリアする必要が生じてきました。そこで、神奈川県と協議を重ね、特例許可を得ることができました。
さらに、財政面および工期における制約もありました。初期費用を抑えたうえで、単年度の費用を平準化した予算を組むこと、また工期は夏休み中しか確保できないため、短い期間で工事を完了させることは大きな課題でした。そうしたなか、リース方式は施設整備における工事費も含めて活用できるという情報を得たことから、最適な方法だと判断。プロポーザルによる事業者選定において整備計画や予算、工期の面でもっとも優れた提案を行ったNTT・TCリースを選定しました。
生徒たちの笑顔を見て、計画の成功を実感
―効果はいかがでしたか。
施設整備費約3億3,500万円を対象に10年間のリース契約としたことで、初期費用を抑え、単年度の費用を平準化し、余裕をもった予算編成ができました。これは計画推進の大きな力になりました。
また、夏休み期間中に調理機器の更新とそれに伴う電気・ガス・給排水設備などの工事を進める予定でしたが、「新型コロナ」の影響で学校の夏休みは短縮され、猛暑のなか5校の改修を一斉に進める難しい工事に。しかし、NTT・TCリースとともに、施工業者が調整を重ね、効率的な施工実施に向け、最大限の努力をしてくれた結果、トラブルなく工事を完了させることができました。先日、中学校を訪問した際、温かい給食を食べる生徒たちの笑顔を見て、この計画の成功を実感できました。同時に、ほかの施設整備事業においてもリース方式を活用できる可能性があると感じています。