※下記は自治体通信 Vol.28(2021年2月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
業務効率化を図るうえで、最新のICTツールの導入は有効な手段になる。しかし、強固な情報セキュリティ体制が求められる自治体においては、選択肢をめぐっては大きな制約が生じるのが現状だ。そうしたなか、LGWAN環境でもインターネット環境でも使える自治体専用のチャットツールを導入し、職員の業務効率を大きく改善したのが、旭川市(北海道)である。導入の経緯や効果などについて、同市担当者に聞いた。
旭川市データ
人口:33万1,645人(令和2年12月1日現在) / 世帯数:17万8,050世帯(令和2年12月1日現在) / 予算規模:2,752億5,989万2,000円(令和2年度当初) / 面積:747.66km² / 概要:北海道のほぼ中央に位置し、雄大な大雪山連峰に抱かれ、石狩川と多くの支流が合流し、肥沃な盆地が広がっている。古くからのアイヌの人々の営みと開拓の歴史があり、以来、交通の要衝・物流の集積地として発展。近年は、航空路線の充実により、外国人観光客が増加しており、全国的に知られる旭山動物園や雪質が良いスキー場などに、国内外から年間500万人を超える観光客が訪れている。
「使ってみると、やっぱり便利」
―自治体専用ビジネスチャットを導入した経緯を教えてください。
會津 当市では今年4月に「行革プログラム」を刷新し、スマート自治体への転換を掲げています。この動きを推進するため、ICTを活用した業務効率化に向けて情報収集を重ねていたところ、『自治体通信』で自治体専用チャットツール『LoGoチャット』の記事を読んだんです。そこではチャットの利用による業務効率化効果が定量的に表現されており、当市でも同様の効果が得られるかもしれないと思い、導入を検討し始めました。
青葉 実際に使ってみなければ効果はわかりにくい部分もありますが、トライアルということで思い切って導入に踏み切れました。
―実際に導入してみて、効果はいかがでしたか。
青葉 使ってみると、やっぱり便利ですね。当市ではまず、われわれ総務部において約100アカウントを発行し、運用を開始したのですが、部内の連絡手段として電話やメールに取って代わりました。たとえば会議の日程調整では、既読機能によってだれが連絡内容を確認しているか一目瞭然でわかります。かつてのようにメールを送った後に電話で確認するといったムダな作業は必要なくなりました。チャット特有の気軽さが、組織内のコミュニケーションを促進している効果も感じていますね。
會津 部内で1ヵ月ほど運用した後、全庁に広げ、現在は約2,200アカウントを発行しています。LGWAN環境でもインターネット環境でも使える特徴を活かし、このうち約500アカウントは「スマホ」を使って庁外でも運用しています。
業務時間削減効果は、職員1人当たり年間73時間
―スマホ上では、具体的にどのような運用をしているのですか。
會津 上下水道部や土木部の職員が、外勤時に現地から写真や報告を庁内にあげる際に、『LoGoチャット』を使っています。これまで現地の写真を庁内に送信する場合、スマホからLGWANにメールで送信した後に無害化処理を行ったり、カメラから直接取り込んだりしていました。共有する際にも、わざわざカラー印刷して関係部署に配付したりと、とにかく作業が煩雑でした。それに対して、『LoGoチャット』では、ファイルを自動的に無害化処理できるので、これまでの方法と比べて、あらゆるファイルを簡単に送受信できるようになりました。
青葉 利用している部局からは、「来年も変わらず使えますよね」と、トライアル終了後の運用方針を心配する声が寄せられています。
―それだけ導入効果が高いと。
會津 はい。先日、開発元のトラストバンクの協力で、当市における『LoGoチャット』の効果測定を行ってみたんです。その結果、職員1人当たり1日約18分、年間73時間の業務時間削減効果が得られていることがわかりました。人件費に換算すると、職員1人当たり年間約15万円の削減効果に相当し、その効果の大きさに驚いているところです。これにより、職員が創造にかける時間の確保やQOLの向上にもつながると思います。
―『LoGoチャット』の今後の運用方針を聞かせてください。
青葉 今後は、簡易決裁の手段として『LoGoチャット』を使えないか検討しています。現在、当市では令和5年の完成を目指し新庁舎の建設を進めていますが、移転後はスペースの関係上、紙資料を削減する必要があり、ペーパーレス化推進のためにも、『LoGoチャット』は非常に有効です。『LoGoチャット』には、ほかの自治体と情報交換ができる機能もありますので、そうした機能も活用しながら、新しい挑戦を成功させたいですね。