神奈川県横須賀市の取り組み
住民手続きの効率化
引越しに伴う住民手続きの混雑を「住民目線」のDXで解消させる
横須賀市
市長室 広報課 発信担当 吉村 紗和子
市民部 窓口サービス課 住民記録係 鳥山 愛
※下記は自治体通信 Vol.33(2021年10月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
令和2年12月に総務省が示した「自治体DX(デジタルトランスフォーメーション)推進計画」を追い風に、全国の自治体において業務をデジタル化する動きが活発化している。そうしたなか、横須賀市(神奈川県)では、住民サービス窓口で抱えていた課題を解消しようと、今年3月、窓口のデジタル化に踏み切った。同市の担当者2人に、詳細を聞いた。
[横須賀市] ■人口:38万5,892人(令和3年8月1日現在) ■世帯数:16万5,375世帯(令和3年8月1日現在) ■予算規模:3,137億8,800万円(令和3年度当初) ■面積:100.82km2 ■概要:神奈川県南東部、三浦半島の中央部に位置し、東は東京湾、西は相模湾に面する。嘉永6年(1853年)にはペリーが同市の浦賀沖に来航し、日本が世界に門戸を開くきっかけとなった地としても有名。戦前までは軍港都市として、終戦後は平和産業港湾都市として発展してきた。黒潮の影響により、冬は温暖、夏は冷涼という恵まれた気候も特徴的。山地や丘陵地が多く、首都圏にありながらも豊かな大自然が残る。
住民の待ち時間が、100分を超えるときも
―住民サービス窓口において、抱えていた課題を教えてください。
吉村 当市では、転入や転出などの引越しに伴う住民手続きを担う窓口サービス課において、3月の繁忙期に住民の待ち時間が最大約100分を超えていました。特に転入の場合、市役所窓口が当市との初接点となります。そのため、行政への期待喪失につながりかねないと事態を重視。デジタル・ガバメント推進室立ち上げのタイミングだったため、DX推進による問題解決を模索することにしたのです。
―どこから課題解決に着手したのでしょう。
吉村 まず同室が主導し、業務改革に積極的な職員を全庁から集めてワーキンググループを結成しました。そこで、待ち時間発生の要因を徹底的に分析。結果、職員が市民から家族構成や住まいの状況などを詳しく聞き取り、必要な申請書を一緒に記入していく作業に時間を要していることが判明しました。これをDXで解消し、待ち時間を減らそうと考えたのです。
鳥山 DXツールを検討するなか、アスコエパートナーズの『手続きナビ』と『申請サポートプラス』を導入することになりました。
―どのようなツールですか。
鳥山 『手続きナビ』は、窓口のタブレット端末を使い、簡単な設問に答えるだけで、各住民に関連する制度や必要な手続きがわかる案内サービス。『申請サポートプラス』は、引き続きタブレット端末を使い、住民自らが必要な申請書を作成するのを支援するサービスです。事前にスマホやPCなどを使って自宅で申請書を作成し、来庁予約をしておけば、さらにスムーズな手続きができます。導入の決め手は、自宅で入力できるのはもちろん、設問の文言など細部にわたって住民目線で設定されていた点。「行政目線ではなく、住民目線で新しい窓口をつくろう」という当市の想いにマッチしたのです。
多くの住民から利用され、待ち時間の短縮を実感
―導入後はいかがでしょう。
鳥山 導入して3ヵ月ですが、予想以上に多くの市民からスムーズなご利用をいただいています。事前に申請書を作成してから来られる市民も増え始め、待ち時間は短縮していると実感しています。
吉村 年内を目標に、児童手当や小児医療を所管するこども青少年給付課でも新たに導入検討を進めています。今後も、住民目線のDXを進めていきたいですね。
支援企業の視点
「紙」から「データ」への移行ではなく、住民の利便性向上がDXのキモ
株式会社アスコエパートナーズ
取締役 北野 菜穂
―住民手続き業務のDXを進める自治体は増えていますか。
実際に増えています。その背景として、マイナポータルのワンストップサービス対象拡大をはじめ、国や都道府県によるバックアップ体制が整備されつつあることがあげられます。横須賀市のように、全国で多くの自治体でDX推進の専門部局が発足していることも、それに拍車をかけていると考えられます。
―そうしたDXを進めるうえでのポイントはなんでしょう。
自治体目線ではなく、あくまで住民目線でDXを進めていくことです。当社が提供している『手続きナビ』『申請サポートプラス』は、既存の申請手続きにとらわれず、徹底的に住民目線に立ったデザイン設計を行ってきました。たとえば、質問や選択肢から難しい言葉や専門用語を極力省き、口語表現のような親しみやすい使用感にこだわっています。
一方で、導入が現場の負担になればDX普及の大きな阻害要因になってしまいます。そのため、当社では国が法令で一律に定めている手続きに関しては、システムをカスタマイズせずにパッケージ化しており、自治体はすぐに利用できます。また、大きなシステムが不要のため、導入時のイニシャルコストも抑えられます。
―自治体に対する今後の支援方針を教えてください。
行政手続きのDXは、たんに「紙」から「データ」に移行するのではなく、あくまで住民の利便性をいかに高めるかが重要。そのための支援を、自治体に提供していきたいですね。
北野 菜穂 (きたの なほ) プロフィール
中国、米国、イタリアの大学留学および早稲田大学大学院にて、社会システム理論を研究する。平成29年、株式会社アスコエパートナーズに入社し、令和2年に取締役就任。戦略経営全般および新規事業企画を中心に、国・省庁および地方自治体とのデジタルガバメント推進事業、スマートシティ関連事業、海外政府機関連携事業を担当している。
株式会社アスコエパートナーズ
設立 |
平成22年2月 |
資本金 |
5,000万円 |
従業員数 |
36人 |
事業内容 |
自治体コンサルティング事業、ユニバーサルメニューによる行政サービス関連情報提供事業、同メニューに関するコンテンツ・データベース・サイト構築支援事業、行政関連ネット広告事業 |
URL |
https://www.asukoe.co.jp/ |
お問い合わせ電話番号 |
03-6452-8724 |
お問い合わせメールアドレス |
info@asukoe.org |