東京都立川市の取り組み
学校給食費の公会計化②
実証実験で検証された、公会計時のクラウドサービス利用効果
立川市
教育委員会 教育部 学校給食課長 南 彰彦
教育委員会 教育部 学校給食課 管理係 主事 小林 賢二郎
前記事で紹介した御宿町では、新たにクラウドサービスを利用することで、公会計化へのスムーズな移行を図った。いま多くの自治体が学校給食費の公会計化に取り組むなか、このようなシステム導入は、現場にどの程度の業務削減効果をもたらすのか。このほど、それを実証的に検証したのが立川市(東京都)である。実証実験を行った経緯やその成果などについて、同市担当者に話を聞いた。
【千葉県御宿町の取り組みはこちら】
[立川市]■人口:18万5,030人(令和3年8月1日現在) ■世帯数:9万4,439世帯(令和3年8月1日現在) ■予算規模:1,307億7,458万7,000円(令和3年度当初) ■面積:24.36km2 ■概要:東京都のほぼ中央、西よりに位置しており、多摩地域の中心部分にあって昭島市、小平市、日野市、国分寺市、国立市、福生市、東大和市、武蔵村山市と接している。市域の南側には東西に流れる多摩川が、北側には武蔵野台地開墾の源となった玉川上水の清流が流れ、地形は平坦。市域の中央部分には国営昭和記念公園や広域防災基地などがあり、また市域の北部は都市農業や武蔵野の雑木林など緑豊かな地域を形成している。
LGWANからの接続検証や、業務負担の削減効果を検証
―立川市が学校給食費の公会計化に向けて実証実験を行った経緯を教えてください。
南 令和元年7月の文部科学省による通知を受けて、当市でも令和5年度の移行を目指し、公会計化の検討を始めました。徴収管理業務が学校現場から移管されるにあたっては、受け皿となる教育委員会の業務負担増大を考慮し、システム導入も合わせて検討。その際、システムの導入効果がどれほどのものか、またどのようなメリット、デメリットがあるのかについても検証が必要と判断し、実証実験を行うことにしたのです。
―実証実験を行ううえで重視したポイントはなんでしょう。
南 まずは、教育委員会の業務環境であるLGWANネットワーク内でセキュアに利用できるシステムであること。児童・生徒や保護者の個人情報を取り扱うことから、情報セキュリティを重視しました。さらに導入費用や維持管理の負担を抑えられるクラウドシステムであることを条件に設定。提案型実証実験を公募した結果、NTTファイナンスから応募があり、同社の『楽々クラウド決済サービス』を使った実証実験を行うことを決めました。
小林 実験は今年の5月中旬から6月末まで実施し、NTTファイナンスが用意した仮想環境のもとで、LGWANからの接続検証や実際の業務フローの検証、業務負担の削減効果の検証などを行いました。
教育委員会の業務負担が、約4割削減される見込み
―実証実験では、どのような結果が得られましたか。
小林 まず、公会計化にあたり各学校での給食費に関する事務は、最大で約8割程度削減されることがわかりました。さらにその状態から、今回検証に使った『楽々クラウド決済サービス』を導入することで、各校から集約した事務の受け皿となる教育委員会の業務負担は、約4割程度削減されるとの見込みが得られました。
南 LGWANからクラウドへ直接アクセスでき、スムーズに利用できることも確認し、各種登録・徴収・収納状況といった一連の動作検証も行い、口座振替の自動化をはじめクラウドの有効性も確認できました。一方で、クラウドの一部機能についての要望や当市でも検討が必要な事項なども見つかりました。今回の結果を受け、公会計化に向けた業務フローの精査およびさまざまなコストなどの比較を行い、効率的かつ公正なシステム導入の準備を進めていきたいと考えています。
専門家の視点
自治体と住民をつなぐ事務では、特にLGWAN-ASPのメリットがある
地方公共団体情報システム機構(J-LIS) 総合行政ネットワーク全国センター システム部長 梅原 忍
―自治体のDX推進状況をどう見ていますか。
今般のコロナ禍によって、改めてDXを加速させる必要があるとの認識が自治体のなかでも広がり、インターネットの積極的な活用やクラウドサービスの導入が急速に進んでいます。一方で、住民の個人情報を扱う自治体においては、インターネットの活用に伴う情報セキュリティ対策は避けられない課題です。自治体専用の閉域網であるLGWANという非常にセキュアなネットワークを介して各種の行政事務サービスを提供できる「LGWAN-ASP」の仕組みは、自治体のDXを後押しするうえで大きな役割を担うものと考えています。今回NTTファイナンスが開発した『楽々クラウド決済サービス』のように、個人情報を扱う自治体業務と住民との連携が必要になる分野では、特にLGWAN-ASPのメリットが享受できるのではないでしょうか。
―今後、自治体DXをどのように後押ししていきますか。
LGWAN-ASPが提供するサービスの導入は、DX推進のほか、BPRの促進というメリットも期待できます。導入費用を抑えるため、LGWAN-ASP上のサービスは各自治体固有の業務プロセスを包含できるよう標準化が進んでいます。そのため、導入時にはシステムに適合させるよう一定の業務の見直しも必要になり、それが業務改善につながることも期待できます。その意味では、住民の利便性向上のみならず、自治体職員の業務改善という視点からも、LGWAN-ASPサービスの導入を支援していきたい。当機構としても、さまざまなサービスベンダーにLGWAN-ASPを活用したサービス開発を働きかけ、自治体のみなさんに幅広い選択肢を用意できる環境整備を推進していきたいと考えています。
NTTファイナンス株式会社
設立 |
昭和60年4月 |
資本金 |
167億7,096万円 |
売上高 |
2,506億円(連結:令和3年3月期) |
従業員数 |
4,530人(連結:令和3年3月期) |
事業内容 |
通信サービスなど料金の請求・回収業務、集金代行・支払代行および企業の計算事務代行、経理にかかる事務・制度の調査・コンサルティングなど |
URL |
https://www.ntt-finance.co.jp/ |
お問い合わせ電話番号 |
0800-555-05-50 (担当:ユーザーサポートセンター、9:00〜17:00、土日祝日・年末年始を除く) |
お問い合わせメールアドレス |
info-ml@ntt-finance.com |
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