茨城県稲敷市の取り組み
通信費経理における業務効率化
煩雑な作業を伴う通信費の経理業務。「一括請求」で格段の効率化を実現
稲敷市
土木管理部 下水道課 課長 斉藤 昇
※下記は自治体通信 Vol.36(2022年3月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
業務が複雑化・多様化するなか、限られた人員でいかに効率的に業務を遂行していくか、課題を抱えている自治体現場は少なくない。下水道用ポンプの監視装置で利用する通信回線の経理処理をめぐり、業務負担の重さに頭を悩ませていた稲敷市(茨城県)も、そうした自治体のひとつだった。同市ではこのほど、新たな「一括請求サービス」を活用し、この課題解決に成功したという。サービス導入の経緯やその効果について、同市担当者に話を聞いた。
[稲敷市] ■人口:3万9,111人(令和4年1月1日現在) ■世帯数:1万6,312世帯(令和4年1月1日現在) ■予算規模:360億9,133万1,000円(令和3年度当初) ■面積:205.81km2 ■概要:平成17年3月に江戸崎町、新利根町、桜川村、東町が合併して誕生。茨城県の南部に位置し、地域の北側には国際的な研究学園都市「つくば」を、南側には世界への玄関口「成田」を擁しており、これらの都市と首都圏中央連絡自動車道で結ばれている。稲敷台地と広大な水田地帯からなり、霞ヶ浦、利根川、新利根川、小野川などの水辺環境に恵まれている。
大きな業務負担を感じていた、約400回線の通信費精算
―下水道課では通信費の経理処理に課題を感じていたそうですね。
はい。当課が管理しているマンホールの一部には処理場まで汚水を押し出すためのポンプが設置されており、その数は340基を数えます。マンホールポンプには必ず水量監視装置が設置され、通信回線で管理されています。つまり、ポンプの個数ぶんの通信回線利用が発生するのです。その他の用途も含めた利用回線数は約400にのぼり、通信費の経理処理はとても煩雑な業務となっていました。これまでも、地区ごとに請求をまとめるといった対応を通信会社に依頼していました。しかし、それでも毎月の納付書は35件ほどに達し、その開封や一連の経理処理に大きな負担を感じていました。令和3年度からは課員が一人減ったこともあり、これまで以上に業務の効率化が必要な状況でした。
―そうした事態を受け、どういった対応を検討したのでしょう。
当初は、請求の窓口であるNTTファイナンスに、請求をさらにまとめられないか相談したのですが、その際に、通信費の一括請求サービスである『ビリングONE』を提案してもらいました。
―どのようなサービスですか。
複数の通信会社にまたがり、納付書の到着時期や支払い期限がバラバラな毎月の通信費を一括請求してくれるサービスです。通信費自体はNTTファイナンスが一旦立替払いを行ってくれるため、当市の支払い処理は毎月一度で完了できるのです。当市では今後もマンホールポンプの新規整備が予定されているため、将来的な業務改善効果も見込み、『ビリングONE』の導入を決めました。令和3年10月から運用を開始しています。
毎月約14時間の経理処理が、約94%短縮されたとの試算も
―導入効果はいかがでしょう。
業務時間の削減効果がとても大きいですね。まず、毎月35通届いていた納付書の開封作業はいっさいなくなりました。また、毎月25日に届く通信費総額を一度承認し、翌月20日までにNTTファイナンスに立替え金額を支払えばよいので、金融機関への支払い行為もなくなります。さらに『ビリングONE』では、各通信費の勘定項目を事前に指定し、それをCSV形式でダウンロードできるので、従来手作業で行っていた仕分け・入力作業も不要に。こうした効果を算出した結果、毎月約14時間を要していた経理処理が52分と、約94%も短縮されたという試算が出ています。
さらに、『ビリングONE』では、前月分の請求を翌月には必ず処理できるので、一部の請求が決算に間に合わないといったケースもなくなりましたね。
―今後、このシステムをどのように運用していきますか。
『ビリングONE』では、すでに市で運用している会計システムとも連携可能だと聞いています。こうしたシステム間連携によって、会計伝票の起票といった場面で、さらなる業務効率化を図れるものと期待しています。
支援企業の視点
通信費はシステムで一括管理し、限られたマンパワーの有効活用を
NTTファイナンス株式会社
ビリング事業本部 南関東総合料金センター 法人ビリングソリューション営業部
アドバイザー 岡田 英克
サブセールスマネージャー 野末 一摩
―煩雑な通信費経理に課題を抱えている自治体は多いですか。
岡田 とても多いようです。処理水の水位監視を通信で行っている下水道課のように、多くの回線数を利用している部署では経理処理が煩雑であり、複数の通信会社を利用しているケースではなおさらです。限られた人員をより重要な業務に充てられるよう、システムにできることはシステムに任せるべきです。そこで当社では、クラウドベースで導入コストを抑えられる一括請求サービス『ビリングONE』を提案しています。
―特徴を教えてください。
野末 システム化によって、請求書の開封作業やデータ入力といった手作業が不要になり、職員の限られたマンパワーを有効活用することができます。一括管理といっても、使っている部署や用途によって勘定項目を自動で仕分けられるため、利用状況を明確に把握することもできます。発生した通信費は必ず当月中に確認できますので、経理処理の迅速化に貢献できるのも『ビリングONE』の大きな特徴です。
―今後、どのように自治体の業務効率化を支援していきますか。
野末 『ビリングONE』には、すでに電気やガス、水道といった公共料金の一括管理機能もありますが、不動産賃料や物品購入費といった費用の一括管理ニーズも寄せられています。今後は、紙請求書の電子化ニーズが高まり、リモートワークの増加も予想されます。自治体の新たな働き方を、『ビリングONE』で積極的にサポートしていきます。
岡田 英克 (おかだ ひでかつ) プロフィール
昭和48年、北海道生まれ。平成24年7月、NTTファイナンス株式会社に入社。料金センター、債権回収業務などを経て、平成31年4月より現職。
野末 一摩 (のずえ かずま) プロフィール
昭和50年、東京都生まれ。平成24年7月、NTTファイナンス株式会社に入社。料金回収業務、本社業務などを経て、平成29年7月より現職。
NTTファイナンス株式会社