山口県周南市の取り組み
防災情報システムの導入
災害情報をリアルタイムに一元化し、庁内で即共有できるシステムを導入
周南市 防災危機管理課 防災危機管理担当係長 和泉 正明
※下記は自治体通信 Vol.37(2022年4月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
昨今頻繁に起こる台風や集中豪雨による自然災害から住民を守るため、これまでの災害対策のあり方を見直す自治体が増えている。周南市(山口県)では、新庁舎が建設されたこともあり、平成31年3月に防災情報システムを新たに導入した。同市担当者の和泉氏に、導入した背景やシステムの詳細、期待する効果などを聞いた。
[周南市] ■人口:13万9,095人(令和4年2月末現在) ■世帯数:6万7,939世帯(令和4年2月末現在) ■面積:656.29km2 ■概要:山口県の東南部に位置している。北に中国山地、南に瀬戸内海を臨み、海岸部は化学や石油、鉄鋼等の基礎素材型工業の企業が集積する全国有数のコンビナートが立地し、それに接して東西に市街地が伸びており、自然と産業が調和したまちを形成している。また、本州唯一のナベヅル飛来地であるほか、瀬戸内海を臨む半島部や島しょ部は瀬戸内海国立公園区域にも指定されている。
アナログな収集・共有では、対応が後手になってしまう
―新しく防災情報システムを導入した背景を教えてください。
山口県は、土砂災害危険箇所数が全国で5番目に多く、かつ本市は県内で3番目に多い土砂災害警戒区域を有しています。最近では、平成30年7月豪雨で多くの被害が発生したほか、市内の沿岸部には全国でも有数の石油化学コンビナートが立地しており、自然災害に起因する産業災害が懸念されていました。
そうしたなか、実際に災害が起こった際は、J-ALERTや電話などで集めた情報を災害対策本部のホワイトボードに転記したり、道路の通行障害などの情報については、紙の地図に記載したりしていました。また、情報を職員間で共有する際は、Excelに入力した情報を印刷して配るほか、支所など本庁以外の職員にはおもに電話で伝達をしていたのです。そうしたアナログな情報収集・共有では、どうしても対応が後手になってしまいます。そんなときに、パナソニックシステムソリューションズ ジャパンから新たな防災情報システムの提案を受けたのです。
―どのような内容でしたか。
周南市防災情報収集伝達システム内の一部として、庁内間における情報収集・伝達の役割を果たすシステムです。具体的には、本市が新設した河川の監視カメラや、J-ALERT、防災行政無線の放送履歴といった災害情報を、災害対策本部のモニターに一覧表示するというもの。さらに、GIS(地理情報システム)を活用して、ハザードマップの危険箇所や被害の発生場所といった位置情報や写真を集約させ、モニターの電子地図上に可視化することも可能ということでした。そうすれば、各種災害情報をリアルタイムに、かつ一元化して災害対策本部で確認することができます。さらに、その情報は専用端末などを通じて各支所や現場職員にもスピーディに届けることが期待できます。
こうした提案を総合的に判断した結果、本市がこれまで抱えてきた災害対策の課題解決につながると考え、導入を決めたのです。実際に、平成31年3月から運用を開始しています。
来るべきときに備え、さらなるシステム強化を
―導入後はいかがでしょう。
幸いにも本市では、システムを本格活用するような災害はいまだに起きていませんが、職員向けにシステム操作方法の説明会を開催してもらうなど、パナソニック システムソリューションズ ジャパンからは、いろいろとフォローしてもらっています。また、本市でも訓練の際に積極的に使用することで、来るべきときに備えるようにしています。
―今後におけるシステムの活用方針を聞かせてください。
システムを導入することで、もし災害が起きても、庁内での情報収集・共有および、その後の対応が速やかに行える体制が整ったと考えています。今後も引き続き、パナソニック システムソリューションズ ジャパンの協力を得ながら、さらなるシステムの強化を図っていきたいですね。
支援企業の視点
現場目線にこだわったシステムなら、その後の判断もスピーディに行える
パナソニック システムソリューションズ ジャパン株式会社
パブリックシステム事業本部 システム開発本部 プロセスソリューション事業センター
ソリューション1部 西日本SI課 係長 奥山 善文
―防災対策として、システムを導入する自治体は増えているのでしょうか。
増えています。やはり、昨今の局所的な豪雨により、頻繁に災害にあっていた自治体はもちろん、これまでさほど心配されなかった地域も改めて防災対策を見直すようになっています。そのため、いち早く情報を集め、住民に対して適切な行動をうながせるようなシステムを、検討・導入する動きが全国で起きているのです。
―システムを導入するうえでのポイントはなんでしょう。
現場目線に立ったうえで、各自治体にあわせたシステムを導入するサービスを選ぶべきです。たとえば当社では、自治体担当者とじっくりと話し合い、課題を抽出したうえで、必要な機能を拡張するなどの対応を行っています。また、アドソル日進が提供しているGISを活用し、さまざまな情報を電子地図に落とし込み、エリア状況を俯瞰して把握できるのも特徴です。いくら情報を集めても、それが整理できていなければ的確な判断は難しい。そこで、集めた情報を電子地図で折り重ねるように集約することで、パッと見ただけで状況が素早く理解でき、その後の判断もスピーディに行えるのです。
―自治体に対する今後の支援方針を教えてください。
当社のシステムを普及させることで、多くの自治体の災害対策に貢献していきたいと考えています。また、職員が極力簡単に操作できるシステムづくりにもこだわっているので、ぜひ問い合わせてほしいですね。
奥山 善文 (おくやま よしふみ) プロフィール
昭和54年、岡山県生まれ。平成22年より自治体防災事業に従事。さまざまな現場課題の解決に向けて、各種防災システムの推進・構築を担当。
パナソニック システムソリューションズ ジャパン株式会社