鹿児島県天城町の取り組み
会議用音響システムの刷新
「地方」にあってこそさらに実感する、オンライン会議での「音の重要性」
天城町
総務課 デジタル推進係 係長 記原 健悟
※下記は自治体通信 Vol.42(2022年9月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
コロナ禍を機に自治体DXは急速に進み、職員の働き方は大きく変わりつつある。会議や議会のオンライン化はその最たる例であり、とりわけ都市部から距離を隔てた自治体では、業務効率向上に大きく寄与している。そうした自治体のひとつである徳之島の天城町(鹿児島県)では、オンライン会議の効率的な運営に向けて、「音」の重要性に着目し、会議用音響システムを刷新したという。同町担当者の記原氏に、システム刷新の経緯とその効果について聞いた。
[天城町] ■人口:5,682人(令和4年3月1日現在) ■世帯数:3,046世帯(令和4年3月1日現在) ■予算規模:85億9,949万9,000円(令和4年度当初) ■面積:80.40km2 ■概要:徳之島の北西部にあり、徳之島のほぼ西半分を占める。東が徳之島町、南が伊仙町と隣接し、北東から東南にかけて一連の山岳によって囲まれている。気候は温暖な亜熱帯海洋性で、降雨量も多く、6月頃から10月頃まで台風が多く来襲する。
オンライン会議での支障で、認識した「音声の重要性」
―オンライン会議用音響システムを刷新した経緯を教えてください。
コロナ禍以前、当町ではオンライン会議を開催する機会はほとんどありませんでした。徳之島に位置する当町の場合、国や県による会議に出席する際は、担当者が出張するのが当たり前でした。しかし、コロナ禍の影響により徐々にオンライン会議の機会が増え、当町としても対応できる専用設備を整備する必要に迫られていました。
そうしたなか、ありがたいことに、設備事業者からカメラとマイクが一体化した簡易的な機器の寄贈を受けることができました。それによって、当面のオンライン会議需要には対応できると考えていました。しかし、オンライン会議の機会が増えるにつれ、このシステムだけでは十分に対応しきれない場面が増えていきました。
―どういうことでしょう。
ひとつは、単純にオンライン会議の機会がどんどん増えたため、設備の増設が必要になったことです。もうひとつは、10人以上のような大人数での会議の場合、設備能力の限界から音声をクリアに拾うことができなかったことです。オンライン会議が増えるにつれ、進行に支障をきたす場面が多くなったことで、参加者の間では「音声がいかに重要か」が認識されるようになっていきました。
折しも、町議会でも委員会室のマイクシステムが更新時期を迎えていたこともあり、固定設備にくわえ、多くの用途に対応できるよう可搬型のシステムを追加することも条件のひとつにして、令和2年の夏頃から設備の刷新を検討し始めました。
デモ参加者が一様に驚いた、集音性能の高さ
―検討の結果、どのようなシステムを導入したのですか。
シュアのアレイマイクで、天井設置型『MXA910』1台のほか、バータイプの『MXA710』を可搬型のシステムに仕立ててもらい、2式導入しました。このアレイマイクは、最新の会議用音響システムとして設備事業者から紹介されたもので、シュアと協力事業社が実施してくれたデモで実感した集音性能が導入の決め手になりました。10人以上が出席する規模の会議室でも、天井に設置した約60cm四方のマイクが部屋の隅々までカバーし、端にいる人の小声まで明瞭に拾うのです。その集音性能の高さに、デモ参加者が一様に驚いていました。
―導入効果はいかがですか。
こちらの音声が先方に届かない、といった場面はほぼなくなりました。また、発言者はマイクを意識する必要がないので、自然なコミュニケーションが図られるようになりました。職員の間では、設備刷新を機に積極的にオンライン会議を開く傾向を感じるほど好評です。
可搬型システムに仕立てた『MXA710』は自在に持ち運べ、設置も簡単なため、多くのシーンで活用しています。当町は台風被害が多く、緊急で災害対策室を設置することも多いのですが、迅速にオンライン会議の環境を構築できるため、町の防災対策強化にも一役買っていると思います。
支援企業の視点
自治体のオンライン会議環境は、最新の技術活用で大きく変わる
シュア・ジャパン株式会社
インテグレーテッド・システムズ シニアディレクター 大友 裕己
―音響システムを見直す自治体は増えていますか。
とても増えています。音声の乱れでオンライン会議の進行が止まり、ストレスを感じるという経験を多くのみなさんがしています。そこで当社では、1世紀にわたりコンサートや大規模会場でのスピーチに使われるマイクで培った技術と堅牢性を自治体向けにも提供。最近では「アレイマイク」という新たな集音方法が人気を集めています。
―「アレイマイク」の特徴を教えてください。
製品内部に複数のマイクを平面状に配置することで、高い指向性を持つ集音性能と広いカバー範囲を両立した画期的なシステムです。本来、マイクは集音部が口元に近いほど集音性能が高まります。しかし、アレイマイクは複数のマイクをデジタル技術で制御して指向性を高め、マイクから遠い人物の声も、口元にあるマイクと遜色ない音質で集音できるようになりました。天井設置型にくわえ、バータイプのリニアアレイマイクは可搬式にも仕立てることができるため、複数の部屋を移動して使用することも可能です。
―今後の自治体への支援方針を聞かせてください。
当社ではサポート体制を強化し、離島地域でも協力事業者とともにシステム提案からアフターケアまで行っています。また、マイクのみならず、スピーカーや、それらをつなぐ制御装置なども一貫して提供し、オンライン会議環境の改善に貢献していきます。遠方でも現場での製品デモに対応していますので、ぜひお問い合わせください。
大友 裕己 (おおとも ゆうき) プロフィール
平成16年、慶應義塾大学環境情報学部卒業後、国内音響メーカーを経て、平成27年にシュア・ジャパン株式会社に入社。会議室向けソリューションを扱う「インテグレーテッド・システムズ部門」を立ち上げる。令和3年より現職。
Shure Incorporated(シュア・インコーポレーテッド)
この記事で支援企業が提供している
ソリューションの資料をダウンロードする