※下記は自治体通信 Vol.52(2023年9月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
自治体DX推進の機運を背景に、多くの業務でシステム導入による効率化が追求されている。なかでも、会議録の作成業務は、多くの自治体職員の間で業務負担の代表例とされており、システムによる自動化を模索する自治体は少なくない。その際、業務改善のカギとなるのは、録音データの音質であるという。東神楽町(北海道)もそこに気づいた自治体のひとつであり、このほどマイクシステムを刷新した。同町総務課の深田氏に、その経緯と効果を聞いた。
[東神楽町] ■人口:9,864人(令和5年7月末日現在) ■世帯数:4,367世帯(令和5年7月末日現在) ■予算規模:96億9,239万円(令和5年度当初)
■面積:68.50km² ■概要:大雪山連峰のふもとに広がる上川盆地の肥沃な土壌を生かし、北海道でも有数の米どころとして知られ、稲作を中心とした農業が盛ん。商工業では、「旭川家具」の一翼を担う家具生産が盛んなことでも知られている。平成元年から始まった大規模宅地開発により、平成27年の国勢調査速報値では人口増加率が10.1%と全道1位の増加率となった。町内には道北の空の玄関である旭川空港があり、インフラ整備も進んでいる。
「重要なのはマイク音質」に、我が意を得たり
―東神楽町がマイクシステムを刷新した経緯を教えてください。
当町では、令和5年6月からの一部供用開始を目指し、役場庁舎を中核とする複合施設の建設を進めています。これを機に、各種業務のデジタル化、効率化を図る一環として、職員からの要望が強かった会議録作成業務の自動化を検討することにしました。それまでは、会議をICレコーダーで直接録音し、そのデータを職員が文字起こししていました。というのも、当町では議場と1つの委員会室にしかマイクシステムが設置されておらず、音質の劣るICレコーダーを使うしかなかったのです。当町ではまず、自動化の検討にあたり、文字起こしソフトウェアの導入から検討し、数社のツールでデモを実施しました。
―結果はいかがでしたか。
実際に当町で採取した音質の劣る音源を使うと、各社のツールとも文字起こし精度は著しく低かったため、検討作業を一旦中断せざるを得ませんでした。そんなとき、『自治体通信』で登別市(北海道)が高音質マイクシステムを導入した記事を読んだのです。記事では、「マイクの音質を上げなければ、どんなソフトウェアを導入しても効果は低い」という趣旨が語られており、まさに「我が意を得たり」と感じました。そこで登別市への視察を行い、同市が導入したマイクシステムによる文字起こし精度の高さを確認できたことから、当町でもマイクシステムの刷新を優先することを決定。まずは、建て替えに際して刷新を予定していた議場のマイクシステムから選定を始めました。
DXによる業務改善の効果を、多くの職員が実感
―マイクシステムの選定に際し、重視したポイントはありましたか。
まずは可搬式の無線タイプであることです。新たなマイクシステムを議場以外でも大胆に活用し、投資効果を高めたいとの狙いがあったのです。信頼性の高いシステムであれば、無線タイプでも議場で問題なく運用できるとのことでした。また、さまざまなタイプのマイクを複合的に使えることも重視しました。議員席に設置するシステムはスピーカー一体型とする一方、答弁側に据えるものは簡易型とし、さらに将来的な活用を視野にハンディ型の接続も要望したのです。これらを条件に令和2年12月にプロポーザルを行い、すべての条件を満たしたShure(シュア)のマイクシステムを選定。スピーカー一体型を23台、簡易型13台にハンディ型2本を導入しました。
―導入効果はいかがですか。
ソフトウェアによる文字起こしの精度はコンスタントに7~8割が保たれ、職員の会議録作成時間は大幅に削減されました。また、可搬式の利点を活かし、多くの会議で利用されており、時には庁舎外で利用されるようにもなりました。DXによる業務改善の効果を多くの職員が実感するようになっています。今後もマイクの新しい活用法やそれによる業務改善のアイデアが職員から提案されてくるものと期待しています。
新たなニーズが顕在化するマイクは、いまや業務変革の一翼を担う存在に
シュア・ジャパン株式会社
インテグレーテッド システムズ アカウント セールス スペシャリスト
松宮 健二まつみや けんじ
平成19年に国内半導体商社に入社し、営業を担当。その後、平成23年に国内大手音響機器メーカーにて、国際営業、商品企画などを経験。平成29年にシュア・ジャパン株式会社に入社。おもに企業、文教、官公庁に向けた音響ソリューション提案に従事。
―マイクシステムの刷新を考える自治体は多いですか。
とても多いですね。「文字起こしソフトの精度を高めたい」といった悩みが端緒になる例が目立ちますが、オンライン会議の増加といったニーズも増えています。また、東神楽町のように投資効果を高めるため、従来は「有線による据え付け型」が当然とされてきた議場にも無線タイプのマイクシステムへ切り替えを図る柔軟な発想の自治体も登場しています。ここでは、信頼性の高い無線技術で当社が多くの自治体を支援しています。
―選ばれる理由はなんですか。
製品力と機動力の高さです。製品力とは、「音質の高さ」「システムの安定性」「運用の簡便さ」に集約されます。数々の世界的なイベントで採用される音質と安定性に優れた製品を、簡単な配線のみで使い始められるように製品設計がなされているのは当社製品の特徴です。
また、全国どこの自治体にでも迅速な提案を行い、実際の使用環境に機材を持ち込む訪問デモを行える機動力についても、高い評価をいただいています。
―今後の自治体への支援方針を聞かせてください。
今年2月の総務省からの通達で、一部のプロセスに限り、オンラインによる議会運営を認める方針が打ち出されています。これに伴い、今後マイクシステムに対する新たなニーズが顕在化してくることも予想されます。当社では、豊富な製品ラインナップを用意しており、音を通じて自治体の業務変革の一翼を担う準備を整えています。ぜひお問い合わせください。