
滋賀県長浜市の取り組み
データを活用した政策立案
EBPMの実践的研修で「持続可能な行政運営」の基盤確立へ
総務部 政策デザイン課 企画経営戦略係 副参事 小野 祐二
総務部 政策デザイン課 企画経営戦略係 主査 野村 顕俊
※下記は自治体通信 Vol.49(2023年4月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
効果的な政策の立案・実行に向けて、EBPM推進に前向きな姿勢を見せる自治体が増えている。長浜市(滋賀県)もそうした自治体の一つで、データを分析するためのシステム基盤の構築だけでなく、職員を対象とした実践的な研修も行っている。同市がそのような研修を導入するに至った理由とはなんなのか。研修の内容や期待する効果とあわせて、同市政策デザイン課の小野氏と野村氏に聞いた。


馴染みの薄いEBPMだが、身近な施策でも推進すべき
―EBPMを推進するに至った経緯を教えてください。
野村 当市は近年、18歳~24歳の若年層を中心に、人口が年間1,000人ペースで減少しています。厳しい財政状況に対応し、持続可能な行政運営に向けて、人口減少対策を本格化していく方針を掲げています。その際、限られた財源でも効果的に政策を立案・実行できるよう、EBPMの推進は必須と考えるようになりました。
小野 そのために、令和4年度から、政策立案に資する各種データを分析するためのシステム基盤を構築しましたが、並行して進めた取り組みがありました。
―どのような取り組みですか。
小野 EBPMを身近に感じてもらうための取り組みです。多くの職員にとって、まだ馴染みの薄いEBPMは「総合計画」など長期的な政策推進が目的だと考え、「自分たちには関係のないもの」と認識されがちです。EBPMは、足元の身近な施策でも積極的に行うべきであり、日々試行錯誤を繰り返すことで、全庁的なEBPM推進につながります。
野村 そのためにも、EBPMは日々の業務に直結するものだと職員が感じられる研修を導入しようと考えました。そこで、EBPM研修の実績が豊富なGcomホールディングス社に依頼しました。
各部署が課題を持ち寄り、実践的なアプローチを学ぶ
―どういった研修でしょう。
野村 係長級以上の職員を対象に、令和4年度に2日間ずつ4回実施しました。各部署が現在抱えている課題を持ち寄り、政策立案に向けたアプローチを学ぶ実践的な内容です。そこでは、政策の根拠を得るために、たとえばデータについても既存のものだけを活用するのではなく、「新たにどのようなデータが必要か」といったこともグループワークで議論し合い、政策立案の道筋をつけていきました。
小野 要は、政策立案の「考え方」を学ぶ内容です。そうした考え方を身につけてこそ、システムをうまく活用したEBPMが推進できるようになるはずです。研修を受講した職員からは、「EBPMは難しいものではなく、一つひとつの根拠の積み上げが大切だとわかった」といった感想が聞かれました。
―EBPM推進に向けた今後の方針を聞かせてください。
小野 研修会を今後も定期的に開き、EBPMの意識を全庁に浸透させていきたいです。その結果、人口減少に歯止めをかけられるような政策を立案できるはずで、持続可能な行政運営に向けた基盤が構築できると考えています。
研修受講職員の声
①現在進めている重点施策の、ヒントを得ることができた

当課では、「黒壁スクエア」などの観光スポットがある中心市街地の活性化に取り組んでいます。現在は、エリア価値向上のため、「豊公園」の来訪者数増加を重点施策に掲げており、EBPM研修のテーマにしました。国の調査において、「来訪者数」と「滞在満足度」の間に一定の相関が認められています。そこで、豊公園での「滞在満足度」を向上させる「体験」を知ることが重要と考え、早速課に持ち帰り、来訪者向けのアンケートを作成し、実際に調査・分析を行いました。今回の研修を通じて、施策立案に向けた重要なヒントが得られたと感じています。
②少しの工夫を加えるだけでも、EBPMは推進できる

私は、市の将来ビジョンである「総合計画」の取りまとめ業務を行ってきた経験から、年々増加する「若者層の転出」を防ぐことなど、なかなか難しいと考えてきました。しかし、今回の研修を通じて、そもそも「その理由を把握してきたのだろうか」と、自戒を込めて振り返りました。たとえば、転出手続きの受付時に転出理由を聞いて、それをデータ化することにより、「根拠」に基づく転出防止策を打ち出せるかもしれません。従来業務のなかで少しの工夫を加えるだけでも、EBPMを推進できるのではないかと感じました。
支援企業の視点
「根拠に基づく思考力」で、政策立案力は高められる

EBPMを推進するうえで、自治体のみなさんにぜひ認識していただきたいことがあります。それは、「統計解析能力が重要なのではない」ということです。必要なのは「根拠に基づいて考える力」です。「なぜ課題が生じているのか」「原因追究のために必要なデータはなにか」「そのデータからなにが言えるか」など。これは、訓練さえすれば身につく力です。
当社が実施しているEBPM研修は、職員のみなさんに、分析のための思考法、解決のための発想法を体得していただくものです。この方法論を確立できなければ、データ分析ツールがあってもEBPMは推進できないと考えています。より良い政策を立案するために、当社は、EBPMを推進したいと考える自治体のみなさんに貢献したいと思っています。
創立 | 昭和46年5月 |
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資本金 | 1億円 |
従業員数 | 596人(令和5年3月現在) |
事業内容 | 自治体DXソリューションの調査研究・実証実験・共同開発など |
URL | https://lg-institute.gyoseiq.co.jp/public (地方行政経営研究所) |
お問い合わせ電話番号 | 080-2690-0855 (担当直通、平日 8:30~17:30) |
お問い合わせメールアドレス | kenkyuujo@gyoseiq.co.jp |
ソリューションの詳細はこちら | https://lg-institute.gyoseiq.co.jp/public/research/ebpm |
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