※下記は自治体通信 Vol.51(2023年7月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
DX推進が大きなテーマとなる昨今、各自治体ではシステム導入によって多くの業務で負担軽減や運用改善を図っている。「人事評価」もその代表的な業務のひとつで、全職員が対象となるだけに波及効果は大きいとされている。そうしたなか、「人事評価システム」の導入によって成果を得たのが朝倉市(福岡県)である。同市担当者の江藤氏に、システム導入の経緯とその効果を聞いた。
[朝倉市] ■人口:5万677人(令和5年6月末現在) ■世帯数:2万2,023世帯(令和5年6月末現在) ■予算規模:607億466万2,000円(令和5年度当初)
■面積:246.71km² ■概要:福岡県のほぼ中央部に位置し、東は大分県日田市に接している。市内を西から南東へと貫く国道386号から南側は平野を形成し、北側は古処山や馬見山をはじめとする800~1,000m級の山々が連なる。市域西端部は、商工業を中心とした市街地や鉄道駅が立地。市域北西部には旧城下町の秋月地区があり、同地区は「筑前の小京都」と呼ばれている。また、市域南部には筑後川が流れ、河川沿いを中心に肥沃かつ平坦な農地を形成している。
「組織目標の共有」に対する、職員の意識が薄かった
―これまで朝倉市では、どのように人事評価を行ってきましたか。
当市では、平成22年に策定した「人材育成基本方針」を実現するにあたり、研修制度や職場づくりと並ぶ柱と位置づけ、人事評価制度を運用してきました。従来は、表計算ソフトで記入シートを作成し、回収した全職員約550人分の評価データの整理、集計、フォルダ管理は人事秘書課の担当者がひとりで行っていました。そのため、評価をまとめる年度末は繁忙を極め、業務負担は深刻でした。
また、従来の評価シートは、職員が作成したものであり、そこには部署の枠を越えた共通目標を設定できる仕組みがなかったため、市の総合計画に紐づいた目標設定や評価基準が定められていませんでした。そのため、職員間で組織目標を共有する意識が薄かったのも、人事評価における課題でした。
―それらの課題には、どのように対応したのでしょう。
システム導入による業務効率化を検討しました。令和5年度には第3次総合計画の発表と同時に、人材育成基本方針の改訂も予定されていたので、新方針に基づく人事評価の運用には「システムの力」を借り、組織目標に沿った個人目標管理に移行したいと考えたのです。そこで、令和4年度からの運用開始を目指し、前年度にプロポーザルを実施。検討を重ね、ICTコンストラクションが提供する人材育成支援システム『ざいなる』の導入を決めました。全職員が使うシステムであることから、使いやすさを重視したうえで、個人と組織の設定目標を紐づけ管理できる仕様も評価しました。
システムによる目標管理で「組織全体の視点」の定着へ
―導入後の効果はいかがですか。
まず、入力や集計といった評価業務の負担が大きく軽減されました。評価作業が軽減されたことで、評価内容の精査に集中できます。また、行動記録を随時システムに入力できるようになったので、今後は評価者の記憶や印象に左右されることなく、評価の公平性・公正性を担保できるようになるでしょう。評価制度が公平であれば、評価に対する職員の納得感が高まり、仕事へのモチベーションが高まることも期待できます。
年度の替わり目には多くの人事異動が伴うことから、システムの年度更新処理が不安でしたが、ICTコンストラクションのサポートでスムーズに更新を行えました。
―今後のシステムの運用方針を聞かせてください。
今年度からの人材育成基本方針の改訂に伴い、部課長級の役割に「組織全体の視点」という項目が新たに追加されました。それに先立ち、『ざいなる』を通じて組織目標と個人目標を紐づける新たな目標設定を試行することができたのは大きな成果です。この評価制度が定着すれば、共通の目標に向かって邁進する力強い組織をつくれるものと期待しています。公平・公正な評価結果は、本人の希望と能力を活かす人材育成の視点に立った人事管理の基礎資料としても活用できると考えています。
法改正に伴う制度運用の変更で、人事評価のシステム化は急務に
ICTコンストラクション株式会社
内部情報ソリューション部 HRソリューション課
宮近 彩みやちか あや
昭和61年、福岡県生まれ。平成27年にICTコンストラクション株式会社へ入社。令和4年より人材育成支援システムの保守・サポートに従事。
―人事評価をめぐる自治体の課題とはなんでしょう。
いまもまだ紙とExcelを使って運用している自治体が多く、人事評価をまとめる年度末の業務負担が大きな課題になっています。折しも、今年4月の地方自治法改正により、自治体で働くパートタイムの会計年度任用職員にも勤勉手当を支給できることになりました。その結果、今後は評価の対象となる職員が大きく増えると予想されていることも、人事評価をめぐる新たな課題として浮上しています。そこで当社では、システム導入による業務の効率化を推奨し、人材育成支援システム『ざいなる』を提案しています。
―特徴を教えてください。
多くの職員が利用するシステムですので、誰もが直感的に使いこなせる「わかりやすさ」を特徴としています。また、人事評価をその後の人材育成につなげるための仕組みが多く盛り込まれていることや、各種ハラスメント対策に対応した匿名相談機能など、時流に合わせた新機能も随時追加しているところも『ざいなる』の大きな特徴です。
―今後の自治体への支援方針を聞かせてください。
すでに全国50以上の自治体に導入されている『ざいなる』ですが、当社では顧客サポートをより一層強化しており、導入後も自治体へ定期的にコンタクトをとっています。年に2回実施しているバージョンアップ時の案内にくわえ、既存機能の運用支援や活用事例の紹介などを通じて、自治体の課題解決に貢献していきます。人事評価業務の改善を考えているみなさんは、ぜひお問い合わせください。