※下記は自治体通信 Vol.52(2023年9月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
自治体DXの必要性が叫ばれる昨今、新たなシステムの導入によって多くの業務が改善に向けて変わり始めている。人事評価もそうした業務の1つであり、人事担当職員の負担軽減はもとより、職員のモチベーションへの影響といった観点からも業務改善の必要性が指摘されている。ここでは、新たに「人事評価システム」を導入した太宰府市(福岡県)を取材。担当者2人に、システム導入の経緯とその効果を聞いた。
[太宰府市] ■人口:7万1,456人(令和5年7月31日現在) ■世帯数:3万2,943世帯(令和5年7月31日現在) ■予算規模:479億4,783万3,000円(令和5年度当初)
■面積:29.60km² ■概要:福岡市の南東約16kmに位置する。約1,300年前、九州全体を管轄する「大宰府」(オオミコトモチノツカサ)という大きな役所が置かれ、約500年の長い間、その役割を果たしてきた。今もその歴史をしのばせる大宰府跡、水城跡、観世音寺、太宰府天満宮など市内に数多くの史跡や名所が存在し、年間約1,000万人の観光客が訪れている。
800の添付ファイルを扱う、膨大で煩雑な作業に追われる
―人事評価にシステムを導入した経緯を教えてください。
籾井 それまで当市の人事評価は、表計算ソフト上で運用・管理していました。各所属長は表計算ソフト上で作成された評価シートをメールに添付して人事部門に提出し、まとまった最終評価は各職員に印刷して手渡していたのです。そのため、年度末になると毎年、人事担当職員はデータの集計、管理などに膨大な時間をとられていました。約400人の全庁職員に対して能力評価と業績評価を行っているので、合わせて約800ものファイルを扱うことになります。そこでは、添付ファイルを一つひとつ開いて中身を確認し、不具合があれば差し戻すといった煩雑な作業が生じ、ファイルの取り違えや、どれが最新のファイルかわからなくなるといった人為的なミスが発生する余地もありました。
―人事部門における業務の煩雑さが課題だったと。
大塚 それだけではありません。データが集約されるのは各部署で最終評価を終えた後なので、年度末までに各部署で次年度の目標設定や面談が正しく行われているかを人事係では確認できませんでした。結果、面談を実施しないまま評価を行っていたケースもあったようです。また、表計算ソフトによる運用・管理の限界から、評価における経年変化の把握が難しい、所属長間の評価基準にバラつきがあるといった課題も感じていました。そこでシステムによる業務改善を図るため、複数のシステムを比較検討した結果、人材育成支援システム『ざいなる』を選定。令和4年度から運用を開始しています。
「人材育成につなげる」という、評価本来の役割も果たしたい
―選定の決め手はなんでしたか。
大塚 全職員が使うシステムであるため、使いやすさは重視しました。『ざいなる』は、直感的に扱える操作性に加え、パラメータ設定によるレイアウト調整機能によって、従来の評価シートを踏襲するかたちで運用することができます。また、面談記録機能は、印象論に左右されない、事実に基づく公平公正な評価を担保するうえで有効だと感じました。そのほか、評価の甘辛判定機能や進捗管理機能も、業務改善に資すると判断しました。
籾井 実際に、導入後は集計作業の自動化によって担当職員の負担は大きく軽減され、人為的ミスもなくなりました。さらに、導入後の充実した研修・サポートによって、現場の人事評価に対する深い理解を促し、制度自体の運用改善にもつながっていると感じています。評価の経年変化も見られるようになったので、「その先の人材育成につなげる」という人事評価本来の役割も果たせるようになると期待しています。
システム化による業務改善で、人事評価を能力開発へとつなげよ
ICTコンストラクション株式会社
内部情報ソリューション部 HRソリューション課
牟田 あかりむた あかり
平成11年、福岡県生まれ。令和4年10月よりICTコンストラクション株式会社に所属し、人材育成支援システム『ざいなる』の開発に従事。
―人事評価をめぐる自治体の課題はなんでしょう。
いまも表計算ソフトや紙を使った運用を続けている自治体は多く、集計作業に膨大な時間と手間を要していることです。その結果、人事担当職員の業務負担という課題だけでなく、評価結果を将来の能力開発に活かすといった、本来重視されるべき運用まで手が回らないという課題も見られます。そこで当社では、人材育成支援システム『ざいなる』の導入による人事評価の業務改善を提案しています。
―どのようなシステムですか。
人事評価にまつわる集計や分析といった作業を自動化し、業務負担を軽減するだけでなく、その後の人材育成にもつなげることを支援するシステムです。たとえば、「キャリアマップ機能」では、職種や職位によって必要とされるスキルや資格などを自治体ごとに設定でき、不足する能力を伸ばす手助けができます。また、組織全体で新人の目標を管理し、能力向上を支援する「新人育成機能」も実装しています。そのほか、操作性や視認性の向上にも力を入れており、項目などのインターフェース調整が可能なことや、各自治体が使いやすいよう、システム化以前のレイアウトに近づけたかたちに設定できる点も特徴です。こうした特徴が評価され、すでに多くの自治体に導入が進んでいます。
―今後の自治体への支援方針を聞かせてください。
『ざいなる』では、年2回のバージョンアップの際に利用者の声を反映しており、今後も時流に合わせた新機能を随時追加していきます。ぜひお問い合わせください。