※下記は自治体通信 Vol.54(2023年12月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
森林内の植生状況などを調べる「森林調査」。地域に森林資源を抱える自治体にとって、防災や林業活性化の観点で大切な取り組みの一つだ。しかし、人が森林に立ち入る調査には、大きな労力がかかるといった課題が指摘される。そうしたなか、ドローンの運用支援を手がけるJDRONEの黒木氏は、「ポイントを押さえれば、ドローンの活用によってそのような課題を解決できる」と話す。そのポイントとはなにか。同社の久下氏を交えて聞いた。
株式会社JDRONE
第1サービス部 技術サービスグループ チームリーダー
黒木 圭介くろき けいすけ
平成6年、茨城県生まれ。平成25年、測量コンサルティング企業に入社。各種測量業務およびドローンによる地形測量業務に従事。令和2年、株式会社JDRONEに入社。同年より現職。おもに官公庁・自治体向けドローン運用サービスの提供、教育研修講師を担う。
株式会社JDRONE
第2サービス部 技術サービスグループ 測量士
久下 義矩くげ よしのり
平成6年、沖縄県生まれ。平成29年に千葉工業大学を卒業後、測量調査会社に入社。地上測量業務に従事。令和2年、株式会社JDRONEに入社し、同年より現職。おもにドローンで取得したデータの解析業務を担う。
1haの森林調査は、3人で1日がかりの作業
―森林調査をめぐる自治体の動きをどのように見ていますか。
久下 森林の植生が時間の経過に伴い変化していくのを受け、森林調査の必要性を認識する自治体が増えていると感じています。たとえば、多くの森林では林業従事者の減少を背景に樹木が適切に手入れされない状態が続き、土砂災害のリスクが高まっています。その対策となる間伐や保全の準備作業として、森林調査を検討する自治体が増えています。さらに最近では、「森林環境譲与税」の使途となる、森林の整備や木材利用の促進などを行うに当たり、まずは森林資源の現状を把握しようと調査を検討するケースも出てきました。
黒木 しかしそうしたなかで、森林調査の実施に課題を感じている自治体も少なくありません。調査員が現場に立ち入る「実地踏査」の場合、労力や時間がかかるうえ、傾斜地であれば転倒や滑落などの危険があるからです。そこで当社がおすすめしているのが、ドローンを活用した森林調査です。ドローンを活用すれば、実地踏査に付随する課題を解決できるとともに、よりスピーディな調査を行えます。
―具体的に聞かせてください。
黒木 たとえば実地踏査の場合、調査員3人が1日かけて調査できる森林面積は1ha程度です。これがドローンであれば、わずか1台の機体で1日20haを調査できます。空撮には、航空機をチャーターするという方法もありますが、調査対象となる森林の面積が数十ha程度であれば、ドローンのほうが大幅に低いコストで調査を行えます。
関連法令の整備により、ドローンの活用シーンは拡大
―調査はどのくらいの精度で行えるのでしょう。
黒木 樹高や森林面積などは、誤差数cm程度という高精度で測量できます。当社では、ドローンによる空撮をもとに分析した木材の体積「材積」と、現地で通常よりも仔細に測量した数値を比較したことがあります。その際の誤差は10%以内で、林業関係者からは「一般的な実地踏査よりも精度が高く、データとして十分に信頼できる水準だ」という評価を得ています。このほか、ドローンによる空撮で得たデータを解析することで、林分*構造や枯損木(こそんぼく)*の有無なども把握することができます。
久下 ただし、ドローンを活用する森林調査は単に機材を揃えれば十分というものではありません。空撮画像をもとに、「そこにどのような樹木が何本生えているのか」「材積はどれほどあるのか」といった分析を行えることこそが重要なのです。そこで当社では、ドローンと測量それぞれの専門技術を有する社員が、森林の空撮から測量・分析までを一気通貫で支援します。実際に当社ではこれまで、樹木病害の実態調査や、下層木の植生調査、森林資源データの再収集・デジタル化といった多様な森林調査で、多くの自治体を支援してきた実績があります。
―自治体に対する今後の支援方針を聞かせてください。
黒木 ここにきて、ドローンの運用にまつわる法令や規制の整備が急速に進んでおり、ドローンの活用シーンは拡大しています。そうしたなかで当社は、空撮支援や機体のカスタマイズ、人材育成など、ドローンに関するあらゆる取り組みを支援していきます。関心のある自治体のみなさんは、まずは気軽にお声がけください。
*林分 : 樹種や樹齢、生育状態などがほぼ一様で、隣接するほかの森林から区別される森林
*枯損木 : 気候や病虫害などの原因により、枯れたり損傷したりしている木