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連載企画 「自治体における広報動画の可能性 第二回」 Part1 / 識者の見解
先進事例2024.02.02
自治体が効果的に動画を活用する方法を専門家が提唱

多彩な情報発信ができる動画活用は、「自治体広報」の質を洗練させる好機

[提供] ByteDance株式会社 / TikTok Japan
多彩な情報発信ができる動画活用は、「自治体広報」の質を洗練させる好機
この記事の配信元
ByteDance株式会社 / TikTok Japan
ByteDance株式会社 / TikTok Japan

※下記は自治体通信 Vol.55(2024年1月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

地域の魅力を伝える広報・プロモーションは、自治体の重要業務のひとつであり、近年はWebサイトやSNSなど、さまざまなツールを使った施策が行われている。そうしたなか、特に注目を集めているのが動画の活用である。そこで『自治体通信』では、自治体の広報動画活用の可能性を探る連載記事を企画した。第2回目の前半パートでは情報社会学に精通し、複数の官公庁にて情報アドバイザーを務めている武蔵大学教授の庄司氏を取材。インターネットを通じた動画が社会に及ぼす影響や、自治体が動画を効果的に活用するための方策などを聞いた。

インタビュー
庄司 昌彦
武蔵大学
社会学部 メディア社会学科 教授
庄司 昌彦しょうじ まさひこ
昭和51年生まれ。中央大学大学院総合政策研究科博士前期課程修了、修士(総合政策)。おもな研究領域は情報社会学、情報通信政策。平成14年に国際大学GLOCOM研究員、平成31年に武蔵大学社会学部教授に就任する。

個々の生活に密着した動画は、気軽に情報を得られる存在に

―近年、インターネットを通じた動画は社会にどのような影響を及ぼしているでしょう。

 特にソーシャルメディアを活用した動画が、人を惹きつける強力な情報発信ツールとして台頭しています。そもそも動画は、文字だけで伝えるよりも人々の興味や関心をひきやすいうえに、スマホが普及したことで、気軽に情報を得られる存在になっています。実際、総務省「令和5年版 情報通信白書」によると、日本におけるソーシャルメディアの利用者数*は令和4年では1億200万人、予測値で令和9年に1億1,300万人とされています。また、日本の動画配信市場規模は令和4年で5,305億円、予測値で令和9年には7,487億円とされているのです。

 加えて近年は、ショート動画が好まれる風潮にあります。インターネット上では数多の情報があふれているので、視聴者は短時間で情報を得たいというわけです。消費者庁「令和4年度消費者意識基本調査」でも、約36%の人が費やした時間に対する成果、いわゆるタイムパフォーマンスを重視することがわかっています。

―動画を、自治体が効果的に活用するにはどうすればいいですか。

 できるだけ情報を絞り、わかりやすく情報を伝える工夫が必要でしょう。特に自治体は何かを発信する際、正確性を重視するために必要な情報をすべて盛り込む傾向にあると思います。しかし、それではそもそもショート動画内に収まらないでしょう。そこで、「まずはこのキーワードだけを覚えてほしい」といったピンポイントな目的のもと、視覚や聴覚へシンプルにメッセージとして訴えかけるのが効果的です。そうしないと、それこそインターネット上で大量の動画が視聴できるなか、埋もれてしまいかねません。

*ソーシャルメディアの利用者数 : ソーシャルメディアサイトやアプリケーションを月1回以上利用する人の数(アカウントの有無は問わない)を指す

可能性を秘めた動画を、活用しない手はない

―しかし、具体的なノウハウを持つ自治体は少ないと思います。

 その場合、実際にショート動画を発信している経験者から学ぶといったことをおすすめします。たとえば、地元の若者やクリエイターと協働するのもいいでしょう。私は実際に自治体と動画クリエイターが協働したショート動画を観たことがあるのですが、スマホを放り投げて空中で撮影する動画で「そんな方法があるのか」と感心した覚えがあります。地元に愛着や誇りを持つ人たちと、動画を通じて地域の魅力を発信する。そうした、地域参加型の広報・プロモーションが文化として根づけば、地域活性化にもつながるでしょう。

―自治体に対して、動画活用のアドバイスをお願いします。

 より多くの人に情報を伝えられる可能性を秘めた動画を、自治体が活用しない手はありません。広報誌やHPなどの既存メディアとうまく連携させれば、より効果的な情報発信が行えるでしょう。

 私は、動画の活用は「自治体広報」の質を洗練させる好機だととらえています。文字だけでなく、映像や音楽を使って多彩な情報発信ができる動画は、工夫する余地がいくらでもあるからです。ぜひ動画を効果的に活用してほしいです。

「自治体における広報動画の可能性 第二回」 Part2 / 特別鼎談
ショート動画のほかにライブ配信も効果的に利用
コロナ禍で始まった動画活用の波は、さまざまな目的に拡がりつつある

ここまでは、武蔵大学教授の庄司氏を取材し、自治体が動画を効果的に活用するための方策などを探った。このページでは、広報・プロモーションのスペシャリストとして杉並区(東京都)の広報専門監を務めている谷氏と、動画配信プラットフォームのなかでもTikTokを効果的に活用している広島県の藤井氏、浪江町(福島県)の及川氏を取材。谷氏には自治体が動画を活用するうえで心がけるべきことを、藤井氏と及川氏にはTikTokを活用した広報・プロモーションの事例などを聞いた。

[杉並区] ■人口:57万2,997人(令和5年12月1日現在) ■世帯数:32万9,649世帯(令和5年12月1日現在) ■予算規模:3,270億4,745万7,000円(令和5年度当初) ■面積:34.06km² ■概要:東京都23区の西側に位置し、東は中野区、渋谷区、西は三鷹市、武蔵野市、南は世田谷区、北は練馬区と接している。妙正寺川、善福寺川、神田川の3つの川が流れ、都会にありながら、緑と自然豊かな景観が残されている。国内のアニメ制作会社が集積していることから、「東京工芸大学 杉並アニメーションミュージアム」にてアニメのイベントなどが開催されている。
[広島県] ■人口:273万8,401人(令和5年11月1日現在) ■世帯数:125万3,831世帯(令和5年10月1日現在) ■予算規模:1兆7,526億6,426万2,000円(令和5年度当初) ■面積:8,479.22km² ■概要:中国地方のほぼ中央に位置し、北部には中国山地があり、南部は瀬戸内海に面する。日本の地理的特徴である山、海、谷、川、盆地、平野などがすべて揃うことから「日本の縮図」とも呼ばれ、レモンや牡蠣など、豊かな自然を活かした農業・漁業が盛んなだけでなく、商工業も発達している。また、2つの世界遺産「原爆ドーム」「厳島神社」などを有し、国内外から多くの人が訪れている。
[浪江町] ■人口:1万5,206人/居住人口は2,130人(令和5年11月末現在) ■世帯数:6,661世帯/居住世帯数は1,336世帯(令和5年11月末現在) ■予算規模:405億470万3,000円(令和5年度当初) ■面積:223.14km² ■概要:福島県の沿岸部である浜通りのほぼ中央に位置し、山、川、海と豊かな自然に恵まれている。JR常磐線・常磐自動車道が縦断し、東京や仙台からのアクセスも良好。東日本大震災と福島第一原子力発電所の事故による全町避難で一度は賑わいを失ったが、一部地域で避難指示が解除され、現在では商店や漁港、学校などが再開している。
インタビュー
谷 浩明
杉並区
広報専門監
谷 浩明たに ひろあき
インタビュー
藤井 房子
広島県
総務局 広報課 県政コミュニケーショングループ グループリーダー
藤井 房子ふじい ふさこ
インタビュー
及川 里美
浪江町
企画財政課 情報統計係
及川 里美おいかわ さとみ

住民と自治体の環境変化が、動画の活用を促進

―広報・プロモーションに動画を活用する自治体は増えていますか。

 増えている印象です。理由として、コロナ禍による住民と自治体の環境変化があげられます。住民は在宅時間の長期化で、インターネットを通じた動画視聴の時間が増え、視聴することが定着しつつあります。総務省のデータ*では、「オンデマンド型の動画共有サービス」の利用率が全年代で88.5%と高い数値を表しています。一方の自治体は、観光・シティプロモーション分野にとどまっていた動画の活用シーンが、住民との対面コミュニケーションが難しくなったことで、説明責任や既存イベントのオンライン配信など多様化。結果、動画の有用性は高まり、活用の波はさまざまな目的に拡がりつつあるのではないでしょうか。

藤井 それは現場でも実感しています。当県がTikTokを利用し始めたのはコロナ禍がきっかけです。感染拡大期における県の情報を、特にTikTokのユーザーが多い若い人向けにわかりやすく発信するのが目的でした。

及川 当町がTikTokを活用し始めたのは、東日本大震災で大打撃を受けた浪江町のマイナスイメージを、若い人に払拭してもらうのが目的でしたが、特にコロナ禍にあっては効果的だったと思います。

*総務省のデータ : 総務省情報通信政策研究所「令和4年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査

―自治体が動画を活用するうえで心がけるべきことはなんでしょう。

 大きく3つあると考えています。1つ目は、自治体からの一方的な情報発信ではなく、広聴活動などを通じて視聴者ニーズを把握しているか。いくら動画を制作しても、視聴者の興味を得られ、視聴されなければ意味がありません。ただし、動画をアーカイブにすることが説明責任・情報公開の役目を果たす意味もあるので一概に言えない部分もあります。2つ目は、誰に向けてどのように行動変容してほしいかを事前に考えているか。そうすれば、どんなコンテンツにするかも明確になります。3つ目は、継続的にノウハウを蓄積・維持できる体制を構築しているか。自治体には定期的に異動があるため、動画制作の質を属人化させない仕組みが必要だと思います。

藤井 当県も、誰に向けてメッセージを伝え、どんな行動変容をしてほしいかはつねに意識して動画制作を行っていますね。

及川 ノウハウを維持することは、動画を継続的に活用するためには必要な視点だと思います。

住民・クリエイターの協力や、リアルタイムの情報発信も

―動画の活用事例を具体的に教えてください。

藤井 最近注力しているTikTokを例にあげますと、コロナ禍における情報発信からスタートし、さまざまな目的で活用しています。たとえば、ローカル線のプロモーション。利用者数の減少で存続が危ぶまれている「芸備線」をPRするショート動画では、広島県に移住し、当県を非常に愛していただいている元東京キー局アナウンサーに乗車してもらい、路線の魅力を伝える内容にしました。また、本業を持ちつつ広島県の民俗芸能である「神楽」の演者もされている県民の方々に、実際に舞ってもらって神楽を紹介するショート動画も制作しました。このように、地元の方々に協力していただいて動画制作する機会が増えていますね。

 さらにTikTokにおいては、ショート動画制作にとどまらない活用をしています。

―どのような活用ですか。

藤井 ライブ配信による情報発信です。広島では毎年8月6日に平和記念式典が開催されていますが、3年前からTikTok LIVEによる配信を行っており、たくさんの方々に視聴いただいています。リアルタイムに式典の様子を届けることで、県民以外の人にも改めて平和を考えるきっかけになればと考えています。

―浪江町ではどのように動画を活用しているのでしょう。

及川 当町もTikTokの事例で言いますと、浪江町のご当地キャラ「うけどん」を登場させて、地元のおすすめスポットやイベントなどをショート動画で紹介しています。また、東日本大震災を語り継ぐため、福島県内で唯一の震災遺構である浪江町立請戸小学校を紹介するショート動画も制作しました。

 さらに、当町もライブ配信を活用しています。令和4年は明治6年からの「市」を起源とする「十日市祭」に、令和5年は地元青年団体主催の「標葉祭り」に、動画クリエイターの「みいるか」さんに来ていただき、ライブ配信をしてもらいました。結果、町の公式アカウントのフォロワー数が増え、「被災地である浪江町のイメージが変わった」など、若い人のコメントなどが届きました。

キーワードに加え、「誰が伝えるか」へのこだわり

―谷さんは広島県と浪江町の取り組みをどう見ていますか。

 たとえば、広島県の取り組みには「鉄道」「伝統芸能」「平和」、浪江町には「復興」「ご当地キャラ」と視聴者の共感を得やすいキーワードが込められていますよね。加えて、どちらも「誰が伝えるか」などにもこだわっています。杉並区では、動画と広報誌というデジタルとアナログを連動させた広報活動を行っていますが、2自治体の取り組みは当区も含め、大いに各自治体のみなさんの参考になるのではと思いました。

藤井 ありがとうございます。今後もわかりやすい情報発信に努めつつ、なにより心を込めて動画を制作していきたいですね。

及川 今後はオリジナルのエフェクトやダンスなど、視聴者が浪江町に関することを投稿したくなる仕組みをつくりたいですね。そうすることで、視聴者全体を巻き込んだPRをしていきたいです。

支援企業の視点
フォロワー数にかかわらず、拡散されやすい仕組みがカギに
インタビュー
笠原 一英
TikTok Japan(ByteDance株式会社)
公共政策本部 政策渉外担当部長
笠原 一英かさはら かずひで
大学を卒業後、独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO)に入構。令和元年、TikTok Japanに参画。地方自治体をはじめとする公的機関とともに、ショートムービーを通じた公民連携を推進している。

―自治体が広報・プロモーションに動画を活用することには、どのような有用性がありますか。

 これまで自治体では「文字」での情報発信が多かったと思いますが、動画であれば文字だけでは伝わりづらい内容を直感的に伝えられます。さらにショート動画であれば、より短時間でわかりやすく伝えることが可能です。当社が運営しているTikTokは、現在約30の公的機関や自治体が公式アカウントを開設しているほか、当社と連携したショート動画に関するプロジェクトを100以上実施しています。

―どのような点が評価されているのでしょう。

 フォロワー数にかかわらず、動画が拡散される点です。たとえば、各ユーザーの趣味・嗜好を分析し、それぞれが関心を持ちそうな動画を「おすすめフィード」に表示することでユーザーの視聴を促進します。一方、ユーザーの関心とは異なるテーマの動画も一定数表示させる仕組みも備わっており、「おすすめフィード」を通じて新たなテーマへの「関心づくり」の機会を設けています。

―自治体に対する今後の支援方針を教えてください。

 観光やシティプロモーションだけでなく、消費者トラブルを未然に防ぐ啓発や教員の魅力発信など、動画の利用目的が多岐にわたっています。今後も自治体のさまざまな政策課題をショート動画で解決していきたいと考えています。さらに、広島県や浪江町のように、「ライブストリーミング機能・TikTok LIVE」を活用した事例も増えています。興味のある自治体の方々は、ぜひご相談ください。

ByteDance株式会社 / TikTok Japan
ByteDance株式会社 / TikTok Japan
設立

平成28年8月

事業内容

ショートムービープラットフォームTikTokの運営、B2B製品の事業展開

URL

https://www.bytedance.com/ja/

サービスURL

https://www.tiktok.com/about?lang=ja-JP

お問い合わせ先
03-6258-0193(平日 10:00〜17:00)
jpn_gr@bytedance.com
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