※下記は自治体通信 Vol.59(2024年7月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
行政手続きのDX推進において、職員の業務負担軽減はもとより、住民の利便性をいかに向上させるかという視点は欠かせない。その際、すでに住民に広く浸透したツールの活用は、有力な方法論として注目されている。たとえば登米市(宮城県)では、粗大ごみの収集サービスの受け付けをオンライン化するにあたり、SNSのLINEを活用し、成果をあげているという。取り組みの詳細について、同市の2人の担当者に、話を聞いた。
[登米市] ■人口:7万2,470人(令和6年6月末現在) ■世帯数:2万7,182世帯(令和6年6月末現在) ■予算規模:861億4,100万円(令和6年度当初) ■面積:536.09km² ■概要:宮城県の北東部に位置する。西部は丘陵地帯、東北部は山間地帯で、その間は広大で平坦肥沃な登米耕土を形成する。県内有数の穀倉地帯であり、宮城米「ササニシキ、ひとめぼれ」の主産地として有名。北西部には白鳥やガンなどが飛来するラムサール条約湿地の伊豆沼・内沼、長沼、さらに南部には平筒沼があり、水の里としての様相を呈している。
平日昼に電話でのみ受け付け、住民から「不便だ」との声が
―行政手続きにLINEを活用し始めた経緯を教えてください。
半澤 昨年度、当市でも「DX推進室」が発足し、庁内各所で業務改善が進む中で、当クリーンセンターでのテーマに浮上したのが「粗大ごみ収集の受付業務」の改善でした。それまでは平日の昼間のみ、しかも電話でしか受け付けできていなかったので、住民からはたびたび「不便だ」との声を受けていました。その改善策を議論していた過程で、昨年9月に紹介されたのが、『KANAMETO ECO』というLINE拡張ツールでした。
―どのようなツールなのですか。
高橋 粗大ごみ収集の申し込み手続きを、「LINE公式アカウント」上で完結できるようにするツールです。ごみ品目ごとに処理手数料を登録すれば、品目・点数に応じて自動で計算してくれます。利用者は、特別なアプリは不要で、普段使っているLINEから24時間365日申し込みができ、収集日が近づくとリマインドメッセージを受けられる機能もあります。職員にとっての業務効率化の効果も大きいだろうと判断し、『KANAMETO ECO』の導入を決め、今年3月に運用を始めました。
土日や深夜を中心に30%超がLINEで申込
―導入効果はいかがですか。
高橋 5月中旬までの総申込件数104件のうち、33件がLINEからのものでした。当初の想定である20%を上回る利用実績は、普段使い慣れたLINEだからこその成果だと思います。その利用の多くが土日や深夜といった従来の受付時間外の利用であることから、住民の利便性が高まっている手応えを感じています。LINEを通じた申し込みについて、「使い方がわからない」といった問い合わせも受けていません。
半澤 また、導入によって職員の業務負担も大きく軽減されました。
―詳しく聞かせてください。
半澤 煩雑な電話対応が減ったことに加え、申込情報が電子データで取得できるので、従来、手作業で行っていた回収業者への依頼書作成といった事務も効率化されています。当市の要望で粗大ごみの写真を添付できる機能も新たに実装された結果、事前に収集物の内容を正確に把握できるようにもなりました。
高橋 今回の粗大ごみ収集申し込みのオンライン化を通じては、住民とのコミュニケーションにLINEを活用することの有効性を改めて実感しています。この6月からは『KANAMETO』というLINE拡張ツールを導入しているのですが、これによって多くの手続きをLINEからオンライン上で完結できる体制を整え、住民の利便性向上をさらに追求していく方針です。
「粗大ごみ収集」の専用ツールで、オンライン化の遅れを取り戻せ
transcosmos online communications株式会社
代表取締役社長
貝塚 洋かいづか ひろし
昭和63年、トランスコスモス株式会社に入社。海外事業本部副本部長などを歴任し、現在、同社の取締役副社長執行役員。平成28年、transcosmos online communications株式会社の設立に伴い、同社の代表取締役社長に就任。
―粗大ごみの収集をめぐる自治体の課題をどう見ていますか。
電子申請が各方面で普及する中、多くの自治体の共通課題である粗大ごみ収集についてはぽっかりと穴が空き、対応が遅れている印象です。オンライン化のニーズは高いものの、各自治体でのルールの多様性がその障害になっているようです。そこで当社は、この粗大ごみ収集に特化したLINE拡張ツールとして『KANAMETO ECO』を開発し、導入を働きかけています。
―特徴を教えてください。
柔軟に機能追加を図れる拡張性は、大きな特徴の1つです。『KANAMETO ECO』は、現在までに約200自治体で導入が進む『KANAMETO』をベースとしており、多くの自治体からの要望をもとに機能の充実を図ってきました。オンライン決済機能や写真添付機能などはその一例です。オンライン決済機能は、利用を選択すれば、各種クレジットカードなどで決済までの一連の手続きをすべてLINE上で完結できます。
また『KANAMETO ECO』は、すでに他社のLINE拡張ツールを運用している場合でも、併用が可能です。各自治体の運用事情によらず、幅広く導入してもらえる設計となっています。
―今後の自治体への支援方針を聞かせてください。
当社では、『KANAMETO』や『KANAMETO ECO』の導入実績の増加に対応し、自治体へのサポート体制を積極的に充実させています。粗大ごみ収集のオンライン化は、導入直後から住民に利便性を感じてもらえます。ぜひお問い合わせください。