【防災・河川監視】防災×観光の両面で活用可能な、フェーズフリーの河川監視網を構築
(AI水位予測ソリューション / TOKAIケーブルネットワーク)


※下記は自治体通信 Vol.65(2025年4月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
昨今の風水害の多発化・激甚化を受け、各自治体は近隣の大規模河川はもとより、域内の中小規模河川に対しても監視体制を強化する必要に迫られている。そこでは、国・県・基礎自治体と管轄の異なる河川を域内で一体的に監視する体制の構築が課題となる。これに対して、三島市(静岡県)では、新たな「河川監視システム」を導入し、市内を縦横に流れる河川の水位監視体制を強化した。システム導入の経緯とその効果などについて、同市担当者2人に話を聞いた。


危険な目視による監視では、正確で迅速な判断が下せない
―河川監視に新たなシステムを導入した経緯を教えてください。
木本 当市は、富士山の伏流水がまちのいたるところに湧き出す地域であり、「水の都」と称して観光の目玉としています。それだけに水害リスクとも隣り合わせです。これまでは職員や水防団員が目視で監視していましたが、増水の際は危険を伴い、得られる情報も限られます。正確かつ迅速な状況判断を下すために、システムによる監視体制が必要と感じていました。
渡邉 また、監視対象には市が管理する準用河川のみならず、市内の一級河川や二級河川も含まれます。国や県が発表するデータも注視する必要がありますが、これまでそれらは別々のシステムで管理されていました。そのため新たなシステム構築に際しては、これらのデータを一元管理できる仕組みが必要と考えました。
―システム構築はどのように進めたのでしょう。
木本 まず、水との関係が密接な当市では、多くの課がさまざまな目的で河川情報を活用します。そのため、水に関するあらゆるデータを集約する基盤とすること。国や県が公開する河川情報も一元的に集約できる仕組みを構想しました。また、当市の場合、水は重要な観光資源であるため、河川情報を日常的に観光目的でも活用する「フェーズフリー」の考え方を実現したいと考えました。
その結果、当市では独自に「水DX」というコンセプトを打ち出し、新システムをその情報プラットフォームと位置づけることにしました。
渡邉 さらに、システム化を機に監視機能自体の強化を図り、「水位予測」の機能も必要と考えました。これらの要望をもとに、従来の「河川監視カメラ」の設置・運用を委託していたTOKAIケーブルネットワークにシステム構築を相談し、令和5年3月から運用を開始しています。
河川の水位・水質情報は、観光PRにも活用
―導入効果はいかがですか。
木本 市内43ヵ所に設置した監視カメラ、水位センサーなどの情報を一元的に集約できた効果は大きく、迅速な意思決定に役立てています。共通プラットフォームとして我々デジタル戦略課以外にも、土木課や危機管理課、水道課など各課が業務に有効活用できるようになりました。プラットフォームに集約した河川の水位状況や水質情報などは、「水DX」ページとして市のHPでリアルタイムに公開し、観光PRにも役立てています。
渡邉 一方、水位予測機能では、国土交通省の雨量計データと気象庁のナウキャスト、市の河川監視データをAIで分析し、6時間後と12時間後の水位予測を出し、市の避難行動の判断材料として活かせる体制が整っています。幸いなことに、水位予測機能をもとに避難勧告を発出した経験はまだありませんが、毎日の情報を蓄積することで、予測精度を日々高めており、非常時への備えとして安心感は大きく高まっています。


―域内の河川監視体制を強化すべき自治体には、現在どのような課題がありますか。
本来、的確かつ迅速に避難情報を発出するためには、地域の河川情報を一体的に収集・分析する必要があります。しかし、現在は国や県の河川監視情報と基礎自治体の情報は別々のシステムで運用されており、一体的な運用は難しいのが現実です。そこで当社では、これらの情報を一元管理する「河川監視システム」を開発し、多くの自治体に提案しています。
発生する水害に、県や市町村の境界は関係ありませんから、当社では近隣の自治体と河川監視情報を共有できる「防災プラットフォーム」の構築を志向しています。その際、カメラやセンサーで取得した映像を、光ファイバー網や無線通信網で収集するシステムをすべて自社の設備によって一気通貫に構築できるのが、当社の強みです。
―今後の自治体への支援方針を聞かせてください。
当社では、ケーブルテレビ事業者として培ってきた「映像」と「通信」の技術的知見に加え、今回のシステムで搭載した「AI技術」を組み合わせることで、三島市が導入した河川監視システムのほかに、新たな技術展開にも力を入れています。具体的には、AIを活用したイベントの混雑状況可視化や、駐車場の監視といった用途展開が考えられます。それらの開発成果は、7月に東京都内で開催される「自治体・公共Week」でお披露目予定ですので、河川監視システムとともに、関心のあるみなさんは、ぜひお立ち寄りください。

設立 | 平成24年4月 |
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資本金 | 10億円 |
売上高 | 139億9,349万4,000円(令和6年3月期) |
従業員数 | 258人(令和6年4月1日現在) |
事業内容 | 放送法による一般放送事業、放送施設のチャンネル貸与に関する業務、放送施設および電気通信設備の設計、施工および保守など |
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