―水害防止の取り組み状況を聞かせてください。
当市では、河川の水位上昇や降雨量をもとにした、避難情報の発令体制を整えてきました。市内には一級河川の加古川が流れ、国が設けた7ヵ所の水位観測所で水位を監視しています。被害の発生や拡大を防ぐには、避難情報を的確かつ迅速に発令できるよう、気象情報のタイムリーな収集が重要。そういった点では、加古川の水位観測所から情報は収集できています。
しかし、それだけでは十分ではないことを思い知らされました。平成16年に台風が連続で上陸した際、避難情報発令前に加古川の支流の粟生(あお)川で、過去に例をみない速度で浸水被害が発生したのです。
―それはどうしてですか。
粟生川の水位上昇が予想以上に急激だったからです。加古川などの大規模河川には、国が予算をかけて水位観測所を設けていますが、小規模河川の粟生川にはそれがありません。そのため、長時間の大雨の場合、市の職員が現地で水位を目視確認していました。しかし、当時は連続で上陸した台風の影響で、川幅が狭い粟生川の水位はみるみるうちに上昇したのです。
被災後、粟生川には国が樋ひ門もんを設置し、当市は地元住民とともに巡視体制を強化。しかし、近年の気候変動で雨の降り方が激しくなり、気象状況の変化に対応する新たな対策の必要性を感じました。
―新たな対策とはどのようなものでしょう。
いままで手つかずだった中小河川も、センサ機器などの監視対象にくわえることです。具体的には、粟生川に水位計測システムを導入し、水位をリアルタイムに把握するようにしました。水位計測システムは、国の水位観測所のように大規模な設備ではなく、水位を正確に観測できる必要最低限の設備を検討しました。なぜなら、1ヵ所にコストをかけるのではなく、市内の小規模河川の水位を網羅的に把握することが、水害を効果的に防ぐうえで肝要だからです。
水位計測システムにはある民間企業の製品を選びました。市内に網羅的に設置できる安価なシステム設計にくわえ、同社は長年、エネルギーインフラなどの計測データを管理している実績があり、安定運用が期待できると評価したからです。
機動的な対応で災害発生リスクに先手を打つ
―システムの導入で災害対策はどのように変わりましたか。
臨機応変な災害対策ができています。先日も、庁舎付近が強い雨に見舞われ、粟生川の氾濫が懸念されましたが、水位計測システムでいち早く「安全水位」と確認できました。そのおかげで、災害対策本部にいながら粟生川の水位と水位変動を把握でき、先を見越した災害対応・職員配置が行えました。この水位情報は、周辺住民にも直接確認できるよう登録してもらい、「自助」「共助」による地域防災の充実も期待しています。
―今後の水害対策に向けた方針を聞かせてください。
約半年の運用でシステムの有用性を確認できたので、ほかに2ヵ所の河川にも追加導入する予定です。当市の行政方針のひとつに「先手管理」があります。今後も先手を打った水害対策で、安全安心なまちづくりに努めます。