一般社団法人 日本CATV技術協会(本社:東京都新宿、理事長:中村俊一、以下日本CATV技術協会)は、地域課題解決に向けた技術やアイデアなどが欲しい地方公共団体やケーブルテレビ事業者を集め、ソリューションやノウハウなどの解決策を出展者が提供する展示会イベント「ケーブル技術ショー2024」を開催いたします。
地域密着の情報通信インフラとして、地方公共団体と繋がりが深いケーブルテレビでは、地域に根差した事業者として、地方公共団体や民間企業と連携し、自治体DXや地方創生、スマートシティの取り組みなどを積極的に進めております。
本記事では、ケーブルテレビ事業者が地域課題解決に貢献する具体的な事例を紹介し、地方創生・自治体DXを加速させるケーブルテレビの可能性を探ります。
総務省・国交省も期待
人口減少や高齢化など全国共通の地域課題を解決する方法として、地域DXが期待されています。しかし、それを実現するのは容易ではありません。地域住民のニーズと提供されるサービスの不一致、行政区分や役所内セクションの壁など、乗り越えなければならない課題が多いからです。
この問題に対して、地元のケーブルテレビ事業者と連携して克服している自治体が全国で増え始めています。ケーブルテレビは通信やデジタルの技術力を持っているだけでなく、地域で行政や企業などとの信頼関係を確立しています。このケーブルテレビの強みを活かして、住民にとって役立つ地域DXを実現しているのです。
飯嶋威夫・総務省 情報流通行政局衛星・地域放送課長(2023年9月27日の取材当時。現 内閣官房 デジタル行財政改革準備室 参事官)は、「地域DXはすべての自治体に必要とされています。今後自治体の人口が減少し、その地域の担い手の数が減っていく中で、どのように地域を効率的に運営していくかが大きな課題になっています。自治体はDXに取り組んでいかなければ行政や地域の生活が維持できなくなってくるという危機感を持っています。しかし地域DXをどのように実施すればよいのかわからない自治体も多いのが現状です。自治体や地元企業にデジタル人材が不足している地域も少なくありません。
そこで期待されるのは、ケーブルテレビ事業者が地域のデジタル化を進めていく旗振り役を担うことです。ケーブルテレビ事業者はこれまでの経験を活かして地域DXの相談相手になったり、自治体へのコンサル、地域のデジタル人材の供給などをすることが可能です。ケーブルテレビ事業者は、地域DXに詳しいオーガナイザーやプロデューサー的な役割を果たすことができます」(『月刊ニューメディア』2023年11月号より)と、地域DXにおけるケーブルテレビの役割と期待を語っています。
ケーブルテレビも業界を挙げて地域DXで役割を果たそうとしています。加藤典裕・一般社団法人日本ケーブルテレビ連盟 地域ビジネス推進タスクフォース 委員長(株式会社中海テレビ放送 代表取締役社長)は、「これからの国のあるべき姿の中心にケーブルテレビはなり得ると思っています。この点を国も認識するようになってきているようです。2023年7月、国土交通省が中心となってまとめた国土形成計画が閣議決定されました。この計画では、地域生活圏がキーワードの一つになっており、地域生活圏の推進主体・体制として、官だけでは担いきれないところを『共』が支えるという官民パートナーシップの重要性が述べられています。
同計画には、『我が国の地方の先進的な取り組みを参考に、日本版のいわゆるローカルマネジメント法人といった推進主体の創出につなげていく必要』があるとして(中略)います。ケーブルテレビはそのような地域の取り組みを支えるローカルマネジメント法人になることが可能なのです。ケーブルテレビ事業者は地域経済圏の推進主体となるローカルマネジメント法人となるポテンシャルを持っているわけです」(『月刊ニューメディア』2024年2月号より)と述べています。
大規模スマートシティを実現:三重県四日市市、富山県射水市
ケーブルテレビが自治体と連携して地域DXを推進している事例をいくつか見ていきましょう。
三重県四日市市のスマートシティプロジェクトでは、地元ケーブルテレビのCTYが、通信インフラ整備を担当しています。このスマートシティは四日市の中心市街地や隣接する四日市港などにもおよぶ大規模なプロジェクトで、交通インフラ整備などと併せて進められています。近鉄四日市駅からJR四日市駅に通じるメインストリートに沿った長さ1.6kmのエリアにローカル5Gや地域BWA、Wi-Fiなどの無線インフラを整備するというもので、ローカル5Gを公道上で面的に整備するのは全国初です(筆者調べ)。ローカル5Gなど無線を使った通信サービスとしては、多様なセンサーで自動車や人流などの交通データ、環境データを収集し、解析して活用したり、自動運転バスに使用したりすることを構想しています。
森 智広・四日市市長は、ケーブルテレビに対する大きな期待を語っています。「CTYには四日市のスマートシティの実行計画を推進していく協議会の幹事会員として名を連ねてもらっている。本市のスマート化を進めていく当事者であるCTYに、ローカル5Gを整備してもらうことには非常に大きな意義がある。何をやっていけば市民サービスの向上につながっていくのか、ともに考えていくパートナーでありたい。四日市市はローカル5Gなどの通信ネットワークをしっかり活用し、全国の見本となれるようなまちづくりを進めていく。CTYには大きな期待をしている」(『月刊ニューメディア』2023年10月号より)。
富山県射水市は射水ケーブルネットワークから多数の無線(LPWA)機器を活用したIoTサービスの提供を受けており、その規模を年々拡大させています。2019年の開始当初は積雪深、除雪車履歴など3サービス・センサー21 個でしたが、翌年には水位・雨量計測サービスなどを追加し8サービス・センサー56個、3年目には海洋環境監視、イノシシ罠監視、アンダーパス監視などを追加し10サービス・センサー80個に拡張。4年目には主要イベントの人数計測などさらにサービスの種類が増えて13サービスを提供。市内の公立保育園の全保育室、給食室には温湿度センサーを約130個導入するなど、使用するセンサーの数は合計228個に急増しました。このように継続的にサービスの種類や導入件数が増え続けているのは、前年度の導入効果が実証された結果、同市が次年度にはさらにセンサーを追加した予算を付けているからです。
“行政の壁”を乗り越えた連携で役割:静岡県三島市、愛媛県新居浜市・西条市
地域課題を解決し、住民のニーズに応える地域DXを実現するためには、行政区分や市役所内部署など“行政の壁”を乗り越えた連携体制も必要です。静岡県三島市にはTOKAIケーブルネットワークが河川監視や水資源のPRなど水関連の総合的な地域DXサービスを提供しています。デジタル田園都市国家構想交付金を獲得したプロジェクトです。河川監視は同社が免許を持っている地域BWAで河川の監視カメラ映像と水位のセンシングデータを伝送し、Webサイトなどで映像と水位情報を提供しています。現在の水位などの状況だけでなく、AIを活用した水位変化の予測サービスも提供。インバウンドを対象にしたサービスでは、富士山をバックにした川のある公園の映像、三島市の水資源をPRしています。
この地域DXの最大の特長は、市役所内の縦割り行政を超え、各部署を横断する形で三島市の総合的な水DXを実現している点です。これらのサービスは、管轄する市役所の部署がそれぞれ異なります。準用河川や内水の水位監視は土木課、監視カメラは危機管理課、インバウンド向けサービスは「みどりと水のまちづくり課」、水質情報は環境政策課といったように、水DXだけで市役所内の7つの部署に管轄が分れています。さらに1級河川の監視は国、2 級河川は県が管轄しています。各部署にそれぞれ政策目標があり、調整は容易ではありません。
同社の担当者は、市役所で補助金を担当する企画政策課をはじめ、土木課など水DXの各サービスの管轄部署を行き来して、各部署間の調整や交渉を繰り返し、部署間連携を作り上げていきました。縦割り行政の壁を越えることができたのは、日頃、市役所の各部署と密接な関係と信頼を築いているケーブルテレビが調整役を担ったからです。
愛媛県新居浜市と西条市には、ケーブルテレビのハートネットワークが地域ポイントやMaaSなどの地域DXを提供しています。新居浜市と西条市の地域DXに関する協議会にそれぞれ参画している同社は、両市の地域DXの連携を実現する役割も期待されています。両市はほぼ同じ規模の自治体で、スムーズな連携は困難ですが、地域DXは隣接地域で連携させた方が運用効率やサービスが向上します。方針や政策の違いなどで連携が困難な両市の地域DXをつなげる役割は、両市で事業展開している同社が適任です。両市には、市の壁を越えた地域DXの連携が必要と考える職員もおり、同社が両市との連携を担うことへの期待を寄せています。同社は地域ポイントも連携させて市民が両市のポイントを使えるようにするなど、スケールメリットを活かせる両市の地域DX連携を目指して取り組みを進めています。
少子高齢化地域でも取り組みが進む:富山県魚津市、長野県伊那市
比較的小規模の自治体でも、ケーブルテレビと連携した地域DXが進行中です。富山県魚津市はかつて人口5万人を擁し地域の中心的な存在でしたが、現在では人口約3万9,000人に減少。2060年には人口が半減すると予想されています。人口減少、少子・高齢化に加え、特産品であるりんごや梨、ぶどうなどの果樹栽培の後継者不足、漁業従事者の後継者不足、医療費など、多くの課題に直面しています。これらの地域課題を解決するために進められている「魚津モデルスマートシティ」では、地元ケーブルテレビの新川インフォメーションセンターが大きな役割を果たしています。同社はスマートシティ推進に取り組む組織である魚津モデルスマートシティ構築推進協議会で、市の担当課(企画政策課未来戦略室)と協力して事務局を担っています。直面する課題に対するリサーチや、ソリューション案、補助事業採択の可能性を推進協議会と市に提案するなど、実現に向けて積極的に取り組んでいます。
長野県伊那市が伊那ケーブルテレビジョンと実施しているスマートシティでは、物流、交通、医療、安心の4分野のサービスを提供する取り組みを進めています。この物流サービスは少子高齢化による買い物弱者の増加という課題の解決を図っています。高齢者に親しみのあるテレビを使い、ユーザーは簡単なリモコン操作でケーブルテレビのコミュニティチャンネルの画面から買い物ができます。タクシーの予約などの交通サービスや、医療などのサービスもテレビを利用できます。同社は商品を出荷している地元スーパーなど地元企業との強い関係性、配達ボランティアなど地域の人たち、社会福祉協議会、地域の役員、地域支援員などとの強固な協力関係があり、生活に密着したサービスの提供に適しています。地域との結びつきがある同社は、個別訪問や地区の説明会など、小回りが利く対応も取れます。ケーブルテレビの特性が、少子高齢化が進行する自治体の地域DXに活かされている事例です。
岡井隼人・総務省 情報流通行政局 衛星・地域放送課長は、「ケーブルテレビ事業者の強みは、地域との強いつながり。若年層から高齢者まで幅広い年齢層へのアプローチが可能であり、地域DX推進の核として機能することが期待できます。総務省として、各ケーブルテレビ事業者がその地域に合ったサービス展開をしてもらえることは重要であり、その後押しはしっかりと行いたいと考えています」(『月刊ニューメディア』2024年2月号より)と、ケーブルテレビと自治体が連携した地域DXへの期待と支援への意思を示しています。
現在、全国で「自治体・ケーブルテレビ連携型」の地域DXの動きが拡がりつつあります。本連載記事では、その事例を自治体やケーブルテレビに取材し、レポートしていきます。
(続く)
※次回は3月18日(月)に掲載いたします。
プロフィール
『月刊ニューメディア』 編集長 渡辺 元
情報通信業界の変遷を第一線で取材してきたジャーナリスト。現在は、月刊ニューメディアの編集長として、情報通信政策やメディアビジネス、放送・通信技術などに関する最新情報を発信する一方、各種イベントでの講演活動などを通じて、情報通信業界の未来について提言。
地域課題解決に貢献する官民連携マッチングイベント・参加無料
ケーブルテレビ事業者は、地域密着型の強みを活かし、地方公共団体や民間企業と連携することで、地域創生・自治体DXを加速させています。
そこで、「ケーブル技術ショー2024」では、地域創生・自治体DXを推進する地方公共団体とケーブルテレビ事業者を結びつけるオンラインマッチングイベントを6月に開催いたします。
例えば、以下のテーマで、双方のニーズに合致したマッチングを行うことが可能です。
・高齢者向けサービス
・買い物支援サービス
・防災DX情報配信システム
・教育ICT
・スマートシティ
・その他、地域創生・自治体DXに関する課題
【こんな方におすすめ】
デジタル推進とか、いろいろ言われているが、予算の伝え方を含めて、アイデアが欲しいし、サポートが欲しい、伴走者が欲しいというお困りごとを抱えているような、地方公共団体で地域創生・自治体DXを担当されている方
【開催期間】
6月3日(月)~7月12日(金)
【参加申込締切】
2024年4月5日(金)
【参加申込】
申込専用フォームから参加登録を行い、地域共創・地域DXなどに関する課題やニーズを登録しますと、マッチングリストをお知らせいたします。
面談の相手は、面談候補者の中から、希望条件に合致した方を自由にお選びいただけます。
希望条件に合わない場合は、お断り可能です。
オンライン開催のため、出張申請や経費精算が不要であり、自席からでも参加可能です。
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