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アイヌ文化を始めとした多様性の尊重が道政の大事な基本的視点のひとつです

アイヌ文化を始めとした多様性の尊重が道政の大事な基本的視点のひとつです

北海道 の取り組み

「北海道命名150年」を迎え、さらなる発展をめざして取り組む国内外への戦略

アイヌ文化を始めとした多様性の尊重が道政の大事な基本的視点のひとつです

北海道知事 高橋 はるみ

豊かな自然や食などを武器に、積極的な観光施策に取り組んでいる北海道。とりわけ近年はインバウンドが好調で、2020年における訪日外国人来道者の目標数値を300万人から500万人に引き上げた。さらに今年は、「北海道命名150年」というメモリアルイヤーを迎えている。知事の高橋氏に、北海道ならではの取り組みを聞いた。

※下記は自治体通信 Vol.13(2018年6月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

アジアメインのPRが奏功

―高橋さんは「2020年をメドに訪日外国人来道者数を300万人にする」という公約を、大きく500万人に引き上げました。インバウンドが好調な要因はなんでしょう。

 近年、北海道への直行便が増えていることも要因のひとつですが、同時に私どもが道内外における民間の方々と連携し、中国・韓国を中心としたアジアに売り込みをした結果、北海道ブランドの人気が高まり、食の輸出とともにインバウンドが増えていると考えております。

 平成27年度の実績で、初めて200万人を突破。平成28年度は約230万人。そして昨年度は推計値ではありますが、約275万人まで増加することが見込まれています。これをさらに増やすため、2020年度に道内に13ある空港のうち、国、北海道、市と管理者が異なる7つの空港をまとめて民営化する予定で、全国的にも前例をみない取り組みです。新千歳空港に一極集中しがちな空港利用客の入り込み客数を、バランスよくするのも狙いです。

 また、空港まで来ていただいたお客さまに鉄道やバスなど、さまざまな手段で観光地まで行っていただく、二次交通の整備も地元の方々と連携しながら進めております。さらに、観光列車の運行に向け試験的な取り組みも進めています。

 くわえて、海外のメディアとともに、海外の著名なモデルやタレントを「ほっかいどうスマイルアンバサダー」として北海道にお呼びし、取材をしてもらって本国に発信していただくという試みも行っています。

―ほかに取り組んでいることはありますか。

 2020年4月には、アイヌ文化の復興などにかんするナショナルセンターとして『国立アイヌ民族博物館』が白老町に開設される予定です。菅義偉内閣官房長官が座長を務める「アイヌ政策推進会議」において、年間想定入り込み客数を100万人に設定することが決定しています。同年に東京オリンピック・パラリンピックを控えていることから、国そして道をあげてしっかり取り組んでいきたいと考えております。

道民の記憶に残る事業に

―今年は、「北海道」と命名されて150年。節目の年を迎えますが、こちらについて北海道ではどのように位置づけていますか。

 全国的には「明治維新150周年」ということで展開していると思いますが、私どもは「北海道命名150年」にこだわって発信をしていきたいと思っています。江戸時代末期、三重県出身の探検家である松浦武四郎さんが、当時の「蝦夷地」を調査し、多くの報告書や地図をまとめましたが、調査の際には、先住民族であるアイヌの人たちの協力をえて、寝食をともにするなかでアイヌ文化に深く触れ、その生活や文化を紹介することにも尽力されました。その武四郎さんの提案にもとづき、命名されたことから、武四郎さんは「北海道」の名づけ親と呼ばれています。

 北海道150年事業では、武四郎さんの想いを引き継いで、アイヌの人たちへの敬愛の気持ち、そしてお互いを認め合う共生の社会をめざしながら、150年のその先に向けて北海道がさらに輝き続ける地域をめざしていく、そのきっかけとなる事業にしたいと考えています。

 また、子どもたちを始め、道民の誰もが記憶に残るような、そういった一連の事業に取り組みたいと考えています。

―具体的にどのような取り組みを考えているのでしょう。

 ご存じのように北海道は非常に広大なため、14ブロックにわけて行政サービスを展開していますが、それぞれの地域で民間とも連携しながら道民の記憶に残る150年事業にしっかりと取り組んでまいります。すでに各地で、さまざまな事業が実施されていますが、8月5日の記念式典を中心に前後の数週間を「北海道150年ウィーク」と位置づけて、集中的にイベントを開催していきたいと思っています。

 北海道の強みである食や観光などの多彩な魅力を目一杯発信し、道民だけでなく、その時期に北海道を訪れる観光客の方々にもしっかり北海道のことを理解していただき、楽しんでもらいたいですね。

札幌市にとどまっていては道全体は見渡せない

―高橋さんが、行政に取り組むうえで重視していることはなんですか。

 まずは、地域としっかり対話をしていくことです。先ほどもいいましたが、とにかく北海道は広いんですね。面積の小さいほうから数えると、22都府県が入ってしまうほど。北海道の総合出先機関として、14の振興局で全道の179市町村を網羅しています。このため、札幌市にいるだけでは北海道全域をみることがまったくできません。私自身ができる限り出向いて地域の方々との対話を重ね、課題解決の道を探る努力をしております。

 次にこれはインバウンドとも関連するのですが、平成29年に674億円だった道産食品の輸出額を2023年に1500億円にすることをめざしています。ちなみに東京にあるアンテナショップ「北海道どさんこプラザ有楽町店」は年間10億円の売上があり、それだけ国内でも人気があるのですが、北海道ブランドをアジアを中心とした世界の中でもっともっと高めていきたいと考えています。

 そして、繰り返しとなりますが、アイヌの人たちの自然と共生する世界観を始めとした多様性。先住民族として、北海道の雄大ですばらしい自然環境を守り抜いてくれたアイヌの人たちへの尊敬・感謝の想いを子孫につないでいきたいと思っております。また、障がいのある方もない方も共に生きる多様性。こちらも含めて、道政の基本的な視点に位置づけています。

高橋 はるみ(たかはし はるみ)プロフィール

昭和29年、富山県生まれ。昭和51年に一橋大学経済学部を卒業後、通商産業省(現:経済産業省)に入省。大西洋国際問題研究所研究員、中小企業庁経営支援部経営支援課長、北海道経済産業局長、経済産業研修所所長を経て、平成15年に北海道知事に就任。現在は4期目を務める。

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